東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:最後の回になりましたが、村山社長をお迎えして、最後はどういった話で?
森辺:今回はインバウンドのビジネスとアウトバウンドは実はすごく密接につながっていて、今回7年間、日本企業に平等に与えられたチャンスをいかにして取り込んで、それをインバウンドからアウトバウンドの事業に効果を最大化させていくかというところを、お話を伺えればなと思います。村山さん、どうぞよろしくお願いします。
村山:よろしくお願いします。
森辺:まずは、インバウンドのいわゆる観光客誘致というものと、アウトバウンドとわれわれが海外、今だとアジアを中心に商品を売っていくという定義で使っていますが、このインバウンドとアウトバウンドの関係性を証明というか、表現するような事例みたいなのがあるとありがたいのですが、何かありますかね?
村山:まずは、この前われわれの方で調査をさせていただいたときの事例なのですけど。アウトバウンドといったときに、物を売るというところと、日本のコンテンツとかそういったところを海外に発信していく、経済産業省が推進しているクールジャパンの取り組みで、アニメであるとか、アパレルであるとか、日本の伝統工芸品であるとか、いろいろなものを海外に発信していこうという動きがあります。調査の部分は実はインドネシアでやって、それはセミナーでも発表したのですけれども。インドネシアの方々に何百人かまとめて調査をかけたのです。「日本に来るときにどういう物を食べたいですか?」みたいな、そんな調査をしたのです。いろいろなネットから自分の好きな画像、食べたい画像をアップしていただいて、それで何が食べたいかというのを把握するという調査だったのですけど、なんと一番多かったのが「どら焼き」なのです。
森辺:すごいですね、それは。
村山:なんでどら焼きか分かります?
森辺:いや、分かりませんね。
村山:どら焼きはドラえもんの大好物ということで。ドラえもんはインドネシアでも放送をされていて、若い世代の方は特にやっぱりドラえもんを知っているのです。本当にすごく人気があって、それの影響を受けて、日本に行ったときには、やはりどら焼きが食べたいなという方が多いというのが分かったという調査だったのですけど。これは1つ、事例として日本のコンテンツが海外に発信され、要はクールジャパン的な形で発信をされることによって、それをきっかけに日本のことを知って、好きになって、実際に足を運んだら、それが食べたいみたいな、そういうところで海外の情報発信と、その上でその人が日本に足を運ぶ。さらに、何かを買うみたいなところはリンクしている。そういう事例ですね。
森辺:ホテルのチェーンとかもそうなのですけど、世界の高級ホテルチェーンはリッツカールトンであったり、ヒルトングループであったり、SPGであったり、いわゆる欧米系のホテルチェーンが中心で、日本の高級ホテルと言うと、帝国ホテルさんを中心に、基本的には国内にあって、海外のお客さんを泊めると。グローバル展開をしている高級ブランドホテルチェーンは、日系はほとんどというか、全くないですよね。けど、実は日本のビジネスホテルはすごく洗練されている。外国人が泊まりにきたときに、たかだかすごく小さいスペースにも関わらず、いわゆるビジネスマンが必要とするあらゆるものが用意されていて、価格も安いと。アジアとか行くと、すごく両極端で。高級ラグジュアリーホテルのホテルか、日本人ではとても泊まることのできない安い宿か。この両極端。これが新興国に行けばいくほど両極端で、インドなんかは、高級ホテルが5万、6万するのですよ。日本だと2万、3万なのが5万、6万。一方で、とてもではないけど泊まれないという宿、本当に劣悪な、お湯が出ないみたいなそういう中で、いわゆる「ちょうどいい」がないですよね。日本のビジネスホテルはすごく評価を受けていて、実は高級ブランドホテルチェーンでは世界の市場では負けてしまったけれども、ビジネスホテルのマーケットではまだまだ僕は勝てるチャンスがあると思っている。あの仕組みを輸出していくというのも1つインバウンドで評価されているのであれば、いち早くいろいろなビジネスホテルグループにはやってもらいたいなと思ったりするのです。
村山:そうですよね。それは本当にサービス業の部分だと思うのですけれども。実際そのビジネスホテルのランクはなかなかないですよね、海外で。非常に人気を受けていて、ドーミーインとかあるのですけど。ビジネスホテルで朝食がついていて、朝食がすごく美味しいのですよね。結構韓国人とかアジアの方にも人気があって。今、韓国進出を、そういうのを実際やっているのです。同じビジネスモデルで海外に勝負をかけてという形でやっているので、本当にビジネスホテルというのはすごく特徴があると思いますし、日本オリジナルだなと。あとはカプセルホテルとか、いろいろジャンルがあるじゃないですか。カプセルホテルもすごく人気がありますよね。外国人観光客から見るだけでもいい、見たいという人も。
森辺:泊まりたいと言って泊まる方も多いですもんね。 村山:そうですね。新宿、うちの事務所の近くにもそういうカプセルホテルがあるのですけれども、9割が外国人ですね。それぐらい本当に人気がありますね。
森辺:中国なんかだと、ビジネスホテルも10年ぐらい前まではなかったのですけれども、10年前ぐらいから出来てきていて、あれは日本のビジネスホテルを単純に模倣して、アレンジしてというホテルが結構チェーン展開して、バーッと広がっていっていて。せっかく日本で生まれた良いものが、なかなか世界に評価されているにも関わらず、評価されていることにも気がつかないのか、気付いているのだけれども、一歩出ないというのがすごくあるし。あとコンビニエンスストアに行ったときに、ポテトチップスの種類の多さ、いわゆる世界で行ったらバーベキューか、チーズか、サワークリームか、塩か、そんなところが定番だと思うのですよね。日本ではわさびとかしょうゆとか、バターしょうゆとか、黒こしょう何ちゃらとか、とにかくこだわったポテトチップスがものすごく多いじゃないですか。ああいうものを全種類買って帰る人とか。チョコレートだってそうだし、ガムだってそうだし、あめだってこんなに種類が要るのですかというぐらいあめの種類があってね。ああいうものは外国の人にとってみたら、すごく受け入れやすいもので、今回のインバウンドをヒントに、いかに海外に輸出していくかということを考えていくいいチャンスだし、もちろん日本は物がいいのだということだけで海外にそれを持っていっては駄目で、そのチャネルをどう構築していくかということを並行して両方やっていかないといけなくて、どうしても日本の企業の場合は良いのだからと、物が良いというところだけを押していくのですけど。三ツ矢サイダーとスプライトと、何でこれだけ世界シェアが違うかというと、チャネルがあるのかチャネルがないのか、あるのかないのかだけの違いなだけであって、味は変わらないわけで。このチャネルというのは両方やっていかないといけないのですが、すごくいいヒントになるはずなのですよ。このインバウンドが。この7年間、海外に行ってプロモーションをするというのは大変ですけれども、来た外国人に対してプロモーションをするとか、彼らの購買行動をとるとか、アンケートをとるというのはすごくいい機会なので、ぜひそんなところを活かしていけたらなと思うのですけど、その辺りはどうですかね?
村山:そうですね。実際やっている会社さんも多いですね。商業施設さんなんかは、例えばドンキさんとかイオンさんは海外に進出を考える中で、やはり国内での認知を高めたいということで、外国人観光客が来たときに、しっかりとリーチしてブランディングしていく。あと、メーカーさんとかですね。お菓子屋さんとか和菓子とか、そういったところも、やはり海外にいきなり店舗をかまえてやるとか、出店したりとかは難しいと思うのですけれども、国内に来ている外国人の方なんかが集まっているところでサンプリングするとかというのもできますし、実際自分のお店に来てくれる顧客を分析すると、外国人、どこの国の人が多いのか、彼らはどういう印象を持っているのかとか、その辺りが国内に流れてきてしまう。絶好のテストマーケティング、さらに今後7年間、外国人観光客が増えていくのは間違いないので、それを生かして自社の海外展開のきっかけ、あるいは最初の一歩にしていくところは、ぜひやってみてはどうかなと思います。
森辺:以前村山さんに、海外の人が欲しいもので、「こけし」がすごく多かったと聞いたような気がしたのですけれども、あれはどんな話でしたっけ?
村山:日本人とかはもう買わない方が多いですよね。ただ、外国人観光客の方から見ると、日本のこけしとか、日本独特の物という印象を持ってもらえて、買う方が多いとか、扇子とか。日本の伝統工芸品みたいなものが、日本の若い人とかになかなか買ってもらえないという現状がある中で、逆にそういうものに外国人観光客は日本らしさとか、日本の物というのを感じていただいて、それを買っていただくというケースが増えていますので、そういう意味では日本の伝統産業、伝統工芸品とかそういうのを守るという意味でも、非常に重要なマーケットだなと思います。 森辺:僕もすごく思うのですけど、伝統工芸品とかヨーロッパでいうと革製品とか、オートクチュールとかいろいろあるのですけど、伝統工芸品がすごくコモディティ化してしまって、昔は日本のいろいろな観光地でいろいろなお土産があって、それをみんなむさぼるように買って帰ったのだけれども、今は誰もそれは買わないじゃないですか。伝統工芸品をコモディティ化させるのではなくて、そこでしか作っていなかったりするじゃないですか。だとすると、そこにしっかりとしたブランド価値とプライシングをくっつけて、それを海外の人に発信をしていくと、わざわざ海外に店舗を出さなくても彼らは海の向こうから横断をして来る。たとえばヨーロッパの伝統工芸品とかって、欲しいので日本で売っていなかったら向こうまで行って買いにいくわけじゃないですか。中国の人は買いあさっているわけですよね。そういうブランディングというのですかね。伝統工芸をやっている小さな会社組織ではないかもしれないけど、屋号だからマーケティングは必要ないのだとか、ブランディングではないのだとかではなくて、工芸自身をアートにさせていくというか、ブランドにさせていくという取り組みを世界に発信していけると、日本の伝統工芸品はまだまだ売れるのではないかなと思っていて。港区の虎ノ門の方にサムライ(※日本刀剣?)という刀屋さんがあるのですよ。そこに外国人が来て、帰国するときに買っていったりするのですよ。刀はすごく外国でも人気だから買っていくのですけど、別に刀ではなくたって、こけしでも良いですし、何でも良いのです。扇子でも良いですけど、何かこうブランディングをうまくやっていく必要があるのではないかなと気がするのですよね。
※参考
http://nttbj.itp.ne.jp/0334344321/index.html
村山:そうですね。メディアとか映画の中で、日本の生活様式とかそういうのがもっと出て行くのはやはりとても重要だと思いますし、なかなかこの伝統工芸品も単品でいくと珍しくて買うのですけど、使い方が分からないとか、要はお茶でも急須でも、日本の生活様式の中で使っているシーンがあるわけじゃないですか。それの全体感を海外に発信していかないと、なかなかこう物は良いのだけど、どうやって使って良いか分からないという部分を、実際に私も伝統工芸品を海外に発信していくということで携わったときに、海外の展示会とかで物だけ見せているとやはり言われるのですよ。これどうやって使ったらよいのと。物はすごく良いのだけど。そうすると、もうちょっとセットで日本のライフスタイルとかそういったものを含めて発信していくと、より価値を感じていただけると思います。それが日本のオリジナルというか、そういった印象を与えていけるのではないかなと思いますよね。 森辺:浴衣とかもそうですし、扇子とかもそうですよね。結構日本の伝統工芸品は、ハリウッドの映画の1シーン1シーンでいっぱい出てくるじゃないですか。だから、見たことはあるし、何となく分かっているわけですよ。だからさっきのどら焼きではないですけれども、そういう意味では、すごく可能性があるなと私自身は思ったりしているのですよね。
村山:結局日本の情報発信によって外国人が日本を知って、知るともっと知りたくなるじゃないですか。ネットで調べたり、映画見たり、日本人の友達を作ったり、言葉を学び始めて、また今度日本に行こうかとなると思うのですね。なので、きっかけはいろいろあると思うのです。アウトバウンド、日本のものを海外に発信していくというところで、何が日本製品が自分の家にある、これ面白いのですけど。自分のインターン、過去のインターンでナイジェリア人がいたのです。何でナイジェリア人が日本に来て、日本で働こうと思っているのかときっかけを聞いたら、「村山さん、自分の家はソニー製品に囲まれていました」と。テレビもソニーだし、電化製品はソニーで、日本の製品はりいいなと思いながら育ったのです。いつか日本に来て、その国を見てみたいと、だから日本に来たのだと。
森辺:そういう人多いですよね。それが今サムソンのLGに囲まれていたら、日本に来ないで海外に行っちゃいますからね。本当に危機的状況で、そういう意味でもアウトバウンドとインバウンドは密接にくっついていて、アウトで成功して、インで成功しないはずはないし、アウトで負けたらインも負けだし、インで負けたらアウトも負けなのですよね。特に製造業はそうだと思うので、なのでこれを切り分けて考えるのではなくて、一緒に考えていって、取り組んでいただければ、7年という時間があるのでね。7年あったら前の話ではないですけれども、何でもできると、村山さんのおっしゃる通りだと思うので、ぜひ皆さんには頑張ってほしいなと思います。
村山:そうです。
森辺:そろそろお時間が来ましたけれども、最後に村山さん何かあれば、リスナーの皆さんへのメッセージ等々。
村山:私は今「やまとごころ」というサイトで、インバウンドの取り組みをやっているのですけれども、今まさにあったように、インバウンドとアウトバウンドはつながっていると思うのですね。それは一連の流れみたいなもので、そういう意味ではやっぱり連携が重要だと思っています。われわれの取り組みはもちろん、外国人観光客を呼び込むために、結局は日本を発信していかないといけないのですね。なので、インバウンドもアウトバウンドもそこまで垣根がないと思いますし、国レベルで言うと、経産省とほかの官公庁が分かれてやっているのですけど、うまく私としては国では連携してもらいつつ、民間の部分も連携して進めていくと、2020年オリンピック開催のときには、もっともっと日本のブランドの世界にも上がっていると思いますし、実際外国人が来たときに喜んでいただける状態を作っていけるのではないかと思っています。そういう意味でもぜひ森辺さんと今後連携をさせていただければと思っています。
森辺:こちらこそよろしくお願いします。4回にわたりゲストとしてお越しいただきまして、どうもありがとうございました。
東:ありがとうございました。
村山:ありがとうございました。