東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、よく森辺さんが話す中で、先進グローバル企業との日本企業との比較みたいな形で出てくるんですけども、そもそも先進グローバル企業の強さっていうのを森辺さんなりに解説していただくと、どんな感じになるのかなと思って。
森辺:ここずっと1年ぐらいB to Cの消費財のお客さんに特化してるんで、先進グローバル企業の中でも消費財に特化をしたお話をすると、先進グローバル消費財メーカーとしましょうか。もうね、彼らの強さのベースは1つしかなくて、中間層を徹底的にターゲットしてますよっていうことが、彼らの強さのすべての根底にあるんですよ。これはネスレやユニリーバやピーアンドジーやマースやコカコーラやペプシコを散々研究分解分析して出てきた、非常にシンプルな答えなんだけどもね。でもやっぱりそこが僕はもう彼らの最大の強さだと思ってるんですね。
全ての彼らのオペレーションやKPIが、その中間層をターゲットにするってことがベースになっているんですよ。だから何が強いんだ、強さの秘訣何だって言うと、中間層のターゲティングから絶対にぶれないということが最大の強みだと思います。
日本企業のグローバル市場で見た時のね、消費財メーカーのマーケットシェアのよさって何だって言ったら、頭では分かっていながら中間層の重要性をね、中間層から逃げちゃうところ。そして耳障りの良い富裕層とか上位中間層っていう言葉を使うでしょう、日本企業は。そこに振れてっちゃう、寄ってっちゃう。結果として戦略がガチャガチャになっちゃう、っていうところが絶対的な大きな違いだと、僕は理解してるんですね。
東:そうすると、中間層をどう捉えるかっていうところが非常に重要であると。
森辺:消費財メーカーにとってね、アジア新興国戦略ってやること3つしかなくて、一つは商品開発。これは中間層が欲しいもしくは買うことのできる商品を、どうやって開発していくか。もっと平たく言うと、製品と価格の現地適合化はどうやるかって話なんですよ。これは世界標準化をしつつの中での現地適合化をどうやるか。もっと言うと、海外需要に耐えられる生産体制を確立するとかね、海外販売に対応してよりグローバルな生産ネットワークの確立をするとか、つまりは現地の中間層の人のための商品開発をどれだけできるかってことは一個の仕事。
今度は、中間層の人たちが買いやすい売り場に、どうやって商品を流通させるかっていう、いわゆるチャネルの話ですよね。
3つ目が、どうやってその売りやすい・買いやすいチャネルに並んだ自社の商品をね、中間層の人たちがどうやったら手に取りたくなるかっていうプロモーションへの投資。この3つしかないんですよやること。欧米の先進グローバル消費財メーカーは、この3つをひたすら中間層に合わせて、中間層のための製品を中間層が買いやすい売り場に並べて、中間層が買いたい気持ちにするためのプロモーションを徹底的にやってるって、ただそれだけなんですよ。
日本企業が悪いのは、この中間層っていうところ頭では分かってるじゃないですか。アジア新興国の最大の市場は中間層の獲得であるっていう事を頭では分かっていながらも、例えば商品開発に関して言うと、本音を言えば日本の商品がそのまま売れたらいいなと思ってるわけですよ。だから商品の現地適合化とか価格の現地適合が中途半端だし、いつまでたっても輸出入商社を使って貿易ビジネスみたいな事やってるわけですよね。現地適合化現地法人があって現地生産工場があるのに、生ぬるいと。そもそもそういう商品作んなきゃいけないと分かってたら、日本人の駐在員にそんなに送り込まないわけですよ。
2つ目のチャネルに関しても、結局最初の商品開発が中間層が大切だと言いながら、上位中間層とか富裕層なっちゃってるから、結局自分たちの並びやすい売り場に並べることしかできてない。チャネルもMTの…なんなら日系スーパーとかね、高級スーパーの輸入品棚とかね、そういうところにしか並んでないので、結局面が取れないと。そういう小売流通に並べるためには、そんなに複雑なディストリビューション・ネットワークは必要ないわけじゃないですか。1カ国1ディストリビューター制みたいなことやるわけですよね。そこでまたに2個目の間違いを犯しちゃって。
3つ目のプロモーションに関しては、面でチャネルを押さえてないから、そもそも面の中間層の欲しい商品開発ができてないから、面でチャネルを押さえることもできてないわけですよね。そうするとプロモーションを打ったって「○○(RI?RY?)」(7'06.64)が悪いから、当然プロモーションの予算は組まれないと。そして「うちはピーアンドジーとは違うからね」「ユニリーバとは違うからね」っていう言い訳に入ってっちゃうわけですよね。でもその並べることと、それを手に取ってもらう事ってのは別問題じゃないすか。そうすると、その手に取ってもらうには絶対プロモーションするんですよ。日本でも絶対やってるわけですからね。そうするとプロモーションも悪循環に入ってしまってトリプル悪循環、みたいな。ここがね最大のミステイクで。
多分僕ね、この350回を超える森辺一樹のグローバルマーケティング・ポッドキャスト史上最も革新的な事をね、消費財メーカーにとってのね、今お教えしていることなんでね、競合さんが聞いてないことを願いますけども。本当にその3つですよ。
東:分かりました。じゃあ森辺さん今日はお時間が来たのでここまでにして、また次回引き続きよろしくお願いします。
森辺:お願いします。