東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続きアクセンチュアの清水さんをお迎えしているのですけれども、今回はどういう話を?
森辺:まず清水さん、すみません。前回私、リスナーの方でアクセンチュアを知らない方はいないと思っていたのですが、アクセンチュアの紹介をお願いするのを忘れてしまったのですけど、改めてアクセンチュアってどんな会社なのかをリスナーの皆さんにご説明をしていただいてもよろしいですか?
清水:はい。アクセンチュアは、売り上げ規模でいうと、堅い話なのですけど3兆弱ぐらいの会社でして、世界56カ国くらいで、オフィスも世界中にあります。新興国に関してもほとんどオフィスがあるので、もうちょっと分かりやすい表現で言うと、日本法人で言うと、約50年間、今年でちょうど50年を、法人設立をしてから経っていまして、わりと意外と。
森辺:歴史が長いですね。
清水:意外と日本にも根付いていると思っていますけど。従業員数約5,000人弱ぐらいの会社です。5,000人弱というと、皆さんに分かりやすく理解していただくために、日本企業でいうと、ヤマハさんとかテルモさんなんかが、同じ5,000人弱の従業員数です。一方でアクセンチュアの日本における社会貢献、日本の社会における貢献という感じで言うと、従業員数が5,000人弱だと、外資系企業の従業員ランキングでいうと14位ぐらいになります。さらには、学生からよく就職ランキングというのが出るのですけど、「コンサルティングとして行きたい企業」とかというと、だいたいいつもトップ3ぐらいにランキングされていて、面白いのは、就職ランキングの中で、「実力があれば若いうちに出世できそう」というランキングもよくトップ5ぐらいには必ず入るような会社です。実際に、ここ10年間の中ではグローバルで株価が500%以上上がったり、70%近くのブランド価値の向上があったとアナリストが評価しているので、わりと10年でみると成功している企業と映っている会社です。
森辺:なるほど。コンサルティングの事業と、アウトソーシングの事業と。
清水:インテグレーションですね。
森辺:インテグレーションの事業、3つの事業が主でありますよという会社ですよね。ありがとうございます。前回ちょっとお話をしていただいたアクセンチュアが出版しているジャンピングザSカーブのお話を前回お聞かせいただいて、その中でイノベーションというお話と、グローバリゼーションというお話をして、企業が成長する過程で、衰退した企業がまた再び復活をしてくる可能性、比率の割合ですよね。7%ぐらいしかないというお話をいただいて、その上で重要なのでイノベーションとグローバリゼーションだというお話をいただいたと思うのですけど、この辺りまた深くお話を進めていけたらなと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
清水:よろしくお願いします。
森辺:では、まずイノベーションのほうからいきますかね。 清水:前回日本企業が20年前に対して今非常に、特に企業ランクが下がっているというのは、プロダクトが変わっているという、イノベーションをし続けるということと、グローバリゼーションという2つがあると言ったのですけど。くしくも日本の経営者のアンケートをすると、トップの人の一番関心のあることというのは、かつてずっとイノベーションだったのです。ここ最近になって、今年の調査では急激にグローバリゼーションがトップに出たのですね。まさにグローバリゼーションセミナーなので、グローバリゼーションに関して今日はちょっと深くお話をしたいのですけれども。先にちょっとイノベーションの話しだけさせてください。イノベーションを話すときに、僕最も簡単に言うために、私が大学でその講義をやったり、いろいろな人に話すときに、分かりやすいたとえとして、よく学生に最初に質問するのが、「蒸気機関車と大陸横断鉄道、どっちに関心がありますか?」と聞くのです。大学の、特に理系の学生は8割が「蒸気機関車」と答えるのです。一方で、大学院大学で、いわゆる40歳ぐらいの企業派遣で来る、ビジネススクールの講座を持っているのですけど、そこで同じことを質問すると、6割くらいが「大陸横断鉄道」と答えるのです。まるで僕の質問の裏を読んでいるかのような感じなのですけど。僕の質問をした意図は、蒸気機関車というのは、要は蒸気機関という発明なのです。一方で、蒸気機関を汽車に付けるので蒸気機関車、船につければ蒸気機関船、船が蒸気機関船という形で動けば貿易が起こるのです。同じように蒸気機関車が大陸横断鉄道として使われると経済発展がしてイノベーションが起こるのです。なので、よく日本企業というのはインベンションとイノベーションというものの違いを、イノベーションを技術革新と訳すので。ところが論文を書くのには新規性が必要なので、インベンション、発明が必要なのです。ところが、世の中が動くのは発明よりはその先のイノベーション。使われ方が重要なのです。イノベーションというのは、今ある技術でもいいですし、新たな組み合わせによって起こる社会的新しい価値、新しい現象というのがイノベーションに提示されるので、イノベーションというのにフォーカスをしないといけないというので、こないだのテレビの、1つの受像機だと。例えば、掃除機なんていい例ですよね。僕は掃除機を作っているメーカーさんの人に、どうなのですか?と。要は、お掃除ロボットは。いったら吸引力があるわけでもなく、僕もルンバを使っているのですけど。
森辺:アイロボットの。
清水:アイロボットのルンバを使っているのですけど、非常に便利ですよね。僕みたいに、ボタンを押してそのまま家を出て行く人には完璧なのですけど。あれは作っている人から見るとおもちゃなのです、機能的には。ところが、非常に価値がユーザーにとっては感じられるのです。これはやはり1つのイノベーションで。掃除機を作っている人はとことん吸引力の勝負をするとか、こういう新しい価値観というのを機能や品質や性能を追求するだけではなくて、新しい提供価値というをもたらすのがイノベーションだと思うのです。
森辺:特に昨今は、物が何もなかった、本当に何百年も前はエジソンが電気を発明したとか、インベンションがすごく重要視されたと思うのですけど。物がいっぱい溢れているこの現在だからこそ、インベンションよりもイノベーションだし、イノベーションがやはりインベンションよりも時代を大きく進めるのですかね。そういうイメージなのですかね。
清水:そうですよね。今って、昔は企業がみんな豊かな社会のためにという標語があったのです。でも、先進国はもうかなりな豊かさで、今は逆で幸せな社会のためにというほうが重要なのです。森辺:分かりやすいですね。
清水:でも、幸せって人によって違うので、かなり多様化しているので、その中で、セグメントを深掘りというか、新しいお客さんの価値を追求するという活動が必要だと。
森辺:なるほどね。中国だと、その昔お金持ちになれる人からお金持ちになれというのがあって。まだ、今豊かなのですよね。スローガンみたいなのが、町中に貼ってあって。豊かがやはり、中国でも日本より経済大国になってしまいましたけど、国も広いし人口も多いのでね。バランスを考えるとあれなのですけど。確か日本はより幸せにというそこですよね。先進国なんかもまさにそうですよね。欧米も含めて。
清水:そうなのですよね。だからそういう新しい価値の創造というのが非常に重要なのです。
森辺:なるほど。
清水:一方でこの新しい価値の創造というのが、グローバリゼーションも結構一緒で、需要、マーケットを作るということは重要ではないですか。販売、販路をつくるという。ここからもう1つ、グローバリゼーション。先ほど第1回目には先進国からリーマンショック以降は新興国にマーケットがシフトしたというポイントを説明したのですけど、これ販路をとるというのがいかに大切かという話で。この間新聞にソフトバンクさんが、「ブライトスターを買収」という記事が出ていました。
森辺:一面に出ていましたね。
清水:僕はこれを見て、僕も通信のプロフェッショナルという意味ではいろいろなことを感じるのですけど、ソフトバンクさんがスプリントを買収したと、その前に。
森辺:ありましたね。
清水:これは分かりやすいはずなのです。買って価値があるのかというのは、よく僕のところに取材に来る人がいましたけど、同業なので分かりやすいのです。ところがブライトスターを買収するというのは、実はブライトスターというのは世界中に携帯電話の端末をディストリビューションしている会社なのです。今、世界に流通されている端末の17台の1台はブライトスターの調達なのです。いかにスマートフォンのマーケットで世界を握るかというと、1つはコンテンツだけではなくて、流通を握るというところに目をつけた孫(正義)さんはやはり素晴らしいですよね。いたるところで、こういうチャネルを掴むという争いが展開されているのが、1つのグローバリゼーションの特徴です。
森辺:グローバリゼーションの中でチャネルというのはものすごく重要な要素の1つか、最重要と言っても過言ではないぐらいに重要だということなのですかね。
清水:そうですね。グローバリゼーションは要は2つ意味があって、昔の国際化とグローバリゼーションは何が違うのかという話ですけど。グローバリゼーションという1個は、国内マーケッットに対して海外の製品がどんどん入ってくるし、国内での今みんなスマートフォンで使っているサービスは、要は99年の2月にiモードという素晴らしいサービスが生まれたのですけど、もはやみんなスマートフォンで使っているのがGoogleとか、新しい欧米のプレイヤーの作ったアプリなので、知らずに使えますよね。便利だから使う。国内マーケットすら海外のプレイヤーに席巻されているというのが、今の状況。これが1つのグローバリゼーションです。もう1つは、日本企業が海外に出て行くという国際化の考え方なのですけど、昔は生産拠点が移ったというので、ある意味国際化なのですけど、さっき言ったように、マーケットをとるということが一番重要なことで、海外により日本で、日本企業が作った製品を、配給といったら言葉が古いですけど、いかにそれを流すかということが最重要ですね。
森辺:そうですよね。このスパイダーという会社も、いかに世界に販路を構築していくかというのを主事業にしている会社なのですけど、その日本はいまだに「ものづくり」みたいなところがすごく重要視されて、これはこれですごく重要なことだし、立派に日本の企業はされるのですけど、一方でチャネルづくりというのが今必要となってきていて、一昔前の時代だと、日本製というだけである程度流れたというか、アジアの市場でもそこ用のしか作れなかったので。清水さんもおっしゃっていますけど、10%、15%高く売れたと。当然マーケットは欧米だった。なんですけど、今はマーケットが新興国、アジア中心に変わってきている中で、物づくりプラスチャネルづくりみたいなことを並行して、むしろチャネルづくりのほうがやはり優先してやっていかないといけないと、そんな時代に変わってきたということなのですかね。
清水:そうですね。これ、欧米企業、もしくは今グローバル化という中に、先進国プラス韓国勢、さらに中国勢。世界で最も冷蔵庫を売っているのは常に中国メーカーなので。
森辺:ハイアールですよね。
清水:ハイアールですね。このときに、ディストリビューションチャネルを争う戦いというのは、決して今までのような欧米企業だけと戦っているわけではないということなのです。例えばLGなんかは、韓国企業というのは、80年代には欧米、90年の初頭もですけど、北米マーケットで日本製品と争ったときに、やはり圧倒的に日本製品が指示されて、ある意味マーケットからキックアウトされたようなものなのです。行った先は何かというと、新興国に先に出て行ったと。そこでまずチャネルづくりから始めて、それでリーマンショックが来るまでの10年、20年間というのは、新興国に先にマーケットを作ってきたので、LGが顕著なのがインドにおいての販売の比率というのが、都市と地方でちゃんと人口比率配分で売れているのです。一方日本企業というのは、都市部でしか売れないという。こういう違いがありますよね。森辺:どうしても都市部なので、近代的流通にフォーカスをしてしまって、まだアジアとかは伝統的技術のほうが多くて。確かに近代化されているし、そこにネット流通みたいなのも入って来ているのだけれども、それをバランスよくとっていくということがすごく重要だということですよね。
清水:そうですね。
森辺:もう10年差がついてしまっているということなわけですもんね。
清水:チャネルづくりで言うと、まさしくそうですね。新興国、国にもよりますけど、われわれの今のコンサルティングの仕事はものすごくグローバリゼーションが多いです。これは、森辺さんのところもそうだと思うし、非常に、例えばインドのマーケット、インドネシアはどうしたらいいとか、すごく多いです。日本には、先ほどハイテクとかを中心に話しましたけど、実は一般消費財とか、海外に出て行ったらものすごくいい品質のメーカーというか、商品を持つ会社はいっぱいあるので、そこは結構チャンスあると思うのですよ。
森辺:よく言うのですけど、三ツ矢サイダーとスプライトの違いが僕は分からないのですよ。飲んでもね。でも何で世界中どこへ行ってもスプライトが飲めるのに、三ツ矢サイダーが飲めないのか。これは味ではないのですよね。チャネルがあるのか、ないのかでこれだけ販売本数の差が出てしまう。僕は三ツ矢サイダー派なので、三ツ矢サイダーを。あれめちゃめちゃおいしいじゃないですか。だから三ツ矢サイダーを世界で売れたらいいなと思っているのですけど。そういうことですね。清水さん、今日は時間が来てしまいましたので、引き続き次回、第3回目ですね。よろしくお願いします。 清水:よろしくお願いします。
森辺:どうもありがとうございました。