東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:前回は「T-mall」含め、オンラインの方の話を少ししてたんですけども。オンラインの方が入りやすいっていうのは、認識として皆さんも一緒だと思うんですが、オフラインがやり辛いからオンラインから始めるっていう企業も少なくないと思うんですよね。そうすると、オフラインで立ち上げまで見えないし、一つの壁として参入までどう参入していいか分からないっていうのは一つあると思うんですよね。で、参入したからといって必ずしも売れるものじゃないじゃないですか。そうすると、中々計算が立たないっていうのは、日本企業さんは特にそう思うところはあると思うんですけども、その辺は…。当然一部の企業はそれを乗り越えて売ってるところもありますけど、そこで足踏みをしているっていうのも一つの事実としてあると思うんですが、その辺はどうお考えですか?
森辺:戦略的オンラインだったら、全然構わないんですよね。前回もお話したとおり。「うちの商品はオンラインでしか売らない」とか、後々オフラインに入る時のこともしっかり考えた上でのオンラインとかね。でも多くの企業は、オフライン難しいしお金かかるしリスク高いからとりあえずオンラインに逃げたみたいな話で、オフラインやろうと思ったら価格が合わないし困ったな…みたいな、そういう話だと思うんですよ。
オンラインだけだったら、そこにリスクは何もないじゃないですか。だってウェブに掲載したら商品が売れるか売れないかじゃないですか。売れるために広告出して、コンバージョン見て、売る、みたいなね。なので、初年度から黒字をするっていうのも、別に容易ですよ。可能ですよと。
一方、オフラインの方は、僕は目安としては初年度でセットアップ、次年度で兆しを見る、そして3年目で実績を見るっていう、こんな感じなんですよね。この3年目で実績を見るっていうことは、月次単黒、できれば通期黒。4年目5年目で、累損を含めて回収と。以降は利益積み上げっていう。こんな軸で考えてるんですよね。
セットアップの初年度っていうのは、戦略作りからじゃないですか。じゃあオフラインでどこの小売から攻めるべきか、スーパー・ドラッグ・コンビニってあった時に、どこの形態…一気にやったって、お金かかるだけなんで、どこの形態が自分達に適しているか。それがドラッグなんだとしたら、ドラッグの中でもどのドラッグストアが、一番自分達の商品とかビジョンであったり、戦略に共感をしてくれるのか。そのドラッグストアの中でも、どの店舗から始めるか。
前々回かいつか分からないですけど、いきなり2000店舗に置いても、売れなきゃ返品されるだけなんでね。そうすると、ある一定の100なら100、300なら300っていう店舗の中で実績を出していくっていうことが、非常に重要ですよ、と。そこで実績を出せれば、店舗数は増えていく。つまり間口のカバレッジは増えていくということになるので、それの繰り返しですよ、と。それらのセットアップを初年度でやる、と。
そうすると、次年度には兆しが絶対見えるんですよ。「あ、これ行けそう」とか「あ、ちょっとここ効率悪そう」とか。そこの微調整と修正のネジ締め直しをやれば、3年目には実績を出せるということなんで、3年の辛抱っていう話だと思うんですよね。辛抱した会社は、いま消費材メーカーで中国で成功してるのは皆んなそうじゃないですか。7年ぐらい辛抱してるでしょ、皆んなね。10年ぐらい辛抱してる会社だってあるので。基本的にはその流れだと思いますけどね。
東:そうすると、そこまで我慢ができるのかどうかっていうのが一つあると思うんですけど、ある程度中長期的な視野を持っておかないと、短期的な黒字っていうのを日本企業は目指しがちなところもあると思うんですが、それでは難しいということなんでしょうか。
森辺:難しいですよ。中国13億の世界最大市場を取りに行くっていう中で、「T-mall」で数億売り上げてイエーイって、そんなことしに中国行ってるわけじゃないですか。何百億何千億の世界観作りに中国に行ってるんだとすれば、3年ぐらいの辛抱は当たり前だし、それぐらいのリスクテイクとか投資をしても、充分リターンがあるポテンシャルのある国ですよね。だから、そこの覚悟っていう話になってくるとは思うんですけどね。
だからといって、湯水のようにお金を使うってことではなくて、順序順番というのがちゃんとあるので、その順序順番に沿って投資をしていく、っていう話だと思うんですけどね。
東:大まかで構わないんですけど、森辺さんが考える順序順番っていうのを、何となく頭の整理をしたい方もいらっしゃると思うので。これは多分中国だけじゃなくって、他の東南アジアも一緒なので、中国関係ないっていう聞いていらっしゃる方も、ぜひ耳を傾けていただけるような話だと思うんですが。
森辺:どの国でも一緒ですけど、基本的にはまずMTを取るっていうことが重要ですよね。MTの数だけじゃ、絶対に儲からないっていうASEANの国はそうなので、同時にTTなんですけど。そのMTを取るっていう中でも、形態選びっていうのをまずやるわけですよ。形態っていうのは、タイプね。スーパーなのかドラッグなのかコンビニなのか何なのかっていう、どのMTの形態を取るの?っていうのと、その形態が選び終わったら、その形態の中でどの小売…要は、ドラッグだったらワトソンとやるの?ワニングスとやるの? コンビニだったらセブン?ファミマ?どれとやるの? スーパーだったらジャイアント?ビックシー?ロッテ?イオン?みたいな。そこを選ぶっていうのは、2個目ですよね。
選んだ後、ワトソンで選んだったら、ワトソンの中のどの店舗取るの?と。ロッテマートだったら、ロッテマートのどの店舗取るの?みたいな。SMだったらSMのどの店舗取るの?と。どの店舗っていうのは、まさにエリア選びになんですよね。首都圏でも、首都圏の中のどこ取るの、と。
そこまで決まったら、商品を置くわけじゃないですか。色んなリスティングフィーの交渉とかしてね。散々交渉して置いたら、売れると思ってるわけですよ。でも絶対売れないので、ATLじゃなくてBTL。もっと言うと、店頭プロモでどれだけその商品の認知をそのエリアで上げていくかっていうことを、やっていかないといけない。
その認知が上がってきたら、今度は店舗のカバレッジを増やします。それが終わると、最初に選ばなかった小売から声が掛かってくるんで。「うちでも置いてくれ」「うちでもやらせてくれ」って。そうしたら初めて小売の種類とか、さっき言った形態を広げていく。そうするとカバレッジが上がっていくんで、総合的に店舗数×カバレッジの掛け算で売上の規模が決まってくるじゃないですか。で、拡大傾向にどんどん上がっていくっていう。その方程式なわけですよね。
それを途中で挫けずにひたすらやるということなので、そんなに計算式としては難しい話じゃないけど、やるとすごく大変だよっていうことですよね。
東:それをやりきれるかどうかっていうのは、一つ大きな要素というか。
森辺:今までその国に無かった物とかね、今まで無くてよかったものなんだから、それを彼らの習慣や文化にしていくっていう大変さがあるし。日用品のシャンプーとか洗剤みたいに既にあるものは、もう欧米のグローバル先進消費材メーカー出てるんで、彼らとどう戦っていくかということになっていくし。お菓子とか食品だったら、現地の人の味覚とか趣味嗜好っていうのがあるので、それにどうカスタマイズできるかっていうことにも関係してくるし。後、買いやすさっていうことを追求していくと、小分けにしたり「不明(させっと?)」(10'29.32)にしたりとかっていうことを、同時に考えていかないといけない、と。つまりは4Pを考えるっていうことなんですけどね。
なので、やることは盛りだくさんなので、かなりの辛抱と覚悟が必要ですよ、と。
東:なるほど、分かりました。ちょっと森辺さん、今日はお時間が来たのでここまでにしたいと思います。また次回もよろしくお願いします。
森辺:よろしくお願いします。