<01:03>
東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃ、森辺さん、今日は日本ではないところから、ちょっとご紹介を…。
森辺:今日は上海・シェラトンホテルの東の部屋からお送りしております。
東:森辺さん、上海は久しぶりですか?
森辺:そうですね。久しぶりで、多分何カ月ぶりぐらいです。3カ月ぶりぐらい。全然ちょっと余談の話していいですか?
東:はい。
森辺:タクシー乗ったんだけど、何か15年ぐらい前に比べると、やっぱり中国のタクシー明らかによくなっていて、何か運転手がいいよね。
東:ジェントルマンになっていますよね。
森辺:なっているよね(笑)。昔、車は汚いし、ボロボロだし、あれはあったんだけど、「ここ行って」と言っても返事もないじゃない? あれ、わかったのかな、こいつみたいなね。あとはやたらと猛スピードで高速を走って、こいつ事故るなんじゃないか、みたいな。当然、遠回りが当たり前だし、運が悪いとメーター上げてくれないと。中国語できない日には、「ここ行って」って言ってから着くまで、本当にそこに向かっているのかわからないみたいなね。15年前、スマホもないからね。中国語もできないから。「ツーリー、ツーリー、チー、ツーリー」といって言いながら、返事もしてくれないじゃない。着くまでわからなかった。ドキドキした。多少中国語ができるようになって、そういう弊害もなくなったからかもしれないけど、何かちゃんと会話してくるもんね、最近のドライバーは。「ここ行きたい」「ああ、こうかあ」って行って、連れていってくれるじゃない。だから、いい奴らだなという。変わった。
東:サービスは変わりましたよね。
森辺:変わった。もう本当、何なんだろう? って思ったからね。着くまで僕、いつもドキドキしていたからね。15年前とか。「ああ、着いた」とかね。たまに運悪いと、ライチ畑とか連れていかれて、50元じゃなくて50ドルって言われたり。よくあったんですけどね。ああ、いいなあ。変わったなあというのを思いながら、何か今日タクシーに乗ってきたんです。
東:タクシーもきれいになりましたよね。
森辺:きれい。昔のフォルクスワーゲンのサンタナ? 北京の方へ行ったら、シトロエンの超狭い、運転席が檻になっているから、後ろ足入らないみたいな。これでぶつかったら金網の網目が顔にできちゃうんじゃないかというのを、僕はすごい心配しながら、そういうタクシー乗っていたんですけどね。シートベルトも何か壊れていたりとかね。なんですけど、本当よくなった。
東:一般的にまだ日本だと、報道のせいもあるんでしょうけど、中国に来たことがない人って、中国のイメージがあまりよくないじゃないですか。世論調査とかそういうのを見ても。森辺さんが、ちょっと余談になってしまうんですけど、10年前とか15年前と比べて今の中国見たら、どんな感じですか?
森辺:僕中国人好きよ。中国も好き。15年前は嫌いだったけど、すごくよくなっているし、北京なんて北朝鮮かというような風景していたじゃない? でも、それが今はそんなことないし、世界を代表する大都市になっているし。日本の報道は中国を悪く言い過ぎ。日本の70代以上が。だからあの人たちがどこか行ってくれないと、我々若い世代というか――僕もそんな若くないけども。新しい日中関係は築けないんじゃないかって、ちょっと政治チックなことを言っているけど、何かそんなふうなことは思っていて。僕、これだけは言いたいの。日本も僕そうだったと思うのね。マナー悪かったし、日本製の品質悪かったし、猿真似だったしね、アメリカの。けど、中国も15年ぐらい前は「安かろう、悪かろう」だったけど、今誰も安かろう、悪かろうなんて言わないし、タクシー乗りながら、中国製のバスが走っているんだけど、昔の中国製のバスって、後ろのエンジンのところ開けながら走らないと、何かオーバーヒートしちゃうみたいなね。それもう閉めて走っているからね。夏なのに。ああ、もうそこまで性能上がったんだとかと思いながら、何かいいなあと思って、タクシーに乗っていました。
東:わかりました。ちょっと大分話が逸れてしまいましたが。今日はどんな話をしますか?
森辺:すみません。しようもない話を5分もしちゃって。中国にいるんで、中国の小売り流通の話でもしたらどうかなと思うんだけど。
東:わかりました。簡単に、中国の小売り流通といっても、当然ご存じの方もいらっしゃるだろうし、何となくイメージは湧くけど、あまりちょっとなじみがない方もいらっしゃると思うので。簡単に概要でいいので、中国の小売り流通というのをご説明いただけないでしょうか?
森辺:まず、中国の小売り流通は、近代小売り化が非常に進んでいて、日本とか、香港とか、シンガポールとか、韓国とか、台湾とかの一部の特殊な先進アジアを除いては、アジアの中で最も近代化が進んでいますと。その近代化の進みぐあいというのは、売り上げベースで約6割。だからもう60%が近代小売りに変わっていますよと。当然これだけ広大な土地を抱える非常に大きな国なので、農村部に行けば、まだまだ伝統小売りは残っているものの、沿岸部、都市部に関しては、もうかなり近代化が進んでいますと。当然デパートブームも5、6年前に――7年ぐらい前かな、あったけど、もうそこも日本と同じような状態には今なっていて、コンビニだったものすごいし種類あるでしょう。東ちゃんの方がよく知っているのよね? コンビニ何種類ぐらいあるんだろう? 日本のセブン、ファミマ、ローソン、ミニストップとかそういうレベルじゃないよね。日本の何倍もの種類があるし、ドラッグストアも、いわゆる日本的なドラッグストアというのかな。マツモトキヨシ的な先進的な、ワトソンズみたいな、こっちでいうと――ところもあれば、調剤薬局みたいなところもあるし、ドラッグストアって何万店とかだよね。
東:そうですね。
森辺:あるので、小売りはかなり近代化していますと。そんな中で、日本企業が抱えている課題としては、やっぱり近代小売りの流通になかなか入り切れていない。伝統小売りも当然難しいんだけど、近代小売りの流通にも、なかなか一部の特殊な消費財メーカーしか入り切れていなくて、その要因としては、やっぱり高額なリスティングフィーというところが1つあるというのが。
東:一般的なイメージとしては、中国とほかのアジアのリスティングフィーだと、どんな感じなんですか? 中国の方が高いのか、ほかのアジアの方が。
森辺:ASEANと比較したら、圧倒的に中国の方が高いよね。言ってくる額のケタが違うという。例えばASEANだと、1SKU当たり1店舗数千円ぐらいなので、まあ1SKUで商品置いてもしようがないので、3から5SKUぐらい商品を置く。多分、フィリピン、メタロマニラの中心部の最先端を行っているような近代小売りで、6、7,000円スタートみたいな話だと思うんだよね、1SKU。そこからどれだけ叩きますかという話だと思うので。そういうのから比べると、高いんじゃないですかね。
東:一般的にやっぱり、日本企業は1つ、リスティングフィーを払ってまで参入するというのも当然あると思うんですけど、なかなかそこが高額で入りきれていないというのも、1つ課題として。大手は特に入っているところあるでしょうけど、中堅どころになると、まだまだ日本では売れているのに、入り切れていないなというところが結構あると思うんですけど、その辺については、どう思いますか?
森辺:基本的に現地法人あって、もうリスティングフィーの問題を抱えているところも多い。直接交渉ができずに、ディストリビューターを介して、もうこの仕切り値であとお願いという。リスティングフィーとかプロモーション打つなら、ある程度年間予算組むけど、あとはもうこの仕切りでお願いということで、細かなところに関わらないメーカーなんかも多いので、もったいないですよね。リスティングフィーが高いから中国はダメだとよくおっしゃる人いるんですけど、あんなもの、いかようにでもなるじゃないですか。だからそこの交渉まで至れていないという、そういう意味では実はもったいない現実があるというのが1つかな。
東:そのもったいないというのは、具体的にもう少し咀嚼していただくと、簡単に…。
森辺:スタートの値段が100でも、それは関係と交渉で50にも10にもなりますよという話なんですけど、多くの日本企業がそこまでの関係と交渉に至る前にギブアップしているから、結局100という数字を払ったら、採算がとれないから、中国は難しいという話だけが先行してしまう。けど我々なんか交渉していて、それは東ちゃんも多分一番実感していると思うけど、100は100じゃないじゃない? だからそこがタクティクスというか、日本の企業のまだまだ弱いところなんじゃないかなと思いますけどね。
東:ちょっと今日は時間が来たので、次回も続きお届けしたいと思いますので。今日は森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
<終了(13:04)>