東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、シリーズ的には長くなってしまいましたけれど、ドクターストレッチの黒川社長との対談で、色々とお話しいただいたんで、詳しくはコラムを見ていただくと、もっと雰囲気とか写真も載ってるので伝わると思うので、日経の『小さな組織の未来学』の森辺一樹で行っていただければ出てくると思うので、そこを見ていただきたいんですけど。
前回お話しにあったドクターストレッチは文化を日本で作っていったと。結構産みの苦しみってあったと思うんですけど、その辺は黒川社長はどうやったのかとか、森辺さんが客観的に見てどう思ったのかっていうのは、どうなんですか?
森辺:ストレッチをするっていう文化・お店が世の中に無い中で、急激に町中にドクターストレッチって増えたじゃない。それを見よう見まねした偽物ストレッチ屋さんも、いっぱいあるんだよね。マッサージ店でもストレッチっていうのを入れたりしてて。 そういう習慣・文化を作り上げてって、今までは「悪くなったところをほぐす」というマッサージという手法しか無かったのに、「悪くならないように、こらないようにストレッチをしよう」っていう文化を日本国内で作ってったと。
これって、日本でビジネスをしてるにも関わらず、海外でビジネスしてるのと一緒のことなんですよね。だって、世の中に無いものをどうやったらそれを認めて貰えるか、習慣化できるか、文化にできるかってことでやってきたので。なので、海外に行っても彼らにとってのグローバルビジネスは、ハードルが普通の会社の半分以下だと、僕は思ってるんですね。
この6年間で100店舗にしてった中には、大きな苦労があって。言ってたのは、最初の1店舗で「行ける」って思ったらしいのね、お客さんの反応が良いから。けど、定着しないって。最初の1年間は。良い月もあれば悪い月もある。
東:波があるんですね。
森辺:「何なんだこの波は」と。マッサージ店やってたら、波はそんなに無かった。なんだけど、良かったり悪かったりの波。この波のある経営って、経営者にとっては恐怖以外の何物でもないでしょ?その波の原因を考えた時に、「あ、これは文化や習慣を作るビジネスなんだ」っていうことに気づいたらしいんですよ。
サービス業だと思ってた、最初はね。もちろんサービス業なんだけど、サービスを提供するだけではダメで、これをいかにお客さんの習慣や文化にしていくかっていうことが、このストレッチ事業には重要なんだ、っていう事に気づいて、そこに手を入れたんですって。そしたら、一気に波が上下に振れないようになったっていう。右肩上がりの曲線に変わっていったと。そういうことを仰っていて。
「なるほど」と、「これは強いな」と、いう風に思ったわけですよ。
東:習慣化に気づいたっていうところが、一つすごいと思うんですけど、それをどうやって習慣化にしようとしたのかっていうのは、インタビューの中で触れられてたんですかね?
森辺:ストレッチをして、それを継続的にやっていかないと、ストレッチは戻っちゃうじゃないですか。「折角伸びたものが戻ってしまうから、常にストレッチをしておくことで、こんなに健康だよね」っていうことを、お客さんに実感してもうらうっていう。そういうことを言ってたような気がします。
東:お客さんを良い意味で教育していったってことですね。
森辺:100店舗やるってね、相当良くないとそんなに店舗増えないですよ。だから、レストランみたいに「美味しい」とかなら分かるけど、
東:実感しづらいですよね。
森辺:それを100店舗にするっていうのはね、相当。
でね、トレーニングがめちゃめちゃすごくて。新宿に本社があるんですけど、なぜ新宿かっていうと、全国から新宿に電車って乗り入れてるじゃないですか。そうすると、各店舗でストレッチをしてるインストラクターが、毎週か毎月、本部にトレーニングに来るらしいんですよ。そこで再教育をして、腕を磨いてまた戻っていくと。
そうなってくると、新宿が一番利便性が高いって、新宿の本社の地下にトレーニング施設みたいなのがあるんですよ。そこへ行った時もね、すごいトレーニングしてて。インストラクターの人がめちゃめちゃ熱い、インストラクターのインストラクターみたいな人がいて、その人の授業を皆んな物凄い一生懸命聞いてましたね。
東:そういったところの努力っていうのはあったし、産みの苦しみってのがあったと。
森辺:だって、ストレッチなんて誰も分からないじゃない。あれだけのインストラクターを教育していくってところには、相当な苦労があったと思いますよ。それを今でもキープアップしてるっていう。あれだけストイックな黒川社長だから、そこまでやりきるんだなっていう風に感心してたんですけどね。
東:森辺さん、それがグローバル化のハードルを下げるんじゃないかっていうのを仰っていたんですけど、グローバルの視点から見て、具体的にどういったことなのか、どういった理解なのかっていうのを教えていただければと思うんですけど。
森辺:黒川社長がやってるビジネスが、日本国内でストレッチってものを習慣化させて、それを日本の文化に変えていったと。これは日本人に対してすら、そういうことをしなきゃいけなかった。もし別のサービス業だったら、そのものは既に習慣だし文化だから、習慣を作るとか文化を作るっていうことにはならないじゃないですか。
例えば、蕎麦屋さんをやるとか、ラーメン屋をやるっていったら、別にそれは「ラーメン食う」っていうのは文化や習慣としてあるしね。外食をするとかもあるし。マッサージ屋やるでもいいですよ。マッサージに行くっていうのは、習慣とか文化として成り立ってると。けどストレッチっていうのは全く無かったわけで、「ストレッチ行ってくる」なんていう話は、誰もしなかったわけじゃないですか。
東:違和感ありますよね。
森辺:それを、ストレッチをするっていうことを習慣にしてって、文化にしかけてるわけですよ、今の日本で。ここには、物凄いただならぬ努力があったと。
これを日本でできた会社が、海外でできないわけがない。だからハードルが低いと。日本でビジネスをやりながらも、実はグローバルビジネスと同じようなことを日本でやってきたんですよ、このドクターストレッチという会社は。なので、海外展開をした時に、普通の会社が感じる苦労の度合いを100とした時に、彼らはそれをおそらく50以下で感じると。そんな印象を持ってるんですよ。
日本人の体だけが特殊なわけ絶対にないんですよ。だってマッサージは万国共通で、「不明(スイリッシュマッサージ?)」(8'57.77)とか、タイ古式マッサージとか、台湾式とか中国式とか日本の指圧とかね、色んなマッサージがある。てことは、世界でストレッチのニーズだって絶対あって、世界中でストレッチ文化っていうのは作れるんですよ。そう考えると「もしこの会社上場したら株買いだな」なんて想像しちゃったんですけどね。
それぐらいすごいスケール感のある会社だなと、僕は思ってて。やってることがね。そんな会社の社長が、また良い男。僕が女だったら惚れちゃってるかなっていうぐらい、良い男だったんですよ。そんな印象でした。
東:そうすると、ハードルが低い分グローバル化も早いんじゃないかと。
森辺:そんな事言って遅かったら困るんですけど…でも早いと思いますよ。日本でやってることが文化作り・習慣づくりですからね。なので、良い会社だと思います。
東:分かりました。今日は時間が来たのでここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。