小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林マアヤです。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林:本日は前回に引き続き、先日森辺さんが登壇した、日本経済センター主催の「AASEANでの事業機会をどう捉えるか ASEAN経済統合の視点から」というタイトルのセミナーですね。こちらのセミナーで出た質問について、ご回答いただきたいと思います。今回がラストなので、よろしくお願いいたします。
森辺:はい。お願いします。
小林:質問内容なんですけども、日本企業はなぜ韓国や中国の企業に負けたのか?韓国・中国企業との違いは何なのか?という質問でございます。お願いいたします。
森辺:ありましたね。「すごく基本的な質問で大変恐縮なんだけども」って仰ってたのが記憶にありますけどもね。これは、白物・黒物家電の話をして、日本企業の世界競争力みたいな話をセミナーの中で話をさせてもらったんですよね。ここ25年間で日本企業の世界競争力って、劇的に落ちてますよと。その中で、中国とか韓国、韓国の一流財閥系企業と中国の会社が飛躍的に成長してると。15年前無名だった、物真似ばっかりやってた中国企業が、もう一流の企業になってると。世界の白物・大物家電の最大手が中国のハイアールで、10年連続のシェアトップだよ、とかっていう話をしてて。なんで韓国や中国の企業に負けたんだ?ということを仰ってたんですけど、負けた要因は、韓国や中国の企業を軽視しすぎた。軽視したからっていうことに尽きると思うんですよね。2000年前後に、僕覚えてるんですけど、広東省の日本企業、日本のメーカーに「コンカーっていう会社がすごい」と。「ハイアールって会社がすごい」と。「BYDっていう会社は、自動車の会社ですけど、すごい」と。まあ色々言ったんですけど、大手の家電メーカーさんとか自動車メーカーさんは、もう相手にしてなかったよね。BYDって、今世界最大か2位か、リチウムイオン電池のメーカーで自動車作ってるんですけどね。昔、15年20年ぐらい前までは、BMWのロゴをパクってね。ちょっと場所変えて、青と白の。BYDって書いて。BMW→BYDって。とんでもないパクり企業だなあって会社が、今や広東省を代表する世界最大のリチウムイオン電池メーカーになって。さっき言ったハイアールなんて、鉄腕アトムの偽物みたいなアニメみたいなのが冷蔵庫に貼ってあって、「こんな気色悪い冷蔵庫、誰が買うんだろう」っていうのが15年とか20年ぐらい前だったんだけど、今世界最大でしょ。しかも、アジア中で家電量販店に彼らの冷蔵庫とか洗濯機並んでんだけど、ぶっちゃけデザイン格好いいんだよね。LGとかなんて、僕、80年代シンガポール住んでる時に、LGなんてゴールドスターとなんとかって、そもそもLGなんて会社は存在してなかったし、SAMSUNGなんて三星電機って、三菱電機のパクリかなっていうね。それぐらいの企業だったの、本当に。それが今や超一流でしょ。SAMSUNGは、いずれの日本の家電メーカーよりも大きいし、ギャラクシーなんてスマートフォンなんてもうブランドじゃない。日本の携帯キャリアで韓国製の携帯を売るなんて、誰も想像しなかったでしょ。覚えてる?ガラケーの時に、SHARPとか。
小林:はいはいはい。AQUOSとか。
森辺:SONYもそうだし、散々作ってたじゃん、日本のメーカー。Panasonicもそうだし。東芝も日立も、皆作ってたんじゃないかな。それがスマホになってからXperiaがなんとか頑張ってるぐらいで、もうGalaxyかiPhoneか、みたいな。で、韓国中国台湾勢が出てきてて、みたいなね。そんな状態で。結局、自分たちの方が技術あるし、品質いいし、彼らより上だよと。で、軽視したんだと思うんですよね。品質は確かにいいのかもしれない、今でも。技術力もあるのかもしれない。けど、じゃあ、世界がそれを選ぶのかって。品質高い方を選ぶのかったら、そうじゃなかったってことなんですよね。品質がいい、技術が高い=素晴らしいっていうことは日本の常識であって、世界の常識ではなかった。ガラケーがガラパゴっちゃった時にそれに気付けばよかったのに、ガラパゴス現象なんてのは相当前に言われてるわけですよ。にも拘らず、未だにガラパゴス戦略みたいなね。言葉自体は、もうガラパゴスなんて古いんだよ。古いのに、やってることはまだまだガラパゴスみたいなところがやっぱりあって。そこがすごく敗因になったんじゃないかなと思います。もう一つは、日本の市場が無駄にでかかったっていうね。つい最近まで、世界第2位の経済大国でしょ。今は中国に抜かれて第3位ですけど。やっぱり、これだけでかい市場がバックにあると、どうしても国内市場を優先になっちゃうから、欧米と日本を守る、みたいな。アジアとかASEANとか小国はいい、みたいなね。そういうのが、すごくあったんじゃないかなっていう。業界によっては、今でもあると。これだけ少子高齢化・人口減少が続いても、1億人以上の人口ってね。それでこれだけの経済規模の国ってなかなか無いから、やっぱり遅れちゃうよね。そういうことが、やっぱり敗因い繋がったんじゃないかなと。一方で、韓国とか中国企業の違いっていうと、韓国なんかは、自分たちの自国だけで売ってたら大きく伸びていけないから、世界に出ざるをえなかったと。中国は、やっぱ世界の工場としてその地位を確立して、昔は物真似だったけど、いつしかそうじゃなくなって、成長してったっていうね。巨大資本で、今、日本よりも全然工場も綺麗だし、設備もいい設備使ってたりとかするんで、これからどんどんどんどん大きくなるだろうしね。今、ちょうどほら、ワールドカップやってるから分かるけど、ワールドカップの試合で広告が出てくるじゃん。ぜーんぶ中国企業でしょ。
小林:そうですね。中国がトップって、新聞でも書いてました。
森辺:あれを見たらまさに分かるんだけど、オリンピックだってそうだし。そういう世界にどんどんどんどんなっちゃってて、この、目に見えない品質の良さ・違い、技術の高さって、イノベーションまで行かない、イノベーションとは呼べない差は、お金にはならないんだよね。イノベーションと呼ばれるところまで行ってしまえば、それはお金に替えることができるんだけども。そこはやっぱり大きな違いとしてあるし。ハードからソフトに転換してったってよく言われるじゃない。ハードからソフトに転換したことによって、ソフトの重要度が上がって、ハードの重要度は落ちたんだけど、決してじゃあハードが重要じゃないかって、そうじゃないんだよ。日本企業はハードをずっと作り続けてるでしょ。で、欧米のメーカーはソフトに転換してったと。これによって、じゃあハードの重要度が薄まったのは、たしかにソフトが重要になったからね、薄まったんだよ。ハードも日本企業だけじゃなくて、中国や台湾や韓国の企業でも作れるようになったから、薄まりましたと。で、その差がね。微妙ながら分かんないっつってるわけじゃん。アメリカが賢いのは、イノベーションを起こして、ハードの戦いをやめて、日本に敗れて、ソフトに転換してったわけだよね。そこで一気に伸びてったと。もう違う次元の戦いを、アメリカはやってますと。で、またどんどんどんどんイノベーションで、シリコンバレーが新しい価値を生み出してってます、ってのが今のアメリカでしょ。日本はまだ「いやいや、そうは言っても、中国企業よりもうちの方が品質がいいんですよ、技術が高いんですよ」って言うんだけども、その高い品質や技術が目に見えない。これがね、「うわ、全然違うわ!」って目に見えちゃうぐらいの違いだったら、多分評価されるんで、そこまで行ってくれたらね。突き抜けたらね。また日本も変わるんだと思うんですよ。なんにもない空間に、いきなりバーンて画面が出てきて、テレビになるとかね。液晶が薄いとか、ちょっと厚いとか、もう薄いじゃん、皆。そりゃ、1センチこっちの方が薄いとかさ。4Kか8Kかとか、そういうレベルの差じゃなくて、何もないところにバーンみたいな、そういうイノベーションであれば、お金に替わるんだけどもね。そんな話をしたんじゃないですかね。そんな感じで大丈夫ですかね。
小林:はい、ありがとうございます。では、お時間もやってまいりましたので、本日はここまでにいたします。では、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
<終了>