東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東: 森辺さん、前回、下町ボブスレーからちょっと脱線して契約書の話になっていましたけども、1回ちょっとおさらいをしていただきたいんですが。
森辺: 前回の続きなんですけど、言葉は悪いんですけど、外人、何人をもって外人と言っているのかというのはちょっと別にして、アジア新興国の人にしろ、アメリカ人にしろ、ヨーロッパ人にしろ、日本人ほどまじめに「1回言ったことを死ぬまで守りきります」なんて言う人ってそうそういなくて。これは比率の話ね、そういう人も当然中にはいるけどマジョリティはそうじゃないと。昨日言ったことを今日コロッと変わっていたり、一度約束したことを破ったりって別に普通に起こり得るんですよね。そこに罪の意識ってそんなになくて。だって、あの時点ではああいう状況でこういう約束をしたけど、そこから時間が経つ中でいろいろ情報も変わってきて、環境も変わってきて、状況も変わってきたので、約束は守れない、普通のことなんですよ、彼らにとっては。日本人にとっては、「まあまあそうは言っても一度約束したことだからさ」という話になりますよね。だから、日本人は約束を守ると。特に契約書なんて結んだ以上、会社がつぶれない限り約束は守るわけですよ。仮にそれが損だったとしても、長期的な信用を得るために。けど、そういう考え方を持つ人たちってあんまりいないので、仮にこれを破ることでこの契約上1億円の賠償責任があるとしても、破ってBということをやって2億円3億円得られるんだったらもう普通に破りますみたいな。日本人って、たぶん2億円3億円Bをやれば、破ればね、契約書破ってBやるともらえると分かっていても、いや、契約書があって約束したことだからと。目先の2億3億で約束を破るなんてってなるわけですよね。それが20億30億だろうと何だろうとそうなる。けど、海外だとそうはならないから、契約書での握り方というものと、日々のコミュニケーションもそうだしオペレーションのそのプロセスの中での握り方、これもやっぱりすごく重要だと僕は思うんですよね。会ったときだけ「Oh, Hello!」とかっていう、そういう握り方ではなくて、常に相手が…。表面上は仲いいんですよ、ただ、常に相手が自分にとって不利益な方向に進んだときにそのタマを握りつぶせる状態にしておくということがすごく重要で。左手も右手も1つはリーダーのタマを握り、もう1つは事業のオペレーションのタマをしっかり握っておくということはすごく重要で、向こうが約束を破りそうになったら、リーガルのタマだけをギュギュッと締めても向こうはそれ破ってきますから、もう1個の実務、オペレーション上のタマも握りつぶしていくというようなことをしないと、なかなか海外の企業はそうなっちゃいますよという、そんなお話でしたね。
東: なるほど。そうすると、リーガルのほうは意外と、契約書がないというところも当然あると思うんですけど、ある程度大手になれば法務部もあって契約書をきちんとして。
森辺: いますね。
東: いるものがありますよね。そうすると、契約書上のリーガル面というのはそんなに日本企業側から見ると問題はないと思うんですけど。
森辺: そうですね。
東: もう1つのほうというのは具体的にどんなところが課題なんですか?
森辺: 契約書のほうは僕も大手の法務を通過している契約書を何回もチェックしている、過去にチェックをしてきているので、言ったら守備は万全、完璧すぎるぐらいの守備ですと。一方で、もう1つのそのオペレーション上の握りって非常に難しいんだけど、オペレーションって日々のオペレーションじゃない?
東: はい。
森辺: そこにはやっぱりコミュニケーションもあるし、リレーションもあるし、いろんな関係があると思うんですよね。そこ自体が、例えば、コミュニケーションをとることでどれだけ握れるかという問題もあるでしょうし、オペレーション自体、そもそもそれがないと回らない状態にどれだけできるかというのも1つでしょうし。何だろうな、前回のボブスレーの話で言うと、それを使うことによってどういうメリットがその国なりボブスレー協会なり選手なりにあったのかというところが1つあるじゃないですか。それ以上のメリットを、曲がった見方をして申し訳ないですけど、別の第三者が出してきたからそれをとったというだけなわけですよね。常に自分たちがやっているオペレーション以上の何かが外からきたときにどうなるかということを考えるということがオペレーションのタマを握るということなんですよ。契約書のタマを握るだけだったら契約書が破られるか破られないかだけを見ていればいいじゃないですか。けど、そんなのは破られるということを前提にすると、今やっているオペレーションよりも、例えば優れたもの、相手にとって優位なものが出たときにどうなるんだろうということを常にウォッチしていくと、相手にとって優位なものや相手にとってメリットの高いものが起こり得ないようなオペレーションに変えていけるじゃないですか、そういうことを言っているというのかな。
東: なかなか、その辺が分かっている企業は当然そうやっているけども、実際にやってみないと分からないというところが大きいという部分ですかね?
森辺: そうだと思いますね。
東: 分かりました。森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺: ありがとうございました。
<終了>