東忠男(以下、東):こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは、森辺一樹です。
東:じゃあ森辺さん、今日はちょっとどんな話をしようかと。
森辺:今日はちょっと何の話をしようかなーと思って、ネットを色々こう見てましたらですね、去年の話なんですけどもね、2016年にライオンさんがフィリピン撤退したというニュースがあったと思うんですが、その件が非常に…何て言うんでしょうね、分解してくと面白いかなと思いましてね。
というのは、ケーススタディとして分解をして、我々のアジア新興国進出の何かひとつのスタディになればね、面白いのかなと思って。今日はそのライオンのフィリピンの撤退事例についてお話できたらと思うんですが、いかがでしょうか。
東:そしたらそのライオンのフィリピンが具体的になぜ撤退したのかとか、どういう合弁だったのかっていうのを、概要をご説明いただいてもよろしいでしょうか。
森辺:概要を説明すると、平成24年6月にライオンはフィリピンのピアレス社っていうのがあるんですけどね、そこと合弁でピアレスライオンを設立しましたと。シャンプー等を中心とした事業を行っていたと。生産と販売を現地で行っていたと。それが4年後、平成28年6月、24年6月に合弁会社作って、4年後の28年6月に合弁解消して撤退しましたというのが、ライオンのIRに載っていると。
当初この会社は6億ペソ、当時の換算レートで14.3億円。で、51%がライオンですと。ピアレスが49%。したがって、ライオンは7億ぐらい突っ込んでるわけですよね。ピアレスも7億突っ込んだと。4年経って蓋開けてみたら、このピアレスライオン債務超過状態になっちゃってると。当初想定してたよりも早期の収益化が困難であると。なので解消しますよいう風にライオンはIRで言ってるんですけども。ライオンとピアレスが債務超過相当分の債務の代理返済を行って、債務超過状態を解消してからライオンはピアレスライオンに対して債権放棄をして前株を譲渡したという。簡単に言うと、7億ぶっこんで7億損して帰ってきたっていう、そういう話だと思うんですよ。
フィリピンという国で4年で撤退を決めるっていう、この決断の早さはある意味は素晴らしいスピード決断だなという側面がありつつも、4年で撤退するんだったら端からこうなることは想定できなかったのかなという、もうひとつの側面もあると思うんですよ。フィリピンって、ASEAN6カ国の中で言うとね、SMTの先進ASEAN…シンガポール、マレーシア、タイとは違って、新興ASEANと私は呼んでますけど。VIP…ベトナム、インドネシア、フィリピンに当てはまるので、基本的にはある程度長期の投資をしないと回収ができない国であると。トラディショナルトレードの数が1000に対して、フィリピンの店頭小売の数っていうのは80万店以上という風に言われているので、チャネル…ストアカバレッジを取るのにね、かなり時間かかるから長期の回収になりますよと。近代小売だけでどんだけブンブン回したって、そんなに早期の回収はできないっていうのは、もう流通構造上わかってるのでね。
もうひとつの要因が、フィリピンっていうのはインドネシアみたいに日本製が一番最初の消費者の選択肢じゃなくて、まず最初にアメリカ製が来ると。アメリカびいきの国であると。その次に日本製もしくは最近では韓国製が入って日本製というような状態の中で。何て言うんですかね、なかなかよくありがちな現地のパートナーと合弁作ってやったはいいけど…販路を目的にしたんだと思うんですよ。そのピアレスのね。もちろんピアレスっていう会社同じ様な製造業だから、同業種合弁でしょ、これは。
東:洗濯用洗剤とか。
森辺:なので、向こうは販路を持ってると。ただ、あまりいい物作れないと。日本の会社はいい物作れるけど、販路は持ってないと。よしじゃあ合弁すれば、いい物を彼らの販路で売れるんじゃないかって、そういう想定で行くわけですよね。でも14億の資本金7億以上ぶっこんで4年で撤退ってなると、基本的には技術だけで吸い取られて、販路は取れなかったという、よくありがちな…少し前にはね、よくありがちだったんで、なかなかこの2010年超えてからこういう失敗も珍しいなと思ってて。これって2000年代後半ぐらいの失敗事例でよくあった気がするんですよね。だから2010年以降の失敗としては、なかなかこうレアケースでね、懐かしい失敗方向だなと思っちゃったんですよね。
僕もこのライオンさんにインタビューできてないんでね、仮説でお話をしてるんで、どういう経営判断がここにあったのかっていうのはイマイチ読めない所はあるんですけど。そんな感じですよ。
東:売り上げが平成27年12月期で約11億あったっていうことなんですけども、これでも倒産…債務超過状態になってしまうってことは、森辺さんとしてはどういった想定がされると…
森辺:おそらくMTへのの導入費で相当コスト嵩んだんだと思うんですよね。11億? 売り上げが。11億売るのに当時そんなにTTにね、ピアレスライオンの製品が入ってたかって言うと、そんな印象無いんで。基本的には MTにライオンさんのシステマとかがガーッて一時期置かれてて、この置き方相当掛かるなっていうような置き方だったんで、多分プロモーションフィーなりリスティングフィーいわゆるMTへの導入費、リスティングフィーだったりプロモーションフィーだったり、そんなものが諸々かかったんだろうなぁという印象が強いですかね。
結局そのMTで売れ始めたら、今度そのTTの店主が、製品をTTに適合化させないといけないですけど、店主が興味を持ち始めて、取り扱いをしていくと。TTのストアカバレッジが上がると、それはMTでも評価されるんで、どんどん導入費が下がって相乗効果が出るっていう所まで行き着く前にギブアップした状態だと思うんですよね。四年で11億ってすごいじゃないですか、結構ね。だから4年で11億までいったのに勿体無いなっていうのはちょっと感じるんですけどね。悪くないですよね。すごくはないけど悪くはないですよね。
東:そうですね。でもそこに幾ら突っ込んだんだっていう話も、一方であるってことですよね、森辺さん的に。
森辺:そうですね。なんで、ちょっとこのピアレスライオンのね、決算書はね、入手できればね、それ分解してけばね、もっとより具体的な想定はできると思うんですけどもね。ちょっとライオンさんに嫌われても困るんでね、そんなことはしませんけどね。(笑)
なんで、結構僕期待してたところがあったんですよ。ライオンの商品が2012年ぐらいまでは結構よかった、13年とかね。結構やってた気がするんですよ。「おー!」と思って「頑張れライオン!」と思ったんで期待はしてたんですけども、残念だなあと。この件に関しては多分今回1回で語れないんでね、もう少し僕の仮説ベースでこういうことがあったんじゃないか、こういうとこ上手くしたら上手くいったんじゃないかと。この7億って、4年で7億ですからね。資本金半分のね。7億をもうちょっとこう使ってればよかったんじゃないかみたいな、そんな話が出来たら面白いかなと思うんですけどね。
東:分かりました。じゃあ今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。