東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、最近セミナー等を立て続けにやっておりましたけども、その中で森辺さんが最近よく言われてるというか提唱されている、「輸出ビジネスじゃなくて、チャネルビジネスをしなさい」「転換するべきだ」みたいなことを言われてると思うんですけど、これがどういう意味なのか、ピンと来る方と、ちょっとまだまだ少しぼやっとは分かるけど、明確には分からないという方がいらっしゃると思うんですけど、この違いをちょっとご説明いただけないでしょうか。
森辺:まずその輸出ビジネス…これは消費財のメーカーさんに向けてお話しをしていて、特に食品・菓子・日用品みたいな消費財のメーカーさん向けなんですけど。
多くの企業が輸出のビジネスをやってますと。輸出のビジネスの定義って何ですかって言った時に、輸出というのは日本のいわゆる輸出商社、もしくは現地の輸入商社を介して商品を売るわけですよね。この商売っていうのは、基本的には港から港の商売で、相手国の港に商品が到着をした後の事を一切無視する商売なんですよね。ですから、相手の輸入商社がそれを買って、その後どういう流通を通じて、どういう小売にどのように並べられて、そしてそれをどういう消費者が手に取って、食べて使って何を感じてリピートするのかしないのかっていうことを、一切無視する商売。そんな事を、日本の消費財メーカーが日本国内の事業でやっているかっつったら、やってないわけなんですよね。にも関わらず、海外ではそれをやると。
輸出のビジネスって、為替と景気に左右されまくるんですよ。ですから、定期的に現地の輸入商社を訪問はするんですよね、消費財メーカーの人間もね。けど訪問しても、結局「やー、為替が悪くて買えないよ」とか、「今景気が悪いから中々進まなくてね」っていうことだけを聞いて、納得して帰ってくる。そこに対して何の対策も打てないと。こんなのはそもそもグローバルビジネスでもなければ、消費財メーカーが現地に根を張って、本当に中間層のど真ん中のメインストリーム狙ってやるビジネスじゃないよって言ってるんですよね。
でも、最初は良いんです、輸出ビジネスで。でもこの輸出ビジネスっていうのは、中々ユーロモニターでシェアが何%とかっていう争いまで行けない。消費財で言ったら、行けて数十億前半ですよ。二十億とか三十億とか良いとこ。それで良いんだったら、輸出ビジネスをひたすらやってれば良いけども、その国で20%のシェアを取っていこうと、30%のシェアを取っていこうと思うと、最終的には現産現販型のチャネルビジネスをやらないといけない。どういうことかというと、現地に生産工場を持って、そこで作った物をそこで売るということをやって行くんだけど、その間にビジネスモデルとしては輸出型でも良いんだけど、チャネルのビジネスをしろと。
輸出型のチャネルビジネスっていうのは何かっていうと、先程言った輸入された後、どのようなディストリビューターを通じて、どのような小売に、どのように並べられて、どういう消費者がそれを買って使って食べて、何を思ってリピートするのかしないのかっていうことまでを考えるのが、輸出型のチャネルビジネス。
ステップとしては、輸出ビジネスから輸出型のチャネルビジネスに変わって、その後現産現販型のチャネルビジネスをやると。輸出型のチャネルビジネスをやれば、その国での市場シェアを5%までは目指せるんですよ。5%まで目指せたら、その国で更に拡大させるために工場の設備投資しようっていう経営の判断がしやすくなる。そうすると最終的には、現産現販型のチャネルビジネスを実施して、その国で2割のシェアを取って行く、3割のシェアを取って行くっていうことができるので。
輸出貿易部とかって未だにあっちゃダメなんですよ、消費財メーカーは。もうチャネルのビジネスをやらなきゃいけないっていうことを言ってるっていうのは、そういうことです。
東:そのチャネルビジネスをやらないと、中々シェアが伸びて行かないと。
森辺:伸びて行かないし、どんどん開いてっちゃう。欧米の先進グローバル企業が何故あれだけ強固なディストリビューションネットワークは、何故あれだけ強固なチャネルや、何故あれだけ強固なシェアを取れてるかというと、彼らは端からチャネルビジネスをやってるわけですよ。輸出だろうが、現産現販だろうが、基本的にはチャネルのビジネスをやっていて、消費財メーカーにとって一番重要なのは消費者であると。小売流通であると。ディストリビューションネットワークであるってことを、彼らは理解をしている。
日本企業も、それは国内では絶対理解してるんですよ?自分達の商品を買ってる問屋を知らないなんてことはありえないし、自分達の商品が、どの小売で何SKU幅取ってね、どういう消費者が何時の時間帯に買いに来てて、そしてどういう人達がそれを好んで買ってるかっていうことは、完全に理解してる。何で海外だと理解しようとしないんだっていうことのお話しなんですよね。
東:その大きな輸出ビジネスと、チャネルビジネスの違いってのは、森辺さんなりにどういったポイント…
森辺:一番の違いは、さっきから説明してる、いわゆる港から港のビジネスが、輸出ビジネスじゃないですか。そうではなくて、相手の港に着いた後、消費者の手に渡るまでをいかに自分達で理解をして…そうすると、そこに対策が打てるわけじゃないですか。そうすると、為替と景気に左右されないんですよね。為替と景気に左右されないっていうか、為替と景気の影響が出た時に、そこに対策の手を打てる。だから伸びて行くっていう話で。
なぜ自分達の…例えばインドネシアへの輸出が伸びてるのか伸びてないのか、「何故ですか」って聞くと、輸出ビジネスやってる人は「インドネシアの景気がね」とか「いや為替がね」の、この二つしか返ってこないんですよ。いやいや、本当の問題ってそこじゃないよねと。そこは一つ大きくあるかもしれないけど、本当はあなた達の商品は店頭小売までそもそも流通してないから、それは伸びないよね、とか。消費者に認知されないよね、とか。もっと根深い問題なわけですよね。でもそこにタッチしないっていう。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。