東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回はベトナムの小売市場について概要をざっと教えていただいたんですけども、今回もう1つ、ベトナム特有というか、ベトナムは特にそれがはっきりしているということが言えると思うんですけど、ディストリビューターが結構特殊な感じなのかなという感覚を受けるんですが、その辺はいかがでしょうか。
森辺:ベトナムは特に、国によってディストリビューターの定義って微妙に違ってくるんですけど、ベトナムは特にそれがはっきり違っていて。日本の常識で言うと、ディストリビューターと言うと言ったらセールスをやるイメージですよね。当然、資金も回収するし、ときにはデリバリーもするけど、基本何かモノをデリバリーするというのは運送会社の仕事。なので、言ったらセールスをしてくれる、自分たちに代わって売ってくれるというのがたぶんディストリビューターに求める能力だと思うんですよね。ただ、ベトナムの場合はディストリビューターと言うとほとんどがデリバリーをする会社のことを言っていて、ディストリビューターでもセールス機能を持っている会社と持っていない会社が明確に分かれると。持っている会社って規模の大きなところ、主要のもので言うと20~30ぐらいしかないんですよね。あと、小さいところ、やっぱりユニリーバなんか、ネスレとか、100とか150とか使うじゃないですか。そういうところと言ったらほとんどデリバリーだけ。エースコックが使うようなところもそうですよね。だから、そういう意味ではセールス機能とデリバリー機能が明確に分かれているので、そこが大きい特徴じゃないですかね。
東:そうすると、セールス機能がほとんどついていないディストリビューターが多いということなんですかね。
森辺:はい、そうですね。
東:セールスはメーカーが独自でやらなきゃいけないみたいな感じですか。
森辺:ん?
東:メーカーがやらなきゃいけないんですかね。
森辺:例えば、消費財メーカーの場合、近代小売はメーカーが直接セールスしますと。チェーンストアなので、言ったらセントラルにドーンと商品を突っ込んで、あとはセントラルから小売側が配荷をするというパターンが大半だと思うんですよね。一方でTTと言われるトラディショナルトレードのほうでディストリビューターを活用していると。だから、ディストリビューターも完全に満足のいくほど自分たちに代わってセールスをやってくれるようなところが本当に普通にたくさんあるかというと、そうじゃないので、ある程度自前で数百人体制の営業マンを持って、その人たちがディストリビューターと一緒に市場を開拓していく、セールスをしていくということにはなるんですけど、実際には自社の人間がディストリビューターをマネージメントして、セールスそのものというのはやっぱりディストリビューターがやるというのが美しい姿で、そういう管理育成をすごくしていかないといけないというのは1つあると思うんですよね。
東:そうすると、ほかの国にもやっぱり管理育成とかマネージメントの面が結構大変だったりするんですよね。
森辺:大変ですね。その通りですね。ほかの国だと、ディストリビューターでセールスしないとかってそんなにないですからね。基本、質はどうであれセールス機能はあるので。デリバリーだけっていうのは非常にベトナムらしい、これってもともとの社会主義のバックグラウンドでそういうものが顕著に出ているんじゃないかなと僕は思っているんですけどね。セールスというところまでは。もともとは売りに行くんじゃなくて買いにくるという話なので。なので、何かをこっちから自発的に売り込むということはしないじゃないですか。これは資本主義がやる、資本主義経済で成り立つ商売ですよね。配給なんかというと、それは取りに来るんでね、顧客になる、あれが、そういう流れが大きく影響しているのかなと思うんですけどね。
東:なるほどね。社会的背景とか国の背景も結構大きく反映されている。
森辺:そうですね。
東:そうすると、メーカーさんとしてはすでに進出しているところもあれば、これから進出しようというメーカーさんもいると思うんですけども、その辺はやっぱり自社でセールスマンを雇って、プラスディストリビューターを使っていくみたいな感じになっちゃうんですかね。
森辺:そうですね。MTは直販するじゃないですか。現法あるのであれば直販をして。TTに関しては自分たちでTTを1軒1軒回っていたら50万店あるわけですよ。100年かかったって攻略できないので、やっぱり最小限のセールスを自分たちで抱えながら、そのセールスがディストリビューターの10人のセールスを管理育成していく。もう1人のセールスが別のディストリビューターの10名を管理育成していくというマネージメントに徹底をしていくということをやっていかないと。ときにはその10人のためにセールスを見せるということはあるのかもしれないですけど、基本的なスタンスとしては自分たちで雇ったセールスが最前線でセールスしていたら何千人とか必要になりますよね、50万店の間口をカバーするのに。なので、やっぱりディストリビューターを使うということをしていかないといけなくて。50万店1回行って終わりじゃないじゃないですか。例えば、30万店取ったとしても日々行かないといけない。ほぼ毎日行って、お父ちゃんお母ちゃんに新しい注文取って、現金回収してということをやっていこうと思うと。1回だけ行けばいいんだったら終わりが見えますけど終わりが見えない活動なので、やっぱりディストリビューターをしっかりマネージメント管理していくということが、僕はすごく重要だと思いますけどね。
東:分かりました。森辺さん、ここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
<終了>