東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:では森辺さん、引き続きアクセンチュアの清水さんをお迎えしているのですけど、今回はどういう話を?
森辺:清水さん、引き続きどうぞよろしくお願いします。
清水:よろしくお願いします。
森辺:今回は清水さんをゲストにお迎えして最終回になりますので、ちょっとナビゲーターの東も交えて、今現状われわれや、清水さんがやっている仕事の中で、日本企業がどうやって今後さらにグローバリゼーションをしていったらいいのかとか、チャネルイノベーションを起こさせていったらいいのかというところを、フリーな感じでディスカッションみたいなのができたらと思うのですが、いかがですか?清水さん。
清水:そうですね。ここで日本企業の次なるグローバル戦略をちょっと語るというか。
森辺:そうですね、気楽な感じで。いつも気をつけているのですけど、なかなか硬くなっちゃうので。フリーな感じでもっとやれたらいいのですけどね。
清水:今僕の会社なんかは、本当に日本のトップ20社、9割くらいがお客様で、トップ30社だと8割くらいみたいな感じなので、上の方の大きなお客様に寄っているところがあるのですけど、そのお客様は既にある程度グローバル化というか、出ていったと。でも、より現地で買った会社をどうやって、レバレッジといいますが、もっと収益性を上げたいとか売り上げを上げていきたいときにどうしたらいいかとか、あるいは新興国の違うチャネルに展開したいとかっていう仕事とか本当にたくさんあるのです。森辺さんのところも、やっぱり同じように大手企業からチャネルパートナーを探してくれとか、いろいろなことがあると思うのですよ。僕らどちらかというと、同じ視点でいろいろなところを見ていて、先ほども僕も非常に最前線だと。最細粒度なのだという話をして、どちらかというと、コンサルタントの格好いい机上の戦略を言っているように思うのですけど、グローバリゼーションはわりと結構ベタベタなところで。
森辺:僕なんかも、泥臭いですよ。コンサルタントなんて言えないぐらい汚い、泥臭い仕事ばかりやっていますからね。
清水:そうすると、結構格好いいこと言わず、実践的にどういうふうに日本企業をグローバリゼーションするかというと、僕は今まではやはりマーケットがいきなりリーマンショック以降、新興国に変わっちゃったと。持っていないチャネルが強みに、向こうの企業がなっているので。でも製品的な強みもR&Dも技術もあるのに。技術力ってすごいじゃないですか。
森辺:すごいですね。
清水:その技術力だけど、向いている方向がちょっと違うと。だから、新興国のもっとニーズに照らしたり、まさにグローバルマーケティングですよね。方向感さえ決めて、その技術者に、世界一を作るのではなくて、いわゆる所得、現法(現地法人)でやはり1人当たりGDPがまだ低い国でも、いかに幸せ、豊かさを提供できるかという方に、技術者の方向を変えてあげると、いい製品を作れるのではないかなと僕も思うのですよ。
森辺:そのとおりだと思いますね。技術者というか技術の部門の人たちはよくあるのですけど、海外のマーケットを見ている担当の海外事業部の現法なんかの人たちと、製品を作るという部門の人たちがしっかりリンクしていないというか、バラバラで動いてしまっているので。けど、それって一緒になって動かないと、その国の人を幸せにするとか、豊かにする商品は作られないじゃないですか。だからそこはやっぱりお付き合いをお客さんとしていてすごく感じるところだったりしますね。
清水:よくコンサルタントと呼ばれて、成功事例を言うじゃないですか。僕もこんなところで言うのもあれなのですけど、成功事例は再現性ないですよね。でも、失敗事例は再現性100%なのですよ、同じことやったら。僕が言いたいのは、やはりちゃんとした製品とか、マーケッを向いた製品でないとそれはそれで無理だと思うのですよね。ものすごく日本スペックのこだわりのものを持っていっても無理なので。だから1つは、日本は技術力がある。いい技術者もいるし。正しいマーケット感を教えて、その人たちの豊かなために方向づけしてあげるというのが1個ある。もう1つは、僕チャネルでさっき、ずっとこれまでもお話させていただきましたけど、最前線、最細粒度を見習うこと。でも今モビリティというものが、モバイルですよね。スマートフォンとかタブレットとかあるじゃないですか。あれを流通のディーラーに持たせて、そこから情報を吸い上げてきたら、今までP&Gとかユニリーバとかネスレとか。10年以上かけて作ってきた流通網を一気に2、3年で追い付けるチャンスがあると思うのですよね。どうですかね。
森辺:それだけのチャンスは多分すごくあるのですけど、これ企業にもよると思うのですよ。個々によると思うのですけど、それでもやはり売り上げ5,000億ぐらいの企業さんだと、そこのその提案のまだ前提のところにいる企業さんはすごく多くて。海外展開といえば現法販社を作って、そこから代理店を動かしながらの代理店に、前回の話ではないですけど、在庫押し込んでみたいなお話から、思い切り変えるじゃないですか、モビリティを活用して最細粒度まで見ていくみたいな話って。思い切り今のイノベーションをぐっと変えるという、そこにYESという経営判断がなかなか出にくいところで、ものすごく僕もフラストレーションがたまったりすることって結構あるのですよ。
清水:僕も分かりますよ。〔笑声〕
森辺:それがあって日本、何て言うのですかね。こんなに自分たちが毎日使っている商品なのですよ、お客さんの商品は。毎日使っていて、こんなに素晴らしいものが世界中で使われたら、どれだけ素晴らしいことなのだろうと。私がやっていることってチャネルづくりのお手伝いなのですけれども、ステップがあるのですよ。そのステップに応じてチャネルを作っていくというところの手前の会社がものすごく多くて。これが例えば、あと5年10年とかしたら、完全に淘汰されてしまうのではないかなという気がすごくしていて。今は日本の内需はでかいし、まだ余裕があるのですけど、そんなに残された時間はないのではないかなという気がすごくするのですよね。さっき冒頭で清水さんがおっしゃっていた、いいパートナーいないかなと。いいパートナーなんて100万社いたら100万社みんな求めているわけじゃないですか。そんな出会いなんてないわけですよ。そのいいパートナーをどうやって特定していくかというとここそが重要で、そこにしっかり予算をかけて、いいパートナーを可視化していって、競争環境と市場環境と流通環境と全部を可視化した上で戦略をつくって落としていくのだということをやっていかないといけないのですけど、そこに予算を割くという文化がない売り上げ5,000億前後の会社って、結構日本はたくさんあるのですよ。何で製造業がそんなことをやるのと。代理店とか販社とか現法に任せたらいいのではないのとか。商社にお願いすればみたいな。そんなのがすごくやはり多かったりするというのが1つあるし、一方で清水さんがずっと話していた技術を追求するという。フランスの会社で「ビック Bic」というペンとライターをひたすら作っている会社があるのですよ、オレンジ色の。あの会社のペンは、僕は、アメリカの学校に行っていたときに学校で売っているのですけど。昔からほとんど変わっていないですよ、あのペン。でも日本の文房具屋に行くと、ものすごい数のペンメーカーがものすごい数の種類のペンを出しているじゃないですか。そんなにペンこだわりますかという話でね。モンブランだというならこだわるのですけど、100円のペンに何を求めていくのだろうと。ビックというペンはひたすらペンだけを作って、その代わり世界中で売っているのですよ。世界のどの国に行っても。アフリカにも売っているのですよ。あのディストリビューション力ってすごいなと思っていて。重要なのは今そっちなんじゃないのと。ペン先のボールがものすごいとか、そんなこと誰が気にしているのだろうという、日本人でも本当に気にしていますか、みたいな。そんなことを思って。気にしていると思っちゃっているのですよ、僕らは。ペン先重要だと。0.8ミリか1.2ミリかはすごく重要。実は深く追求していくと、そんなことってあまり重要ではなくて、そのペンを使って何を書くかが重要だったりするじゃないですか。だからビックという会社をすごく注目しているのですよ。
清水:P&Gさんの中に、「ワーク・ウィズ、ライフ・ウィズ」というのがありますよね。サムソンもその国に家族連れていきなさいという。そのP&Gさんのワーク・ウィズ、ライフ・ウィズというのは、ライフというのはその場に住んで、その土地のことを分かりなさいと。ワーク・ウィズというのは流通と働けと言っているのです。自分たちのパートナーの人と働いたら、何が必要か分かるだろうという。そういう1つの方針があるので、確かにペン先が気になるのか、書けることが重要なのかという、そこは日本人の変なこだわりなのですよ。僕、日本はもう1個いいところは、中間管理職という制度。その層の人たちは、ミドルクラスはグローバル企業に負けない優秀さがあるのですよ。僕は中間管理職ではなくて、中心管理職と言いたくなるくらい、ミドルマネジメントが立派なのです。ところが経営をする仕組みが足りないのです。アメリカ人のスポーツ見ていただくと、アメリカの国技は、ベースボールもそうですし、アメフトね。アメフトなんて最たるもので、格好から入るじゃないですか。格好から入って、一球一球サイン出しますよね。
森辺:すごい頭脳戦ですからね。
清水:そうなのですよ。だから最初からいろいろな人種の人に対して、いろいろなマネージメントということを、ゲームの中でもしたがるので、一球1球サインがあって、一球一球フォーメーションなのです。ところが日本の企業は伝統的に何が起きているかというと、古典的な例えば浮世絵でも漆塗りでもいいですけど。絵師は絵師、彫り師は彫り師。刷り師は刷り師。できたのが浮世絵で。今でいえばポスターみたいな安い物ですよね。庶民に楽しまれる。あんなレベルの物がものすごく高機能。だから漆器とか茶碗とかをくるむために、新聞紙の代わりにくるまれて、ヨーロッパに行ったらこれはすごいといって、浮世絵が大ヒットみたいな。1個1個に関しては、すごく日本人は繊細さというか専門性というのがあるのですよね。ところが、漆塗りだって浮世絵だって、誰にもオーガナイズとかマネージしている人はいないのですよ。これ不思議で。日本という国柄、あまりよその国の支配を受けたことがない。だからこう「みなまで言うな」という、行間を感じながら。隣の工程を感じながら、自分が専門性を極めるみたいな、ありますよね。だから極めたら圧倒的なはずなのですよ、日本は。だから僕が申し上げたいことは、経営に関しては1つのいろいろな人種の人たちと働くので、経営管理モデルとか経営モデルを入れましょうと。どこか大きくなるタイミングで。それをきちっとすることによって、共通の言語で会話ができるはずなのです。そうしないと、一方では機能の繊細さで有利な条件なのだと。うちの製品はすごいのだと。だから売れないのは販社のせいなのだと。現法の現地人に言うわけですよ。現地人の人は、いやいやこれマーケットバリューからしたら高いのだと。だからそこで何か戦っていてもしようがないのですよ。僕も森辺さんの言うように、販社に任せればいいのだと。商社に任せればいいのだというのですけど。今非常に優秀なトップの方もいらっしゃって、僕感動する人もいるのですよ。ある企業の事業部長の事業を任されているトップなのですよね。その人は当然ながら工場で生産をして事業として、事業部としていますよね。でも日本の事業部って、終わると販社に渡すじゃないですか。あとディセプション、販社の問題じゃないですか。でも販社にいっちゃうと、分からなくなっちゃうのですね。だからその人がどうかというのは、販社がディーラーと契約するじゃないですか。ディーラーさんは、今度は自分の社員を集めて、ディストリビューションをするじゃないですか。そこもうまくいっていないから、市場の流通がうまくいっていないのですよね。だからディーラーを教育しないといけないということが、僕一緒に戦略を作ってわかったのですね、調査をして。そのときに起こったことは、すごいのですよ。事業部から販社に物を流すじゃないですか。そこで売りが立つのですよ。販社からディーラーに流すじゃないですか。実はディーラーに事業部がお金を支援して、直接社員に課しているのですよ。いわゆる事業部から販社に製品が出て、販社からもう1回事業部に流れてまで最前線取りにいくと。だから僕は最前線、最細粒度だと言ったら、清水さん、僕はそれすると言って全部ディストリビューションを直営にするぐらいの勢いですね。かつ今まではディーラーに取ってもらうために販売奨励金をつけたのに、それをマーケット投資。マーケット投資もそんな高いテレビ広告ではないのですよ。例えばインドネシアだったらFacebookにかけると、ものすごい勢いで展開するので、そういう意味では市場マーケットを作るという意味でも、モバイル、スマートフォンであるとか、今のデジタルの流れを逆手にとると今まで10年以上かかったことを3年でやれると。
森辺:なるほど、その今清水さんがおっしゃったタイルなのですけど、われわれが大変お世話になっている明治大学の大石先生という教授がいらっしゃるのですけど、模倣困難性の高いチャネルづくりがすごく重要だと。日本企業のグローバリゼーションで重要なのは3つあると。チャネルと、スピードと、それから現地的評価。この3つだと言っているのです。そのチャネルの話を深く聞いていくと、今、清水さんがおっしゃったようなチャネルというのは、模倣困難性が非常に高いわけですよね。これこそが企業の財産であり、新興国で成功するための大変重要なものだとおっしゃっているので、まさにそのことなのだなと今感じたのですけど。だから、日本企業はいろいろなものをこう今大きく転換させないといけない過渡期というか、そんなところに来ているのではないかなと思っていて。一方で技術力とか品質が高いというのがあって、よいものをたくさん持っているわけじゃないですか。まず人がいいのですよ、絶対的に。日本企業で働いている社員は。ものすごく素晴らしい。いろいろな国の、いろいろな社員を見てきましたけど、日本人の社員は素晴らしい。さっきの中間管理職ではないですけど。中心管理職というのは見事にいったなと思ったのですよ、素晴らしい。人がいい、技術がある、あと何がないかって。チャネルをどうしていくか、ずっとこうやってきたグローバリゼーション、イノベーションをどうしていくかという、そこに尽きるのではないかなと。そんな風に思うのですよね。それさえやれたら、まだまだ日本の企業は、一時期は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とも呼ばれた時代をもう1度とり直せると思うし、もう1回技術というところからチャネルというところ、それから清水さんが言っているオペレーションーモデル。そんなところにフォーカスが変わっていってくれたらいいなと思ったりするのですよね。
清水:そうですね。例えば僕なんか思うのは、ヒュンダイという自動車関係、一生懸命トヨタの標準化をまねしたのですよ。でもトヨタって4秒くらいで1枚のドアがつくような作業標準タクトみたいな。1秒単位でやることを決めているのです。あれって欧米メーカーは絶対無理ですよ。新興国も。だから同じようにはできないので、もう単純作業に分解したのですね。するとレーンが4倍になったのですよ。すなわち、同じものづくりでいうと、4倍生産性が高いということなのです。だから日本の生産性の高さというのは、工場においては明らかなのですよ。そうするとマネジメントとして、日本の話、現地化も重要だと思っているのですけど、現地化できるということは、仕組みがないと現地化できないのですよ。なので、どういう仕組みでやるのだよというのだったら、パートナーに依存しないということなのです。パートナーにこういう仕組みでやってねとやったりする。それを万に一の性善説(※発言ママ)の、言わずもやってくれるいい人を宝くじのように当てるかというのは無理なので、そういうのを確実に成功するやり方というのが、まさにグローバリゼーションモデルの成功パターンかなと思います。
森辺:そうですね。終わるのが大変あれなのですけど、そろそろお時間が来てしまいましたので。
清水:ただ僕が1個だけ最後に思うのは、皆さんグローバリゼーションって、各社それぞれ苦労するじゃないですか。今から3年、5年苦労してわれわれが思っていることと同じことを気付いても時間がもったいないので、それこそ森辺さんに聞いた方がいいとか(笑)。
森辺:ありがとうございます。
清水:知識で勝負する時代は終わりなので、知恵を使って、実践してなんぼかということですよね。
森辺:泥臭い仕事をたくさんさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
清水:どうもありがとうございました。
森辺:また清水さんぜひ遊びにきていただいて、来年もまたゲスト出演していただければと思いますので。ぜひよろしくお願いします。
清水:はい、ありがとうございました。
東:ありがとうございました。