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東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:前回5回ぐらいにわたって、趣向を変えて、MT(モダントレード)にどうやって参入するかとか、いろいろやってきたと思うんですが、森辺さんがMTにおける――TTも同じなのかもしれないですけど、その小売り等に参入するに当たって、何が一番ぶっちゃけ重要だと思いますか?
森辺:関係です、小売りとの。結局どの系統を選ぶかとか、どの小売りを選ぶか、どうやって小売りとリスティングフィー交渉するかとか、その後の店頭プロモーションどうするかとか、間口のカバレッジどうやって増やして、1店舗当たりの売り上げどう上げるかみたいな話。スキルというか、戦略の話じゃないですか。これは正直、物理的に考えると、頑張ったらやれる話なんですよ。ただ、それをどうやるかという。今やったステップを、A君がやるのと、B君がやるのと、C君がやるのじゃ、同じステップをやっているんだけど、全然違うコミュニケーションが中に入り、マインドが入り、イコールの結果が違うじゃないですか。じゃ、MTで売るための方程式が、小売りの系統選ぶ×小売りを特定する×店舗数×間口カバレッジ×1店舗当たりのシェア=売り上げ利益、マーケットシェアみたいな方程式だったとすると、式としてはA君もB君もC君も一緒なんだけども、数学と違って、同じものをかけても答えは違うわけですよね。なぜなら、A君がやるのと、B君がやるのと、C君がやるのじゃ違うから。そうすると、その中のコミュニケーションをどれだけ標準化するかということも、我々も相当やるわけじゃないですか。そうするとやっぱり、リテールとのコミュニケーション、小売り流通とのコミュニケーションに価値があって、そこが積み上げなんですよね。「先週知り合いました」から積み上げてくる人と、「15年前から積み上げてきています」みたいな人では、その小売りに対する影響力もそうだし、違うわけじゃないですか。じゃ、何で日本であまり売れていない商品を、我々がどこどこの国の小売りにすぱっと入れられるかといったら、この小売りにはA社も入れているし、B社も入れているし、C社も入れていると。このD社、ちっこいけど何とか頼むよ、陳君、みたいな。何とか頼むよ、王さんみたいな。そこでやっぱりすごく重要で、時間をかけて積み重ねてきたコミュニケーションと、今現状行われるコミュニケーションの2つの組み合わせ。だから「超えられない壁」という話なんだと思うんですよね。でも、15年後のことを考えたら、やっぱり今からやるべきだし、コミュニケーションが一番重要じゃないかなと。
チャネル構築の重要も、デザインと、マネジメントと、コミュニケーション、チャネル構築の3つのポイントというのを、前にどこかの会で話したと思うんだけど、チャネルをどうデザインするかということと、そのデザインしたチャネルをどうマネジメント(管理)するかということ。その管理しているところ、どうコミュニケーションしていくかという、やっぱりコミュニケーションが入るんですよね。そうすると、小売りとの関係がやっぱり、どういう系統の小売りを選ぶか、どういう店舗に特定するかとかというのは、言ったらデザインであり、マネジメントじゃないですか、店頭プロモーションも。コミュニケーションというものがくっついてくるので。コミュニケーションがすごい重要だと思いますけどね。
東:それは小売りのバイヤーであったり、店長であったりという、そこの人間関係をどう築いていくか。そことどうコミュニケーションしていくかということが重要だということですかね。
森辺:日本人がやるべきコミュニケーションと、やるべき領域のコミュニケーションというのは当然あって、それ以上はやっちゃいけないし、それ以下でもそれ以上でもダメで、やっぱり決まっているじゃない、うちの社内で。一方で、うちの現地のスタッフがやるべきコミュニケーションというのは、もっとミクロなところであるわけですよね。そこもすごい重要。日本人がどこまでやるべきで、どこからはやっちゃいけないとか、現地のスタッフはどこをやるかとか、そういうのはそうだし、あと、どこかの会でも「ねっとり(ねっちょり)」と言ったと思うんだけど、やっぱり昭和のねっとりコミュニケーションとらないと、まだまだアジアの小売りは――小売りってそもそも昭和っぽいでしょう、日本でも。ねっとりしているわけじゃないですか。だからやっぱり、アジアの小売りなんといったら、もっと昭和のねっとりなんで、それを理解しないとなかなか難しいですね。ちょっと今でいう草食男子じゃ無理だという。どちらかというと肉食系、体育会系、こっちの方が小売りのやりとりは、僕は向いていると思う。
東:わかりました。じゃ、最後にちょっと、珍しくまたMTの会でいろいろ話をしてきたと思うんですけど、アジア、中国含めて、モダントレードとの関係性を築いていく上で、リスナーの方にアドバイスなり、ちょっとコメントなりをしていたたければと思うんですけど。
森辺:そうですね。先進ASEANであろうが、新興ASEANであろうが、MTの攻略は必須ですと。その運営でTTをどうするかという話なので、必須ですよと。先進ASEANになれば、もうMTで勝負どれだけかけられるかということは重要だと。一番重要なのは、並べることは簡単ですと。ただ、並べても絶対に売れない。そうすると、並べたものをどう認知させて、どう週販を増やしていくか、日販を増やしていくかということを地道にやっていくということが、僕は一番の近道だと思います。それには時間がかかる。したがって、中長期の戦略と覚悟を持たなければ、なかなかこれは実現できない。自分たちの商品は、日本ではなきゃ困るものだけど、海外に持っていけば、なくても困らないものであるということを、本当の意味で理解をする必要が僕はあると思う。幾ら爆買いリストに載っていようが、そんなのは爆買いで来る訪日外国人の世界の話であって、地元のローカルとはまた話は別ですよというのが1つです。
もう1ついえば、訪日爆買いリストに載っている商品は、例外なくメーカーの戦略で訪日爆買いリストに載ったんではなく、結果として訪日爆買いリストに載っているということなわけだから、なかなか訪日爆買いで売れているから、現地の一般流通で一般消費者に売れるということにはならないということを、やっぱ理解しないといけないと思います。以上です。
東:わかりました。じゃ、森辺さん、今日はありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
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