東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、前回のお話しで、歯磨き粉の例であったと思うんですけど、価格の適応力…大石先生なんかは現地適合化ってよく言われると思うんですけど、現地適合化するのは、一つは多分品質っていうのがあって、その品質を落とすのは価格の適合性を持たせるっていうのもあると思うんですけど、その辺ってグローバル企業は非常に上手くマネージメントされてるなっていうのは印象として持つんですが、その辺森辺さんどうお考えなんですか?
森辺:メーカーにとってグローバルに商品を売っていく時に必要なことって、世界標準化と、現地適合化の両方なんですよね。大枠で言うと、ブランドと製品・プロダクト自体は世界標準なんですよね。どの国行ってもその商品名で、どの国行ってもその商品を売っていますと。
ただ一方で、先進国と新興国では消費者が賄える金額に差があるので、当然金額は現地適合化しなきゃいけないと。ただ、アメリカや日本で1ドルで売ってるものをね、同じものをアジアでね、お金が無いから20セントで売るってことはできないわけじゃないですか。それは「何それ」って先進国の人は思うし、そんなことは現実的には赤字になっちゃうので、できないと。同じものを20セントで売ってるんだったら、先進国でも20セントで売れよっていう話になっちゃうんでね。できませんと。
そうなってきた時に、価格と商品の品質っていうものが関係してくるんですけど、まずパッケージを変えるっていうね。パッケージっていうのはデザインを変えろとかって言ってるんじゃなくて、いわゆる梱包仕様を変える。一袋に10個入っている物を5個、もしくはバラ売りの1個から売れるような状態にしていくことによって、いわゆる一つを買いやすくする。先進国だと10個くらいまとめて買っちゃえよ、っていうのは全然アリじゃないですか。けどアジア新興国の人は将来食うものは今10個買うっていうのは無理なので、今食いたい分だけを買える梱包形態にしていくってことが一つですよね。
けど、それだけじゃ中々当然補えないので、その商品の品質を、下げるって言うとあれなんだけども、いわゆる変える。安くできるように変えていくと。そのためには原材料を変える、製造の工程を変える、そんなことをやっぱりしていかないといけなくて、しいては生産拠点を変えるってことをやっぱりやっていかないといけないと。
そうすると、日本で作っているものをアジア新興国に輸出しててもね、限界があるんですよ。狙える市場の。基本的には近代小売しか取れないじゃないですか。店頭小売取れないですよね。けどアジア新興国で本当に大成功しようと思ったら、近代小売だけじゃなくて店頭小売まで取らないといけないと。そうすると、日本の基準で作った商品を船に乗せて輸出をしてたら、絶対に金額が合いませんと。ある所までは何とか頑張って調整はできるものの、段々苦しくなっていくと。でもその苦しくなってきた所までとにかく現地でマーケットシェアを上げて、そっから先は将来のために投資をして行って、現地に工場を移して、安い原材料入れて、安い梱包形態で・入り数で出していく、みたいなことを段階的にやっていくわけなんですけどね。けどそこが凄く重要になってくると思うんですけどね。
東:そうすると、その段階を踏まなきゃいけないっていうのは分かるんですけども、具体的に何となく大枠で言うと、どの段階でどう踏み切ればいいのかっていうのが、グローバル企業は結構、四苦八苦はあるにしろ綺麗にやってるなっていうイメージがあって、日本企業は結構そこは後手後手に回るのかなっていうイメージがあるんですけど。
森辺:グローバル企業はね、やっぱり食品日用品の消費財、菓子とかね。食わしてナンボじゃないですか。だからもう端っから勝負なんですよね、欧米の先進グローバル企業って。基本的にはアジア新興国のマクロ経済の予測をしっかり持っているので、この国で中長期の投資をして儲けますっていうことが大前提としてあるから、最初っから現地に工場を作って、そこで生産をしてアジア新興国向けの商品を売る体制を作ると。とにかくやってみて売れたら「よっしゃやってみよう」みたいなスタンスじゃないってのは一つありますよね。本当に先進的な会社はね。
一方で日本の会社っていうのは、取り敢えずちょろちょろインポーターに輸出してやらせてみようと。適当に代理店見つけてやらせてみようと。そっから上手くいったら、工場ちょっと考えよっか、みたいな始まり方なんで。戦略的に取りに行くぜこのアジア新興国市場をっていうスタンスの欧米先進グローバル消費財メーカーと、上手くいったらやろっかなっていう日本の消費財メーカーとでは、そもそものスタンスが違うっていうのが、大きくありますかね。
東:でもそのスタンスの違いが、結構後々になってくると、徐々に差が大きくなってくるっていうのはあるんでしょうね。
森辺:僕もね、だからといってね、先進グローバル消費財メーカーの真似をね、日本企業しなさいと、バンバン投資しなさいと、中長期ですよなんて言うつもりもなくて、そんなこと言ったってね、役会がそれを承認しないですからね。そうするとやっぱり、輸出ビジネスをやっている会社、ゼロの会社まず輸出ビジネスをやって、輸出額を増やしていきましょうと。ただ現地で数パーセントのマーケットシェアをまず取るっていうことをしたければ、輸出型でもチャネルビジネスに切り替えろと。それができると、数パーセントまで行けたんだから数十パーセントまで行けるっていうのが見えてくるんですよね。そうすると工場投資へのボードのジャッジができる状態になると。ただやっぱり、現地で0.何パーじゃ、工場設備投資しようってならないですよね。数パーは取らないといけない。でも輸出ビジネスじゃ絶対数パー取れない。輸出型のチャネルビジネスに切り替えれば、数パーは取れるんですよね。そこをまずやるっていうことが凄く重要だという風に僕は認識してるんですけどね。だから3ステップで行きましょうと。
東:分かりました。じゃあ森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。