小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林マアヤです。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林:森辺さん。本日のPodcastなんですけども、前回に引き続きマーケティング研究協会主催の、タイトルが長いんですけども、「BtoB製造業のための アジア新興国における戦略的チャネル構築 欧米系、ローカル系競合企業に勝つための具体策」ということで、
森辺:うーん、長いね。
小林:はい。こちらのセミナーなんですけども、セミナーの中で、私が気になった質問があったんですけども。企業が海外進出する際に、どうしても調査費用として、外部使ったりですとか専門家を使ったりっていうので、費用がどうしてもかさんでしまうと思うんですけども。その際に、社内で予算が、会社で決められた予算があると思うんですけども、その中で「上層部の方がどうしても理解してもらえない」だったりですとか、そういった相談ですね、があったんですけども。これについて、お伺いしてもいいですか。
森辺:はい、なるほど。今日はその質問を紹介するっていうことね。
小林:そうですね。
森辺:ありましたね、たしかね。小林さんが今言ったことを整理すると、前回説明したセミナー、1章から6章まで色々やって、色んなことを可視化しないといけないですよと。で、戦略を持て、という話をしたんだよね。戦略を持つには、所謂インプットを入れないと、戦略というアウトプットなんか出ませんよと。なので、可視化をする作業ってのが、まず絶対的に重要で、BtoBの企業は特に可視化をしなさすぎると。市場の可視化ってマクロ的な可視化はやっても、競合の可視化しないよねと。欧米の競合・ローカルの競合が、どういう脅威なのかっていうのを、自分たちの営業マンが上げてくるようなレベルの情報しか持っていなくて、本当に戦略に応用できるような、革新的な情報ってのはないよね、と。だって、それは調査してないからだもんねって。チャネルに関しても、競合のチャネルの競争優位がどこにあって、自分たちに無いものは何で、自分たち足りてないものは何なのか、と。補うべきものは何なのかということのレベルまでは深掘れてないよね、という話をして。で、それって全部インプットでしょ、と。そのインプットが無いと、競合に勝るような戦略って生み出せないよねと。チャネル戦略にしたってそうですよね。参入戦略にしたってそうですよね。だから、いくつかのフレームワークを紹介して、このフレームワークを埋めるぐらいの情報を、まず収集する、っていうことをしないと、アウトプットという戦略は出ないと。つまりは、インプットが少ない人の出す戦略アウトプットは、貧相であると。一方で、インプットが十分な人が出す戦略アウトプットは、最低限を満たしている、っていう話をしたと。なぜ、これ、最低限かというと、インプットが多いと必ずいいアウトプットが出るかっていうと、そうではないと。たくさんのインプットに、経験則やノウハウやスキルを入れて、化学反応を起こして、初めて革新的な戦略やアウトプットが出るので。そうなんだけども、でも最低限インプットを入れなかったら、もう議論になりませんよ、っていうことであると。だからこの質問者は、すごく前置きが長くなったけどもね、背景をリスナーの皆さんに共有しておきたかったんで長く説明したんだけど、この質者は、そのことにはagreeであると。ただ、その調査をすると言っても、会社って予算で動いてて、上司がいて、上司にそのことを説明するのに、上司自体がその必要性を感じていない。上層部がそれを感じていない・分かっていない。「何言ってんだ」と。「基本的にはうちの商品はいいものだから売れるだろう」と。もしくは、「それをやるのがお前だろう」というのが根強くて。いやいやいや、競合の情報を収集するのは、BtoBメーカーの仕事じゃないし、競合の販売チャネルの優位性を可視化するのは、BtoB製造業の仕事じゃないし、市場環境を調べるのもBtoBの製造業ではないので、それは違うんですよね。そんなことを欧米の先進的グローバル企業で、BtoBのメーカーがそれを自分たちの主業務としてやるってことは無いんでね。特殊の部門が、事業部門が、特殊な調査部門みたいなのが社内にあって、そこが調べるんだったら分かるけども。でも、そんなのを内部で持つなんていうことは、はっきり言って非効率なので、基本的には経営企画室や経営戦略室までのレベルで、情報を集めるのは外部にお願いしますと。それを分析して、自分たちで戦略をアウトプットします、というのが経営企画室とか経営戦略室でしょ。でも、自分たちがアウトプットした経営戦略だけじゃ不安だから、所謂そんなことばっかりやってる我々のような専門家に、併せてアウトプットを見てもらうと。彼らのアウトプットも見たうえで、自分たちのアウトプットと比較検討して、最終的なアウトプットを出す、っていうことをやるわけで。これを分かってない人からどうやって予算取ればいいんだ、というのが質問で、結論から言うと、もう分からすしかないっていう話なんだよね。だって、その人がOKしないと予算取れないわけだから、分からすしかなくて。じゃあ、そういう方法があるんですか?って言った時に、やっぱり理路整然と、その必要性をロジカルに説いていかないといけない。逆に、外部の専門家を連れてって、その人に話をさせるってのも一つの手だっていう話を、僕はしたと思うんだけども。自分の身内の言うことは聞かないけど、外部の専門家の言うことは少しは聞いたりもするし。もし、直属の上司がそういう考えなんであれば、その上、一つ二つ上ぐらいを狙って落としにかかるっていうのもそうだし。まあそういうことをすると日本の組織は波風立つから、なかなか現実的ではないのかもしれないけども。けど、理解をさせるしかないっていうのが、僕の回答で。本当にこれ、難しい問題で。予算を取ってくるわけだからね。だから、あまり難しく言わずに、「ここにこういう予算をかけると、こういうことが現実になります」と。それに対する対価として、ありか無しかっていうところなんだと思うんですよね。難しいよね。日本は、こういう可視化の作業を、コストって見るんですよ。要は、「なにか分からないことを可視化して調査をする」っていう。調査費用ってのは費用なんですよね。分類上はね。体系上の分類として。なんだけども、欧米の優れた会社は、先進的なグローバル企業っていうのは、この調査コストを投資という風に判断するわけですよ。要は、利益をより効率よく得るための、最低限必要な投資であると。けど、日本の企業の場合は、「いや、やんなくていいでしょ、そんなもん」と。「やんなきゃいけないって、もう、コストだな」っていうことなので、あまりそこに馴染みがない。じゃあなぜ馴染みがないのかっていうと、今までは高い技術力・高い品質さえあれば売れてきたっていう背景があるから、そんな市場のこと、競合のこと、チャネルのこと、知る必要が無かったんだよね。だって、日本企業しか作れないんだもん。しかも先進国がターゲットで、そこにひたすら売ってりゃよかったし、日本国内のビジネスなんて、おそらく創業者は、100年前に会社を創立した先人たちは、それをやってきた。国内、新規の市場ね。けど、日本国内で既に信用もある、実績もある、なにもある、全部ある状態で始めるわけだから、そんな一から情報集めるなんてことは、しなくていいと。ただ、今、中国や台湾や韓国の新たな強豪が入ってきて、競争環境が劇的に変わったっていうことと、市場環境も日・欧・米の経済支配から、プラス新興国が出てきてね。その新興国までもがターゲットになるってことは、市場環境も競争環境も大きく変わったわけで。そんな市場でビジネスをやろうとしてるのに、可視化という作業をしてインプットを増やして、アウトプットを出す作業が要らないなんていうのは、あり得ない話なんで。上層部がそれに理解を示さないんだったら、「具体的にじゃあどうすればいいのか教えて」って聞くしかないよね。「それを考えるのがお前の仕事だろ」って言われたら、もう辞表を出して別の会社に行くしかないんじゃないかな。っていうことなんだけどもね。でも、そんな無責任なことは言えないので、僕でよかったら説明に行きますよっていう回答をしたんじゃないかな。だってもう、理解してもらうしかないから。
小林:そうですね。
森辺:だから、僕、時間が許す限りお付き合いはしますって話をしたんじゃないかと思います。
小林:はい。じゃあ、ご回答いただきましてありがとうございます。
森辺:はい。ありがとうございます。
小林:じゃあ、リスナーの皆さん、本日はここまでにいたします。皆さん、ありがとうございました。
森辺:はい、ありがとうございました。
<終了>