東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは。森辺一樹です。
東:それでは森辺さん、引き続き水野さんをお迎えしてですね、どういう話をお伺いしていきましょうか。
森辺:今日はですね、水野真澄といえばやっぱり中国なので、昨今の中国からASEANシフトみたいなその流れ、チャイナプラスワンみたいなこと、いう流れが日本では起きてますが、少々メディアのあおり方がひどいなあという気もしないでもなくて、その辺を含めて、本当にアジアなの、中国なの、どうなのというところの話をちょっと水野さんに聞いていきたいなあというふうに思います。
水野:わかりました。
森辺:じゃあ水野さん、よろしくお願いします。
水野:よろしくお願いします。
東:お願いします。
森辺:まず今の中国離れというか、リスク分散というかたちで、今まであれだけ中国と言っていた企業さんたちが急にASEANだと言い始めていて、どう考えてもマーケットとして見たときにASEAN11カ国を全部まとめても中国の消費力には到底かなわなくて、そこには何百倍の差があって、一方でミャンマーとかベトナムとかっていうことが、ここ近年騒がれていて、ベトナムも去年生産拠点としての進出が日本が過去最高で今年も順調に伸びていて、一方でミャンマーなんていうのは今インフラ整備をちょうどやってるような、そんな最中で、当然今後期待はできる地域なんだとは思うんですけども、一方でメディアの報道見てるともうミャンマーしかないみたいな報道で、誰もがミャンマーってものすごい言っていて、二千何年かに政治家も社長さんもいろんな人がベトナム行って、ベトナムだこれからは、っていうそんな時代が確か2007、2008年にあって。で、今それがまさにミャンマーで起きてて。でもミャンマーなんてマーケットとしては多分日本の1000分の1とかね。そんなマーケットであって、中国に対する牽制の意味合いも含めてのミャンマー、みたいなね、そんな位置づけがあると思うんですけど、結構リスナーの方々もすごくその辺気になってるところなんじゃないかなと思ってまして、水野さんなりのその辺の解釈をお話しいただけたらなというふうに思います。
水野:まず前提としてと言いますか、総論として言いますと、私個人としてリスク分散ですとか、そういったものは当然のごとく必要だと思いますから、中国一極、もう一本足打法というのをとりあえず進めているわけではなく、やっぱりそれは企業の合理的な判断にしていくべきだろうなと思うんですね。で、じゃあ私がアジアの、ASEANのビジネスやっていくかどうかっていうと、資本提携先と一緒にはやってますけれども、そちらが出してますので。ただ私個人は前回にも申し上げましたけれども、中国で法律解釈して、そして実務をやって、ですからその両方がわかるという自負があるからやっていることで、今あと再来月50になるという状況の中で、また同じことを馬力でやってくかっていうと、なかなかちょっとつらいものがあるなっていうのが事実は事実。ただそういう前提はあるんですが、やっぱり日本企業として、企業の論理としてまず生きていかなきゃいけないと。生きてくためには金を稼がないと、利益を取れなきゃいけない。それが国を守ることであり、家族を守ること、社員を守ることであり、社員の家族を守って、顧客を守る。要するに企業の責任っていうのは企業を存続させること、利益を上げることだということは、僕社会人としては、前提として考えてる。で、そうであれば、まずは判断っていうのは冷静に行わなければいけない。やっぱり最近のメディアの報道見てますと、非常に客観性を欠いた話が非常に多くて、これについてはもうちょっとまじめにやらなきゃ、っていうとちょっと強いですけれども(笑)、冷静に分析しなきゃいけないと思うんですね。それは例えば、じゃあ海外でまず売りたいんですか、つまり製品を海外に売りたいんですか、それとも海外で作りたいんですか、それとも両方やりたいんですか。それをまず選定しなきゃいけないわけで、それに応じて最適値って変わってくるんですよね。例えばものを売りたいんですっていうときってやっぱり購買力が前提になるわけですから、今おっしゃられたように中国の購買力非常に高いと。で、この状況でもう中国やめますと。私はミャンマーに行くんですっていうときに、これマーケットの違いなんて、アメリカとキューバと同じ、いやいや、計数的にはさておきね(笑)。だから要するにメディアが例えば、もうあなたはアメリカ行くのやめなさいと、キューバだけにしなさいと言ったら、ちょっとこれいかにもおかしいでしょと。それ常識的にわかるでしょと。それと同じことが報道で行われてるのはやっぱりそれはおかしいですねって思うわけですね。ですから、じゃあそのときに考えるべきことは、確かに、例えば中国でもう工場がありますと。じゃあ作ったものを国内に売ります。これは非常に自然な話であって、それはその状況で利益が上がってればそれはいい話ですよね。じゃあ新たに中国に工場を作りますか、もしくは日本で作ったものを、今のところ若干円安にもぶれてきてますから、日本で作ったものを中国に売りますか、それともASEANで作ったものを中国で売りますか、どれにしますかっていうのをまず選定する必要がありますし、じゃあASEANでやるんだったらとりあえず中国とASEANのFTAっていうのを有効活用してコスト削減、これ一つ。で日本からのものっていうのもやっぱりどういうかたちでデリバリーしていくか。で、条件の差別化するために中国で販売会社を作れば、そしたら人民元だけで、要するに国内でジャストインタイムでものもデリバリーできるわけだし、やっぱりそういった意味で、投下、さらに販売会社っていうのは工場作るよりはリスクも資金もミニマイズできますから、こういったようにモデルを組み立ててくねっていうのが一つの常識的な計画であると。じゃあ作るほうはどうか。作るほうと言ってもまず前提として、例えばミャンマーの人件費は中国の何分の1だから、だから何分の1でものが作れるんだなんて書いてあったのを、あれがありますけれども(笑)、ナンセンスな話で、まずものを作るにしても部材がなかったら作れないと。じゃあ部材どこ、ミャンマーに今のところ販売市場も調達市場もない状況の中で、じゃあその部材どこから持ってくるの、中国ですっていったら、それ誰が買うの、今のところ中国ですっていう話だったら、何のためにじゃあミャンマーでもの作るんですか、このデリバリーのコストとリードタイムが増えちゃうだけじゃないですか、というような話もあると。ですからやっぱり、そういったものを作るにしても、つまり産業集積がどうなってて、どこでその部材が買えるのか、ちゃんとインフラはどうなのか。例えば大きな工場が10件出ちゃったらもう毎日停電になっちゃうような状況じゃものって作れないわけですから、そこら辺のところを総合的に考えして、製造するにしても場所を設定していく必要があると思うんですね。
森辺:そうですね。なんか最近、ミャンマー進出支援とかっていう会社も急にポコポコポコポコ出てきて、今ミャンマーって企業の許認可申請ってどれぐらい?
水野:まだ認可ベースで100社なんですよね、日系企業はね。それも最近は大部分がコンサルティング会社だか何かだっていう中で(笑)、この状況じゃ産業集積って話はないですね。
森辺:そうですよね。で、そのコンサルね、同じ立場としますと、ミャンマーだけにフォーカスしてコンサルティングビジネスやっても、多分パイが少なすぎちゃって、恐らく多分収益化できないような気もするんですよね。
水野:そうですよね。ですから全体の中の一つとしてミャンマーを追ってるんだったらいいんですけれども、ミャンマーに、コンサルティング会社という意味で、そこに一極集中だと、やっぱりまともなこと、つまり飯のネタがない。そうするとやっぱり、安定的に、つまりコンサルティング会社にしても、どうやって情報集めるか、どうやって人材を集めるか、どうやってソリューションをするためのシステムを組み立てるかっていうのは本当に当たり前の話としてやらなきゃいけないことで、そのためにはベースとなる収益がないとできないわけですから、だからそれができない状況でコンサルティングを始めるっていうのは、僕個人としては、ちょっとできない話だなとは思うんですよね。
森辺:あと、僕お客さんとお話ししてて、国選びって一つ最初のキーになるじゃないですか。で、日本の多くのお客さんが国が始めから決まってる。ベトナムに行くんです、インドネシアなんです、ミャンマーなんです、中国なんですと。で、なぜインドネシアなんですか、なぜベトナムなんですか、なぜマレーシアなんですかっていう質問を投げ返したときに、その説明があんまり、なるほどという説明は結構返ってこない会社が結構いて、僕必ずその質問をするようにしてるんですけど、なんかその、相対比較ってすごい重要で、海外に出ることって目的じゃないじゃないですか。出て利益を上げるとかコストを下げる、まあ売るんだったら利益を上げるだし、作るんだったらコストを下げるだし。そうなってくると、やっぱり相対比較ってすごい重要だなと思っていて、日本のほうがマーケットはもしかしたらでかいかもしれなくて、ミャンマーで何かをするんであれば日本で何かをしたほうが投資対効果がいいケースって結構あると思うんですよね。だからそんなことは僕はすごく考えていかなきゃいけないなと思っていて、チャイナプラスワンっていう言葉は日本でしか使われてなくて、世界ではそんな見方は全くしてないわけじゃないですか。だからそこってどうですかね、水野さん的に。
水野:そうですね。今言われたことはもうまさにで、要するに海外に出ることが目的じゃなくて利益を上げることが目的なので、であれば別に海外に作らないで日本で作ったものを別に海外で売っててもいいと。つまり品質が保ててかつ一番競争力があるものを作れればいいっていうのが、まずそこを基軸として考えるべきだと思うんですね。で、大企業でしたらいろんなとこで、中国でもASEANでもどこでも、いろんなところで展開してますから、あとは状況に応じてバランスを変えりゃあいいっていうことになると思うんですね。あとはやっぱりそこまでの資本力がない中小企業の方ですと、1個か2個に絞らざるを得ないというのであれば、やっぱりそれは選定が非常に重要になりますので、じゃあそのときに、要するにどこに売る、そもそもどこに売るものなのか、つまり最終的には日本に回収するものなのか、それともその海外で売ってくものなのか。さらに部材はどこで調達するのか。これをまず最低限選定しないと最適値ってかかわって、もう判断材料なくなってきちゃいますよね。
森辺:そうですよね。でもやっぱりそういう企業はまだまだ多い気がすごくしますけどもね。
水野:でもやっぱり実感として、ASEANと中国のFTAですか、関税免除のご質問っていうのは非常に多いので、ですからそういうご質問が増えてきてる状況を鑑みると、やっぱり取引が広域化してきてる。で、さらにいろんなカードっていうのが出てきてるっていうのは実感しますよね。ですから例えばFTAを使うんです、それも非常にいい話で使うべきだと。じゃあ中国に会社作らなければ、ASEANに会社作らなければ、そういうFTAって使えないんですかっていうと、これは日本企業とか、つまりそのFTAを使う条件っていうのは貨物が直送されることですから、ですから途中の国で、インボイススイッチされても、貨物がASEANから中国に直送されればいいわけですね、その逆もまたしかりですけども。だから、だったら日本で、日本の会社がインボイススイッチしてそのビジネスやりましょうでもいいですし、香港で、香港でしたら1香港ドルで会社できますので、まあもちろん実態のない会社作ると日本の税務上の問題ありますからそこら辺の注意点はありますけれども、ただ資本投下っていうのはミニマイズできますから、そこをどう三国間の拠点として実態を持たせていくっていうのも一つですし、さらにその軸足をどっちか考えればASEANに近いなっていうことであればシンガポールでもいいしとか、いろんな選択肢っていうのが出てくると。ですから非常に広域的な判断、つまりまず国の選定も一つ。さらに、有利な条件でものを作って売るためにある程度そういった、中国、ASEANですとかさらに欧米のほうも含めて全体的なパッケージ、システムを作る必要があるということは感じてますね。
森辺:そうですね。どんどんどんどん国境というものが薄くなってきてますよね。
水野:そうですね。あと、2008年ですか、僕がベトナム出張行ったときにメガバンクの方が言われていた言葉が非常に印象的なんですけど、「ベトナムが中国と代替することはありません、補完することはあっても」という言葉が非常にあれですね。ですからやっぱりただ、補完っていうのは非常に重要なことであって、日本の企業のオペレーションをちゃんと完全にするために、リスクがあったら、中国にリスクがあるんだったらどこで補完するかということですね。やっぱりその逆もまたしかりですけれども、そういうことをバランスよく考えていくっていうのはやっぱり必要です。
森辺:そうですね。ただまあ、去年ぐらいからの尖閣の問題が出てからのメディアの東南アジアシフト報道ってちょっとやり過ぎ感があるのかなっていう。
水野:そうですよね。だからやっぱり中国の産業集積がこれだけ進んだっていうのも、だからまあ、中国だったらほとんど部材調達できるっていうのも、こうなったのもある意味メディアが随分、2000年ぐらいにあおったっていうのもあって(笑)。
森辺:いや、本当そうですね。
水野:これだけあおってこういう状況にしといて、さらに今度ASEANかみたいなことになって(笑)。で、これがいいんだったらいいんですけれども、明らかに違う情報与えて、そういういびつな状況が起こるのであれば、そこら辺はメディアがちゃんと責任取らなきゃいけないとこだと思いますよね。
森辺:そうですね。なんかでも、ああいうメディアの中国特集とかASEAN特集っていうのはこの10年ぐらい、年間に何本かやるじゃないですか。それを見ていくと、上だって言ってたり下だって言ってたり、東だって言ったり西だって言ってたりするんで、ああいうのはやっぱり客観的に捉えて、あんまり左右されないようにしないといけないですね。
水野:そうですよね。やっぱりメディアを信じ切らないで、自分の目で確かめるっていうことは非常に重要ですし、さらに2、3日の出張を1、2回行っても実態見えてこないですから、ですからやっぱり、ここに住むんだったらどういう生活が待っていて、さらにどういう人たちが採用できて、こういうところをじっくりやるためには最低でも数週間はまずいて、実際そのうえで判断しないとだめだと思いますね。あと結果ありきっていうのはだめで、やっぱりちゃんと判断を下す人がちゃんと行って見ないといけないと思う。判断いく人はもうミャンマーだと決めてますと。で一応部下が行って、やっぱりミャンマーだめですって言っても、何を言っているんだ、みたいなね(笑)。とりあえずミャンマーありきっていうのはだめですよね。それはミャンマーだろうがカンボジアであろうがどこだって同じなんですけれども、ただやっぱりそういったような、まず情報を分析して、さらに行ってインフラを確認して、その状況で判断するっていうのはもう最低限必要なことですよね。
森辺:そうですね。なるほど。大変貴重なお話をありがとうございました。リスナーの皆さんにも大変いい時間になったんじゃないでしょうか。じゃあそろそろお時間ですので、また次回よろしくお願いします。
水野:よろしくお願いします。
森辺:ありがとうございました。
東:ありがとうございました。
水野:ありがとうございました。