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東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:では森辺さん、引き続きMTの件で少し話をしていきたいんですけど、そもそも小売りといっても、モダントレードといっても、いろんな小売りがあるじゃないですか。参入するときに、当然どのディストリビューターと組んで参入していくかというのは1つ重要ですよね――というのがいつもの議論だと思うんですけど、それがあった上での話だと思うんですけど、どの小売りからやっていくのがいいのか。もしくはもうすべてやった方がいいのかとか、いろいろ多分議論があると思うんですけど。
森辺:すごい重要です。
東:森辺さんはその辺どう考えられますかね。
森辺:まずMTを3つに分けると。スーパー系、ドラッグ系、コンビニ系。自分たちの商品が最も売れる小売り流通がどこなのかということを特定しないといけないんですよね。それは日本での参考値も当然参考になるけど、現地ではどうなのかというのをやっぱり見ていく。ドラッグストアも、日本のドラッグストアとアジアや中国のドラッグストア、明らかに違うじゃないですか。例えばコンビニ化しているようなドラッグストアもあれば、思い切り調剤薬局じゃん、みたいなところもあるし、「え?」みたいなところもあるしね。そうすると、その3つに分けたMT小売り流通のどこからねらうのか、もしくは一気にねらうのかということは、まず1つ判断しないといけないし、この3つのスーパー、ドラッグ、コンビニのカテゴリの中で、最も店舗数と売り上げが多い小売りはどこなのかということを並べたときに、どこをねらうかなんですよ。結局、一気にやるなんて言ったら、ちょっと前に話したように、棚代かかるわけですよ。その棚代の交渉ノウハウというのは、またどこかの機会で話しますけど、仮に交渉としたとしても、棚代払って、キャンペーン打ってなんてやっていたら、幾らお金があっても足りないと。日本の消費財メーカーは、日本で小売り並べりゃ売れるから、アジアでも小売り並べりゃ売れると思っているんだけど、基本的には認知ゼロと思って始めるわけだから、いかに並べた小売りで店頭プロモーションやるかということは、最初はすごい重要です。そう考えると、そこの経費も考えないといけないわけですよ。そうすると、いきなり1,000店舗からやったって、売れなかったら全部返品で、とんでもない目に遭って、リスティングフィーも全部返ってこない。さんざんリスティングフィー払ったのに4カ月で棚から撤去、なんていうことにもなりかねないので、いかに店舗数を限定して始めるかということが重要で、じゃ、A社、B社、C社ってドラッグストアがあったら、どこねらう? みたいな。自分たちの商品が一番合ったドラッグストアはどこなの? みたいな。例えば何か若い人が来ているキャピキャピ系ドラッグストア。何か今風の日本的なグローバル的なドラッグストアと、いろんな種類があって、自分たちの商品を買う購買層が最も行っているドラッグストアは、じゃ、どこなのか。スーパーだってそうですよね。高級スーパーから庶民的なスーパー、安売りスーパー、コンビニだってそうですよね。セブン行くのか、ファミマ行くのか、ミニストップ行くのかみたいな。それを選んで、やっぱり1、2、もしくは3社ぐらいの小売りからまずスタートをするというのが多分すごく重要で、もしくは1社でもいいと思いますよ。どこか1社に1年か半年の独占あげて、どうせそんなにいきなり1,000店舗、2,000店舗やって、その各店舗に店頭プロモーション要員張りつけて認知度上げるなんということは、お金かかり過ぎてできないわけじゃないですか。だとすると、独占くれと小売りが言ってくるケースもある。喜んであげたらいいんですよ、もったいぶって。で、そことやる。その一番強い小売りで売れれば、ほかの小売りが「うちでも置いて」って絶対言ってくるわけですよ。そうしたら今度、リスティングフィーがないか、もう著しく低いか。ものすごい好条件で二番手、三番手の小売り流通と取引ができるわけだから、そこはすごい戦略なんですよね。で、人間関係だし、あと日本の消費財メーカーの場合、小売りのバイヤーや、購買部門のトップや、経営者まで到達するのは最近小売りもでかくなってきているので、なかなか難しいんですけど、そういうキーマンとの関係づくりを軽視し過ぎる。何かもっとねっちょりやろうよというね。昭和の営業、これがまだまだすごい重要なわけじゃないですか。寝技上等みたいな、何かそういうことがやっぱり不得意ですね。それをやりながら、ねっちょりした関係を築いて、その1つの小売りの、例えば300店舗なら300店舗で確実な実績を上げる。そうすると、その1つの小売りの300店舗が500店舗に増えて、1,000店舗に増えて、別の小売りからも、うちでも置いてくれ、売ってくれ、やってくれと声がかかって、あるタイミングで一気に黒字のラインにつき抜けて、そのままシェアが上がっていくということなんで、もう店頭プロモーションを本当にどれだけ地道にやれるかということがすごく重要で、そこを知らないで、棚取っちゃって、売れなくて撤退なんていう例はごまんとあるわけですよね。だからそこの選択というのはすごく重要ですよね。
東:では、それは商品によってやっぱり選ぶべき小売りというのは違ってくるということですかね。
森辺:それをディストリビューターの言われるがままに金だけせびられて終わりましたみたいな会社って、結構あるわけじゃないですか。メーカー自身がそのナレッジをしっかり蓄えて、それに対するストラテジーを持たないと、言われっ放しになりますよね。コンサル使うにしたって、コンサルの言われっ放しになって、自分のインプットないから、コンサルが言ったら、それがそうなんだと思って、もう従うしかないみたいな。けど、コンサルは責任ないですからね。言いたいこと言うわけで、理論ばかり並べるわけじゃないですか。だからそうすると、なかなか厳しい結果になるということも当然あるので、そこはやっぱり注意しないといけないですよね。
東:わかりました。じゃ、今日は森辺さん、時間が来ましたので、ここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
<終了(8:04)>