東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続きアクセンチュアの清水さんをお迎えしているのですけれども。
森辺:清水さん、どうぞよろしくお願いします。
清水:よろしくお願いします。
森辺:アクセンチュアのマネージングディレクターの清水新さんをお迎えして、前回の続きなのですけど、チャネルのところを深くお話をしていきたいなと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
清水:よろしくお願いします。
森辺:前回、ものづくり・プラス・チャネルづくりみたいな、グローバリゼーションの中でチャネルを作っていくということは非常に重要ですよと。日本企業はそこに出遅れてしまったというお話があったと思うのですが、何かその辺で事例というか、エピソードを含めてちょっとお話をお伺いできればなと思うのですが、いかがでしょうか?
清水:われわれ、一方でM&Aというお手伝いをするのですね。要は企業買収、売却という。結構いろいろなセンシティブな話もあるので、うまくいった例、うまくいかない例というのがあるのですけど、うまくいかない例は数多く聞くと思うのですけど。われわれ買収のお手伝いをさせてもらうと、割とうまくいくパターンも多いです。ある日本の消費材メーカーさんなのですけど、海外のグローバル戦略をたてると。やはりメーカーさんの中でも戦略立てている部署の方がいらっしゃるのですよね。そうすると競合というか、自分と同じような業界のローカル会社を買収したりということがよくあるのです。われわれはある消費材メーカーさんに立てたのが、買収するならチャネルを買うという。チャネル買収というのを提案して、それを実行したのです。そうすると、確実に資本を入れてもらったローカルの企業が販売する製品が莫大に増えるわけですよ、日本から持っていける。それは非常に向こうもスタンドアローンで売り上げがあがってきますし、買った日本企業もチャネル、いわゆる足回りが買えたので、逆に日本からの売り上げ規模も増えるというので、これは結構ウィンウィンなのです。ところが、これを提案して全て通るというわけではなくて、中にはそれは僕らの仕事ではないという企業さんもいらっしゃって、そういうケースはわれわれ戦略を作っても、やはり同業を近いところを買ってみてもなかなかシナジーが出せないというケースは多いですね。
森辺:12年前に中国に私単身で渡ってみていたときに、当時同業と合弁を作ったら、同業を買うみたいなのが一般的で、異業を買うとかチャネルを買うとかはあり得なかった。そもそも中国のチャネルマーケットに日本の企業はまだ参入していなくて、欧米と韓国はやっていたのですけどね。そんな中で、結局コンフリクトが絶対生まれて、中国側の同業が欲しいのは技術力だったと。
清水:そのとおりなのです。
森辺:日本側が欲しいのは安く作る生産拠点なのですよね。そうすると、今ふたを明けてみたら、技術だけ盗まれて敵が増えましたと。今日本企業がこれだけアジア市場とか世界市場で困っているのは、ハイアールとかサムスンとかLGとかフォックスコンとか、昔いなかった会社が出てきてしまったからではないですか。でも、あれって、全部日本企業の技術が流れていっちゃっただけで。だから、今清水さんがおっしゃったもの。チャネルを買う、異業種を買うというのは本当すごく理解ができますと。そんな中で、まだリスナーの多くはグローバリゼーションということは、イコール僕はチャネル戦略だ、チャネルイノベーションだぐらいに思っているのですけど。チャネルの重要性がまだ本当に理解をしていない人が結構多いと思うのです。私も前回清水さんにお誘いをいただいて、長野で一緒に講演をやりましたけど。地方に行って講演をするときに、売れない商品、世界で売れない商品はただのゴミというと、めちゃめちゃ怒られるのですよ。けど、そのとおりで、どれだけあなたの会社が技術を言ってあれしても売れなかったら単なるゴミなのですよ。何で売れないかというと、それはチャネルにほとんどのケース原因があって、チャネルの重要性をもっともっとリスナーのみなさんにも理解をいただきたいので、今日は徹底的にチャネルのお話を引き続きやっていきたいなと思います。
清水:なるほど。分かりました。
森辺:まず、今M&Aのお話があったと思うのですけど、他に何かお話できる内容とできない内容があると思うのですけど、できる範囲で何かあれば。
清水:分かりました。僕いつもストレートトークなので、収録するのにはかなりぎりぎり危ないのですけど。
森辺:あれだったらカット入れますので。
清水:よくイノベーションで代表される企業。例えばAppleとかサムソンとか。Appleなんてイノベーションの代表的な企業なのですけど、実は世界のサプライチェーンオペレーションがFCジェンシーというのが効率化ということですね。効率性で世界一と言われているのです。いずれも共通して言うのが、僕いつも辛口で、日本の経営モデルというのは経営管理モデルと言ってもいいかもしれないですね。日本の経営モデルの仕組みは10年遅れている。10年から15年遅れていると、講演でしゃべるとすごく記者がそれをタイトルにしていろいろ書いて、あとで取材されるのですけど、僕は堂々と本当にそう思っています。Appleとかサムソンとか、いろいろな会社がやってきていることを説明すると、僕が勝手に作っている言葉なのですけど、最前線、最細粒度という。最細粒度というのは、最も細かい粒度という意味なのですけど。アップルやサムソンというのは、新興国における個店単位であっても、必ず販売データをとってくるのです。どのエリアで、どれだけ売れているか。例えば今日本ですけど、これをずっとインドネシアのマナというエリアだったら、どこで何の製品がどう売れているというのをモニターしているのですね。ところが、日本企業ってそこはインドネシアの販売会社に任せるので、インドネシアの販社の社長に「どうなっているのだ?」と電話するだけなのですよね。「説明せえ!」みたいな。
森辺:すごくよくわかります。本社の海外事業部に行くと、各国のことをよく分かられていなくて、取りまとめは分かっているのですけど、詳細はインドネシアへとか、詳細はタイへとふられますもんね。
清水:そういう海外事業本部長でもいいのですけど、話しているときに、僕はいつも単位を聞くと分かるのですよ。単位というのは、うちはインドネシアの販売は何万台だから。あるいは何億円だから。タイだとどうだから。カンボジアはこれからこうなの、フィリピンは今このくらいという、国別くらいなのですけど、実はもっと細かい単位をしゃべる海外事業をやっている人はすごいのです。うちの商品は店舗当たりインドネシアだとこのエリアで何台くらいなんだよねと。それを月販とか週販で見ているのです。こういう見方をビジネスオペレーションしている会社というのは、ものすごい業績やはり、いいですよね。見ている粒度が違うのです。僕は経営管理のモデルが10年から15年古いと言っているのは、いわゆる「良きにはからえ、報告せえ。」みたいなところでいまだにやっているのです。ERPとかものすごく投資していっぱい入れたのに、単なる、サプライチェーンの難しい用語で言うと、実行系と計画系というのがあるのですけど、単なる実行ですね。実行系というのは販売が売れたあとの会計までつながる管理しかしていない。それはお金をかけているのです。実は重要なのは幾つ売れるか、あるいは売れた実績に基づくと、来週幾つ売れるのか、それがどのお店で何の製品に傾向があるのかと、細かい粒度で抑えていくことが重要なのです。Appleもサムソンも、例えば新興国でサムソンとかLGとか、あるいはノキアって、今はマーケットシェアを失っていますけど、ノキアも中国やインドで50%以上のシェアがかつてあったのが、例えばインドでは11万店舗の販売拠点を持っていて、そこに対して72時間で製品が届くというディストリビューションチャネルというか、バリューチェーンを作っていたという強みなのですよね。その意味でいうと、それぞれ現地の人が携帯電話をもって、店頭で毎日何個売れたかというのをSMSで飛ばしたり。このセッションでも多分いろいろな方が代表的に話すのはP&Gとかユニリーバとか、ネスレなんかがいますよね。彼らなんかは、最前線の情報をとるために、キーディーラーに人を派遣しているのですよね。人を派遣したほうがシステムを取り上げやすいので。人が行って、ディーラーさんがとっている、作った、要はディーラーさんといっても普通にトラックに乗って商品をつけて雑貨屋を回ったような、そういう方の手書きの伝票をその場で横でパンチャーとして写すのです。そうすると、個店あたりの売り上げ、製品別の売り上げが全部本社に集まるのです。これでグローバル経営管理をしているのです。日本企業は先月の売り上げがどうだったといって、僕はこれは「死亡診断書」と言っているのですけど。調子のいいうちは販売会社も社長の現地工事の社長の自慢話を聞かないといけないのですけど、業績が、販売計画がいわゆる事業計画に満たないと、言い訳を聞くだけと。そのうちリカバリープランを書けというと、内向きの仕事がどんどん多くなる。負のスパイラルになるのですけど。僕が重要なことだと思うのは、いかにチャネルを作れるかというのは、最前線、最細粒度の情報を集めるかというところが僕は勝機だと思います。
森辺:それによって、どのマーケットのどのエリアがどう大きくなっているのかを判断して、そこに会社の軸を傾けたりとか、もしくは撤退をしたりとか、いろいろな判断、経営判断をしていけるという話しなわけですよね。なるほど。面白い例ですね。Appleなんかも、僕はネットで注文するのですけど、そうすると今この辺ですみたいなのが出てくるのですよね。生産日数が何日で、船が2日で、何日にはお届けされますみたいなのが。1個1個の個体で全部管理して、オーダーした瞬間から管理されていると、そういうことなのですよね。
清水:これはまさにパソコンがダイレクトモデルに転換したときに、出るとか、当時のゲートウェイが新しく作ったビジネスモデルで、日本企業は一生懸命在庫日数を何日に下げようとか、キャッシュ化を進める。在庫を持つということはキャッシュを寝かせているということなので、非常にサプライチェーンを磨きあげて、在庫日数を30日から23日まで減らしたとかいうのですけど、実はデルとかゲートウェイが作ったビジネスモデルというのが、オーダーを受けてからあとで作ると。そのオーダーステイタスを出すという、これも1つのイノベーションというか。その代わりオーダーステイタスという、今どういう状況ですよというのを出すことによって、ユーザーのフラストレーションというか、欲求に対してちゃんと答えを出すと。説明責任を果たすということをやっているので。これも1つのビジネスプロセスのイノベーションなのですよね。なので、そういういい物はみんな踏襲しているのです。これ言っていいかどうか、非常に微妙なのですけど、日本企業のほとんどの会社は、一流企業ですよ。ほとんど現地のディーラーに在庫をバンとインセンティブをつけて、はいて、そこで販売完了と。かつ、工場にいたっては、工場をトラックで出て行ったら売り上げ上がりますから、もう終わりというところで、実は最前線に注目をしていないというところが痛いことですね。実は、今韓国企業というのは、どこともあれですけど、韓国企業は一時期2003年、4年くらいまではものすごくわれわれ日本企業をベンチマークするということがすごく多かったのですよ。ものすごくベンチマークをした結果、彼らはもちろん日本ではなくて海外で言うと、ナイキやP&GやGEや、みんなベンチマークしました。彼らがものすごく学んだことを自分たちの会社に取り入れるのです。それで、最前線の最細粒度でとるというオペレーションを、自分たちの体内に取り入れて、オペレーションをしているので、今日本企業と、在庫水準でみても低いのです。
森辺:セルスルーでしっかり物事が進んでいるというイメージなのですよね。
清水:日本はまだ販社が売りで物がスタンスです。韓国企業はこれを2006年にやめました。こういうところの違いはすごくオペレーションの違いの話しなのですけど、細かいですけど、財務諸表に帰ってくるインパクトとしては非常に大きいですよね。
森辺:でもそれは言っても、海外で反論がある程度気付けている。超々大企業の話だと思うのですけど、例えば数千億後半、中盤ぐらいの会社さんだと販路と呼ばれているものが、いまいちまだしっかり販路化していない会社が意外に結構たくさんあって、そういう会社がやはり商品の性能だったり、技術だったり、品質だったりを高める以上に、販路を作っていくということが、アジア中心とした新興国ではすごく重要になっていて。何て言えばいいですかね、欧米って販路はある程度出来上がって、きっちりしているではないですか。ですから、パイプに流すとザッと流れるけども、新興国というのはパイプが出来ていなかったり、穴が空いていたり、変なところにつながっていたり、間に何かいろいろな分け分からない人がいっぱいいたりとか。そういう製造業であっても、チャネルを作っていくというのがやはりすごく重要になってくるということなのですよね。チャネルをマネージするということもそうですけど、チャネルを作るという前提のところも重要になってくるのですよね。
清水:そうですね。単なる大手の流通に流すだけだと、要はNBPBと言いますけど、いわゆる自分のメーカーブランドで売れるのか、あるいはPBと言われるプライベートブランドですね。流通さんのブランド、例えばイオンさんでいうと「トップバリュ」とか、ああいう製品に、日本も実はまだPBの比率が低いのですけど、そうなると、自分の製品のブランドを持たないと、単なるEMSになるだけなのですよね。そうかといって売りが欲しいので、そのPBの生産を引き受けちゃうのですけど。
森辺:そうですよね。結構アジアとかだとディストリビューターがいて、そこに在庫を押し付ける、そこから先の管理を全くやっていないような会社が。このディストリビューターが、いつしか自分たちが製造業になっているのですよ、チャネルを持っているので。自分たちのブランドを作って商品を売っていて、日本の企業も担いで売っているというのですけど、逆に言うと日本企業の高品質の製品は単なる見せ餌と言うのですかね、まき餌になっちゃっていて、こんなものを扱っている信用のできるディストリビューターですと。こっちは100円ですと。でもこっちだったら50円ですと。大して変わりませんみたいなことで、日本のメーカーがうまく使われちゃっているというケースがあって、ローカルのディストリビューターの製品のブランド力がどんどん上がっていっちゃうのですよね。何でだというと、日本の製品を売っているから。いつしか品質とかクオリティとか全然差がなくなっちゃったりというのが結構多いですよね。
清水:そうですよね。これに関してはいろいろあるので。僕もコメントしたいことがいっぱいありますけど。
森辺:なかなかお立場もあると思いますので、深くは追求していきませんので(笑)。
清水:もう1個だけコメントしてもよいですか。
森辺:どうぞ。
清水:メーカーの人は勘違いしていることが多いのですよ、流通に対してのことは。要は安いものを作らないと売れないと思っているのですよ。これは本当に大きな間違いなのです。流通とうまく付き合うためには、安いものを作る必要はないのですよ。何が必要かというと、流通の人が求めていることは、2つあるのです、大きく。1つは利幅の高い商品ということなのですよ。だから高くて利幅の大きい商品を作ってほしいのです。安い商品を作ったら売れるから、安い商品を作れとみんなメーカーの人は何か錯覚しているのですよ。流通の人は利幅が大きくて高い売り値、値段が高い商品にしてくれと。そうしたら自分がもうかるから。もう1つは、流通の人が求めているのは、サプライチェーンケイパブリティなのです。要は持っていき過ぎるなと。うちの在庫になるからと。そうかといって、売れているのに切らすなということなのですよ。だから、ちょうどよくオペレーションしてくださいと見ているのです。これは非常に僕は素晴らしいなと思うのは、海外の大手のGMSというのは、これが評価指標に全部入っているのですよ、ちゃんと。メーカーさんを評価している。ところがメーカーさんは一発商談のように、今回はキャンペーンで安くしますから、インセンティブつけますから、引き取ってくださいみたいな。これやっていても、新興国では絶対に一時的な売り上げはできても、いわゆる持続的な成長にはならないので、その流通にお金を払うぐらいだったら、マーケティング戦略を打ったほうがよっぽどいいと思うのです。
森辺:それで去年上がったけど、今年売り上げ上がらないという会社結構ありますからね。なるほど。分かりました、清水さん。では、大分時間を過ぎてしまいましたので、今回はこれくらいにして、また次回よろしくお願いします。
清水:よろしくお願いします。