東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:今日はリスナーからの質問というか、よく森辺さんがP&Gとかネスレとか、そういったグローバル先進企業がTTが進んでると。それをお手本というか参考にした方が良いとよく言われると思うんですけど、彼達がどこまでどう可視化とかデータ化されてるのかっていうのは、色々なリスナーさんから「どこまで本当はできてるの」「実態どうなの」みたいなところは話があると思うんですけど。質問もちらほらあるんで、ここでちょっと回答して行きたいなと思うんですけど。実際どうなんですかね?
森辺:現地の色んなレイヤーの先進グローバル消費財メーカーの社員と話す中で見えてくるものとしては、かなり高いレベルで把握をしてるという風に、僕は認識をしています。
東:そうすると、MTは普通に日本と一緒でPOSデータがあるのでPOSデータで。多分これはPOSを買えば出てきますって話だと思うんですけど、一方でよく言われるTTの方っていうのは、基本的にはPOSデータなんか無いじゃないですか。そんな中で、本当に単純な疑問として、どうやってそれを把握するのかっていうのは、どうなんですか?
森辺:基本的には、先進グローバル消費財メーカーのマーケットシェアを上げるためのKPIは、TTの店舗のカバレッジを広げるっていう横軸を伸ばすっていう活動と、もう一つが一店舗あたりの店頭シェアを上げるっていう縦軸を伸ばすっていう、この二つの活動にKPIは集約されていますと。
そうなってくると、そのカバレッジがどれぐらい伸びたか、店頭シェアがどれぐらい上がったかっていうのは、もうデイリーで管理してるんですね。当然カバレッジに関しては、その特定しているエリアの総TT店舗数っていうのをある程度把握していて、そのTT店舗数の内の何割を自分達が今取れているか、そしてこれから取れて行くかっていうのは、完全に把握してます。
東:じゃあカバレッジっていうのは、いわば店舗数っていうことですよね。そうすると、カバレッジと一店舗あたりの売り上げ高に集約されますと。カバレッジがその国その国…例えばベトナムだとすると、総カバレッジがベトナム全土でどのぐらいあるかっていうのを彼達は把握してると。
森辺:一般的に、MTがうちのカウントで1100ちょっとじゃないですか。1100店舗相手に100%の導入率でビジネスしても、一店舗あたり日販何百個何千個売れないと商売にならないんで、基本的にはTTが重要だと。そうするとそのTTっていうのは、色んなTTがあるよね。GT1からTT4ぐらいまでうちはカテゴライズしてるけど。それの総数が50万店以上あると言われてる中で、20万店ぐらいが非常に重要となる取るべきTTなんだよね。その20万店に関しては、先進グローバル消費財メーカーは完全に把握してるよね。その20万店がどのエリア中心にあって…いや「この道のこの角のここにある」みたいのは、それは現場の担当レベルしか分かっていないけれども、その20万店がホーチミンにどれぐらい、ハノイにどれぐらい、ダナンにどれぐらい、その他地方都市にどれぐらい…っていうのはあって、アクティブトゥエンティーとかって言うんだけど、その20万店をどうカバレッジを100に近づけて行くかっていう活動を、彼らはやってますと。横軸の活動だよね。
東:なるほど。その縦軸の一店舗あたりの売り上げって、結構取りにくいと思うんですけど。
森辺:データが?
東:はい。
森辺:そうですね。
東:それはどうしてるんでしょうか。
森辺:基本、POS入っていないじゃないですか。なので、手作業なんですよね。自分達の商品がある時に、競合の商品と自分達の商品の店舗シェアを見たいわけじゃないですか。競合の商品がここは2ランク選ばれてて、自分達の商品はここは2ランク選ばれてるかを見たいと。そうすると、そのセールス担当みたいな人は毎日決まった通りの決まったTTを、ラウンダーのように回っていると。そこで注文を受けて商品運んで、そこのおばちゃんと「おばちゃん今日どう?元気~?」って、そんな活動をしてるわけですよね。その中で「今日うちの商品何個売れた~?」「4つだよ~」と。「じゃあA社は~?」「2つ~」とか、「B社は~?」「7つ~」とかっていう、そのデータを全部手で書いて、それがエクセルに落とされて、CVSに変わって、システムの中に突っ込まれていくという、非常にその現場はアナログの活動をしてると。その管理が素晴らしい、美しいんだよね。
東:なるほど。そうなると、それをデータ化しますと。そこは手間が…人でやるので、全部。データにするのも基本手作業で入力するわけじゃないですか。そうすると単純な疑問として、日本企業がTTに中々手が出しづらいのは、それで利益が出るのどうのこうの、みたいな話が多分先行してくると思うんですけど、その辺はどうなんですかね、実態は。
森辺:手間に関してはね、例えば最近中国製・台湾製・韓国製の安いPad使って、そこでもう入れてメールでパーッと飛ばしたら、システムに自動で入るみたいなものだと思うんだけど、それなりの人数が必要ですよということになるので、手間に対して儲かるのか儲からないのか。そうすると尚更、MTは直販しないとRIは悪いっていうのは確実なんですよね。TTは手間がかかるわけじゃないですか。そうすると、一番バコッて買ってくれるMTを直取して、ディストリビューターのマージンを払わないでいい体勢を作るっていうことと。
後これも数の原理で、卵が先か鶏が先かなんですけど、1100店舗しかMTがベトナムに無かったら、どうあがいたってMTだけじゃ絶対に商売できないと。でもMTに置かれてない物はTTでも売られないと。一方で、MTとの交渉力を強くするためには、TTのカバレッジがどれだけ広いかっていうことも当然影響してくるんで、全部が連動してるんですよね。それが全部が連動してるから、全部がある程度の数までカバレッジが上がると、MTとの交渉力も強くなるし、MTで売られてるからTTでも買われるし、TTのカバレッジが高いからMTでもよく売れるという構造になってるんですよね。
だから、手間はかかります、最初。3年ぐらいは苦労すると思うんですよ。ただその苦労を乗り切ってから利益があるので、短期で見るっていうね。逆に言うと3年でも短いかもしれないですね。短期で見てベトナムで稼ごうなんていうのは、戦略の土台がそもそも間違ってる話で、5年10年のスパンでベトナムからどう回収していくのかっていうことを見ないと、難しいんじゃないですかね。
東:なるほど、分かりました。じゃあ森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。