(1:05)
東:こんにちは。ナビゲーターの東忠雄です。
(1:07)
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
(1:09)
東:じゃ、森辺さん。前回は、「時間に対しての考え方」みたいな形でお伝えしたんですけれども、今回はどんな形で。ちょっともう少し深掘って、時間についてお話をしたいと思うんですが。
(1:26)
森辺:前回お話ししたのは、「時間にルーズであるか、きっちりしているか」というお話をしました。で、一番ルーズなのがアフリカですよ。一番きっちりしているのが先進7カ国ですよ、エクセプトロシアですよ、みたいな話をして。アジアというのはどちらかというとアフリカに近いですよと。ただ、アフリカに比べたらアジアなんか全然マシですよと。20年前の中国の企業、時間なんて全然守んない。けど今は、国家の近代化に応じて、かなり時間を守るようになりましたねっていう、そんなお話をしたと思うんですけど。前回のこの「時間を守る、きちっとする」っていうものに関しては、日本人はきちっとしているんですよ。今日は、同じ時間でも、時間っていうものの価値を、どう捉えているかというお話をしたくて。で、アメリカ。アメリカって言ってもいろんなアメリカがあるんで、僕が言っているアメリカは、ロスとかニューヨークとかワシントンとか、そういうとこね。そういう所は、時間をきっちりしています。一方で、日本人もそりゃ時間にはきっちりしていると。ただ、アメリカと日本の大きな違いは、アメリカが時間にきっちりしているのはなぜかって言うと、時間そのものをバリューと判断しているんだよね、価値であると。で、日本の場合は、時間にきっちりしているというのは、われわれの文化とか性質とか習性とかそういう話であって、時間を価値っていう認識をどれぐらいしているかというと、やっぱりその認識は少ない。
(3:19)
東:薄い。
(3:20)
森辺:薄いんだよね。で、よくアジアでね「日本人は意思決定スピードが遅い。」と言われるじゃない。これは別に、欧米に行ったって言われるわけで、確かに意思決定スピードが遅いんですよね。アメリカなんかの場合は、そもそもリスクっていうものをとる土壌が、まず大前提としてあるんだけども「リスクを除外している時間がもったいない。そんなことに価値はない」と判断しているからスピードが速いわけだよね。一方で日本の場合は、リスクっていうもののほうが、時間の価値よりも重たいんですよね。そうすると、どうしても「時間をかけてリスクを除外させよう」ということが起きてしまう。だからここは面白くて、「時間にきっちりしている」ことと「時間に対する価値を重んじている」ことは、結構全然違うっていうことなんだよね。
(4:41)
東:時間をかけすぎて、逆にリスクが大きくなることっていうのは、あると思うんですけども、そのへんはどう日本は捉えてて、例えばアメリカの人は、そこをどうとらえているのかっていうのは、結構、そういった切り口でも違うと思うんですけど。
(5:03)
森辺:いい質問ですね。時間をかけすぎることによって、競争環境が劇的に悪くなって負けてしまうことって、往々にして起きてるじゃないですか、グローバルビジネスの中で。結局日本企業の場合、時間をかけすぎることによって起きてしまった、競争環境の悪化とか、市場環境の悪化は、リスクっていう認識をそもそもしていないんだよね。自分がある行動を起こして、それがうまく行かなかったことがリスクで、人だったり企業だったり、行動を起こさずして、市場環境が変わりました、競争環境が変わりました、それは仕方ないね、っていう解釈を人も企業もする。一方のアメリカの場合は、グズグズしているから、市場環境も変わったし、競争環境も変わったし、チャンスを失ったって、こういうふうに捉えるわけだよね。だから、そこもまたすごく違っていて、何もしなかったことで起こったリスク、リスクというか。
(6:15)
東:機会損失みたいな。
(6:15)
森辺:機会損失というのは、やっぱり悪いことだしリスクじゃない。だから、なんて言うんだろうな、物事が進まないっていうのはすごくあって。それって日本の組織が、そういう成り立ちでずっと来てるから、一現場がそれを大きく変えるなんて難しいわけじゃない。けど、向こうからは「遅い、遅い、遅い」「そんなに遅いならもういい」みたいな話になっちゃうし、熱も冷めるわけだよね。その時に、僕がお客さんにアドバイスするのは、意思決定のプロセスを向こうに開示しなさいって。「自分たちの日本の会社は、こういう生い立ちで、こういう成長してきてて、こういう意志決定プロセスがある。だから時間がかかるんだ」っていう意思決定のプロセスの中身を、ある程度開示してあげれば彼らは「オイオイ、マジかよ」みたいな顔をして、そこには付き合ってくれるんだよね。「なるほどなお前も大変だな」と。それをしないで「あ、ちょっと待って。ちょっと待って」みたいな話でずーっとやっていると、向こうは「あ、もう、やる気ないんだな」っていう判断をしてしまう。そうじゃないわけだから、その機会損失ったら大変もったいない話なんで、僕は、意思決定プロセスを開示しろっていうことは、よくお話をするんですよね。
(7:37)
東:なるほど。そうすると、時間の価値の捉え方が、結構ビジネスに影響してきていると。それっていい面と、悪い面があると思うんですけど、日本にいると結構、いい印象というか、いい影響を与えるかもしれないですけど、一歩外に出ると、やっぱそこは結構デメリットになるというか、そういう形にならざるをえないと思うんですが、そのへんはどう対処してったらいいのかなっていう。
(8:15)
森辺:これはね、日本社会の根深い問題で、僕、すごく思うんですけどね。幼少時アメリカの学校だったでしょ?大学で日本戻って来て、日本の会社に1回勤めているし、すごく思うのは、日本の企業とか、組織っていうのは、基本的にミスがない人が上がっていく。どういうことかと言うと「いかにミスをしないか」ということがすごいベースになっていて、何かにチャレンジをする、それで失敗をする場合もあるし成功する場合もあるし、その時に、チャレンジをして進んで行くっていうことに対する評価が、そもそも国全体、組織全体、社会全体として低いっていうのは、やっぱりあるよね。スポーツする時に、ミスしたら「ドンマイ!」って言うくせに、実社会では「ドンマイ」じゃないんだよね。「はい、アウト!」「はい、本流外れ。」っていう話になってしまう。
(9:30)
東:そこって「チャレンジして失敗した人」と「チャレンジしてないけど失敗した人」の評価が一緒だっていう話ですよね?
(9:44)
森辺:そうそう。結局、ミスのない人が本流に残り、チャレンジをしようが、しまいが、失敗をした人は、本流から外れるっていうね。スポーツやっている時に「ドンマイ!」って言うんだから、実社会でも、ビジネスでも「ドンマイ」をオッケーにしてよみたいなね。で、ドンマイから新しいものが生まれるわけじゃない。スポーツだってそうじゃん。「ドンマイ、ドンマイ、まだまだ行ける、逆転しようよ」って言ったりするわけじゃない?…なんだけど、ビジネスだと「ドンマイ」がないっていうね。これは非常に悲しいですよね。…と思います。だからベンチャー企業も、ほら
(10:33)
東:なかなか育たないし。
(10:34)
森辺:育たないし、起業してもセカンド・チャンスがなかなかないし、企業で1回大きな失敗したら、もう無いでしょ。社会もそうじゃない?ニュースでいったんドーンと叩かれて落ちた人が、再び復活してくるなんてなかなかない。
(10:50)
東:まれですよね。
(10:52)
森辺:まれだよね。だから猿岩石とかさ、ヒロミみたいのがいっぱい増えてくる社会になるのがね、いいんじゃないかなと思うんだけどもね。
(11:03)
東:わかりました。じゃあ森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。
(11:06)
森辺:はい。
(11:07)
東:森辺さん、ありがとうございました。
(11:08)
森辺:はい。ありがとうございました。
(11:12)
ナレーション:本日のPodcastはいかがでしたか?番組では森辺一樹への質問をお待ちしております。ご質問はPodcast@spydergrp.comまでお申し込み下さい。たくさんのご質問をお待ちしております。それではまた次回、お目にかかりましょう。
『森辺一樹のグローバルマーケティング』。この番組はspyder groupの提供によりお送りしました