東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の続きなんですけれども、海外で儲けたいということで何が重要かみたいなことをやったんですが。一方で、日本企業は苦労しているところもあれば成功しているところも当然あると思うんですけども、欧米系は結構、アジア新興国に対してもグローバル展開というのはうまいというイメージがあるんですが、その辺は何が違うのかというのをちょっとあらためて。
森辺:大きく分けて2つかなと思っているんですけどね。全体的に言えることというのは、参入戦略が非常に戦略的であるという、いわゆる日本みたいに1P戦略で出ていかないという、しっかり4P戦略をターゲットに当てて出ていきますよというのが大前提としてありますと。もう1つはやっぱり人の部分で、基本的に欧米の先進的なグローバル企業って欧米人によって現地でのビジネスを統治し続けないという、立ち上げて仕組みをつくって基本的にはモニタリングするという、そういうやり方なんですよね。だから、いつまでも現地に居座ってだらだら欧米人が主体になって事業をやるということがないという、この2つがやっぱり非常に大きいんじゃないかと思うんですよね。
東:その1つ目の参入戦略の違いというのは、もう少し詳しく教えていただきたいんですが。
森辺:1Pじゃなくて4Pでいくという話をしましたけど、結局、例えば、アジア新興国だと欧米のメーカーって消費財のメーカーとかだと絶対にターゲットって中間層なんですよね。それがなぜ中間層でなきゃいけないのかということが計算されているので、日本企業みたいに取りあえず導入期は富裕層から攻めようとか、取りあえず自分たちの商品には富裕層にしか合わないので富裕層を攻めようとかという議論、その幼稚な議論がそもそもないんですよね。アジア新興国は所得が低い、けど膨大な数が膨れ上がっている、その中間層が最大の魅力だというアジア新興国ビジネスのコアを理解しているので、中間層以外に当てないという、まず前提として計算しているわけですよね。だから、そこに当ててくるんですよ。対して日本企業の場合、1P戦略というのは、いわゆるProductオンリーの戦略をとるということで、フィリップ・コトラーは、4Pが最適化されないと商品が売れないと言ったわけですよね、Product、Price、Place、Promotionと。その中の、日本のメーカーは、モノがいいからそれで何とかしてくださいみたいな、そこで進むんだけども、モノがよくても売れないということを欧米の企業は分かっているので、Priceもしっかりするし、Placeもしっかりやるし、Placeってチャネルですよね、Promotionもしっかりやると。これは別に消費財メーカーに限った話ではなくて、家電系もそうだし、何でもそう、BtoBでもそうだと思うんですよね。だから、そこが1つしっかりしているんじゃないかなと思いますよ。例えばなんですけど、韓国の企業も最近はそうだと思うんですけど、例えば、サムスンのギャラクシー、あれと日本のメーカーの製品と、Productで何か違うといったら違わないですよね。AppleのiPhoneと日本のメーカーのスマホ、Productで絶対に負けているわけないんですよ。なんですけど、PriceとPlaceとPromotionで負けているからトータルで負けるという話で。例えば、これは家電でもそうなんですけど、白物家電の掃除機とかって、パナソニックとか日立の掃除機とダイソンの掃除機、負けているわけがないんですよね。圧倒的な吸引力みたいなCMをしていますけど、じゃあ、パナソニックの掃除機で事足りないかなんて言うと絶対にそんなことはないし、日立の冷蔵庫が劣っているかと言うとそんなこともないし、ダイソンに勝らずとも劣ってはいないはずなんですよね。けど、やっぱりその他の3つのPが劣っているのでトータルで負けるということにつながるわけですよね。これが中小企業になると顕著で、日本の場合はね、中小企業だから基本的に4Pやらなくてもいいみたいな、戦略持たなくてもいいみたいな、とにかく誰かにすがって頼んでお願いしますみたいな話になっちゃうわけですよね。そうすると中小企業になればなるほど戦略なんていうのはなくて、取りあえず誰かにすがる。いい人にすがれたら成功するし、すがれなかったら失敗すると。何か運で海外進出みたいな、そういうことになっちゃうんですよね。そこがやっぱり大きい違いなんじゃないかなと思うんですね。最初の1個目のほうですね。
東:そうすると、その参入戦略の違いってどう出てくるというか、どう現象として表れてくるのかなというのはあると思うんですけども。
森辺:日本の企業の場合だとやっぱりそんなに広く浸透していかない。僕らの言葉で言うと、カバレッジが伸びていかないという。カバレッジが伸びないので売り上げも伸びないという現象なので、言ったら、いつまで経っても導入期が続いちゃうという。成功、失敗…、大きな失敗をしなかったとしても大きな成功もないので、中途半端な状態がだらだら続いていくというのが大きいですかね、全体的に見るとね。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。
<終了>