小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林真彩です。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林:森辺さん、今回も前回に引き続き、600回を記念してスペシャルゲストの方をお呼びしております。明治大学 経営学部教授 大石芳裕先生でございます。大石先生、よろしくお願いいたします。
大石:はい。よろしくお願いします。
森辺:大石先生、前回はDX(デジタルトランスフォーメーション)について先生にお話を伺ったわけですが、今回は「ミレニアル世代」についてお話を伺いたいなというふうに思っております。ミレニアル世代、ちょっと舌を噛んでしまいそうなあれですけども、まずこの辺りの定義から、すみません、基本なところなんですが、リスナーの皆さまもまだ分からない方もいらっしゃるかもしれませんので、定義の辺りから、ちょっとすみません、お話をお願いします。
大石:了解です。ミレニアル世代というのは様々な定義があるんですが、ここでは1980年から2000年頃までに生まれた、現在で言うと19歳~39歳ぐらいの世代ですね。中国で言うと、パーレンホウだとか、チュウレンホウと言われる人たちを指しています。なぜこのミレニアル世代が重要なテーマになるかと言ったら、前回のデジタルトランスフォーメーションの裏返しなんですね。先ほどのデジタルトランスフォーメーションは企業側の変化を言ったわけですが、それが、それを受けて消費者側がこういうふうに変わったというのがミレニアル世代なんです。だから、簡単に言うと、ミレニアル世代はデジタルネイティブ、生まれつきデジタル化された人たちということがまず第一の特徴であります。考えてみてください。いわゆるネットというのはいつから始まったかと言うと、1995年にWindows95が出るんですね。
森辺:そうですね。
大石:その前にApple、Macが出ているんですけども、やはりこのWindows95から急速にネット社会になっていくと。80年に生まれた子が95年のときに15歳、それから大人になるに従って、このコンピュータを扱っていくようになってですね。
森辺:タイプライターとか知らない人たちですからね。
大石:そうそうそう。
森辺:うちの小林なんかがまさにミレニアル世代なんですかね。
大石:そうですか。
森辺:生まれながらに。あなた、生まれたときガラケーあった?スマホですよね、きっとね。
大石:iPhoneが出たのが2007年なので、こうなるとこの辺になる世代、20代後半~30代というのはこの辺ね、皆さん使っている。
森辺:じゃあ、ギリギリだね。小林、26~27ですから。歳言っちゃったけど。
大石:(笑)
森辺:ギリギリですね。なるほど。
大石:そうですね。その前は、ジェネレーションXと言うんですけども、このジェネレーションXとミレニアル世代は、X、Yで言うと、ジェネレーションYにあたるんですね、ミレニアルといって。英語で言うと、ミレニアルズというかたちの言い方が一般的なんですけども。この後の世代、つまり2000年代生まれの人たちはZ世代と言われるわけです。ここは完全にスマホ・ゲーム、これでやっていて、むしろパソコンは使えないと、「キーボード打てません」みたいな人たちの世代になってくるわけですね。
森辺:小林そうでしたよ。うちに入社したときに、パソコンいいやつを与えているのに「iPhoneで打っていいですか?」って訳わからないことを僕に言うんですよね。「この子は何言っているんだろうな?」と思って、初日に、「いや、パソコンのほうが打ちやすいでしょう?」と言ったら、「私、携帯のほうが打ちやすいので」と言ってやらせてみたらものすごい指の動きをするんですよ。
大石:でしょう?
森辺:スマホのキーボードが僕のスマホにはないような動きをするわけですよね。そういう人たちですね、きっとね。
大石:そうですね。だからもう、森辺さんはこのミレニアルよりも上の世代だから、その辺がちょっと違和感を持って見るわけですね。
森辺:だいぶ違和感あります。宇宙人ですね。
大石:僕なんか、全然、小林さんなんか子どもよりももっと下の世代だからそうなんですが、でも、この単にデジタルネイティブというだけではなくて、実はこの90年代から2000年代にかけてはいろんなことがあったわけです。例えば、92年にはリオの環境サミットというのがあって、地球環境問題というのがすごくやっぱり問題になるわけです。だから、その影響を受けて、この世界のミレニアル世代というのは非常に環境意識が高いということがありますね。それから、「ものからことへ」というかたちであまり所有にこだわらなくなりました。だから、むしろシェアリングエコノミーを代表するわけですね。メルカリの発達とか、こういうものも実は支えているのはこのミレニアル世代です。
森辺:車要らないと言いますもんね。
大石:車、もうね、東京にいる人たちはもう車を持っていない、免許証も持たないという人が増えて、だから、ある車メーカーの宣伝はまさに漫画のドラえもんの世界が大きくなって、車でデートすると、まず免許証取りましょう、車に乗りましょうという宣伝をテレビでやらざるを得ないぐらいに今はそういう時代になってきていると。だから、それこそUberとかの様々なこのシェアリングが進んでいる、自転車もそうだし、車もそうだし、これがこのミレニアル世代の特徴だと。それから、ブランドについても実はいわばラグジュアリーブランドの伝統的なブランドにあまり興味を示さない。むしろ、自分たちに合ったもの、あるいは、要するにお母さんお父さんたちの世代が使っていたものにアンチであるので、もっとニッチなブランド、僕らから見ると、「えっ、何それ?」というブランドを好むのがこのミレニアル世代。
森辺:まさにそうですね。小林そうですね。
大石:やっぱり(笑)
森辺:はい。車とか要らないし、服も興味ないっていう。
大石:あら。もう小林さんにしゃべってもらったほうがいいんじゃない? ミレニアル世代については。
森辺:ええ。そう。
小林:ハイブランドにもそこまでもう憧れは。
大石:ない、ね。
小林:そのお金に使うのであれば、旅行とかそういう。
大石:そうそうそう。
小林:「もの」ではなく「こと」に使ったほうがいい。
大石:そうですよね。
森辺:休みごとに旅行に行っていますからね。
大石:だからね、旅行大好きというのもこのミレニアル世代の特徴です。やっぱり「こと」なんですね。しかも、そこでなんで旅行行くかというデスティネーション、目的地もスマホで撮ってシェアをするというふうなかたちが中心になっていくような世代なんです。ただ、これは世界的に見ると、実は日本のミレニアル世代というのは21%ぐらいで低いんですね、割合が。そして、意外と環境意識とかそういったもののかたちは上の世代よりもそんなに高くない。だから、アメリカやほかのミレニアル世代というのは僕がさっき言ったような特徴を強く持っているんですが、「もの」から「こと」とか、ハイブランドに関心を持たないというのは日本のミレニアル世代も同じなんですが、ちょっと日本だけ見ていると世界の流れとちょっと違うんですよ。だけども、世界的にはこれが非常に強くて、だいたいアメリカ・中国・ヨーロッパなんかも3割ぐらいがこのミレニアル世代で消費の中心になっているということを知っておく必要があるということですね。
森辺:なるほど。
大石:それから、もう1つは一般にミレニアル世代というのは学歴も高いしアクティブなんですが、一方でやはり失われた世代の部分もあって、世界の3割がミレニアル世代だとすると70億を超える20数億のミレニアル世代がいるはずですよ。片方では学歴が高くてホワイトカラーでいい生活をしているけど、片方ではやはり失業し貧しい生活を強いられている人たちもいる。実はこれがアメリカでトランプ政権を支えている「forgotten people」と言われている人たちなんですね。
森辺:そうですね。
大石:だから、そういうミレニアル世代というのは二面性があるということなんですが、ただ、僕らはマーケティング的に言うと、やはり先ほどの、先週のデジタルトランスフォーメーションとこのミレニアル世代、デジタルネイティブでちょっとX世代と違った消費意識を持っている人たちを対象にやはりビジネスを組み立てていかなきゃいけない。ここが一番のポイントになってくるわけですね。
森辺:なるほど。これ、時代が今、大きく本当に変わろうとしているまさに最中なんですよね、きっとね。
大石:はい。だから、確かに昔から世代論というのはありましたけど、やっぱりX世代とミレニアル世代というのはカクンと変わるみたいですね。
森辺:ですね。
大石:だから、ここをきちんと研究して次のZ世代まで読み込んでいかないと、実はマーケティングというのは消費者志向だというのを先週お話しましたけども、そこが理解できない。はっきり言って、だから、われわれみたいなおじさんやおばさんがこの製品開発をやるのではなくて、やはりもうミレニアル世代に任せて、彼らが自分たちに合ったものを製品やサービスをやはり考えていく。そしてアプローチしていく。もう中国なんかだったら、10代ごとに世代ごとに使っているアプリもSNSも違うというふうに言われています。
森辺:だから、経営者もどんどん代変わりしていかないといけないし、むしろあれですよね、年配の人が意味不明なことを下が言ってきたものにこそYesと言って、自分たちが分かっちゃうものはNoと言うぐらいの、たぶん発想がないとこの大きな今先生がおっしゃったカクンと変わっていくというところには追いつかないのかもしれないですよね。
大石:無理ですね。理解できないと思います。僕らだってこういう大学で若い学生を相手にしているわけですよ。全くずれているとは思わないし、僕らの価値観が全く古臭くて役に立たないとも思ってはいないんですけども、でも、例えば、消費世代として彼らを見たときに、彼らが使っているアプリ、好きな音楽、例えば、知っています?今、アメリカでヒットチャート16週か何かトップになっているXという歌手の20歳の黒人、大学をドロップアウトして、これがTikTokで大ヒットしたんですよ。カントリー…、ね、小林さん、知ってる?
森辺:知ってるの?
大石:うん。聞いたことある?
小林:お名前は聞いたことあります。
大石:絶対、僕、聞いたんですよ。
森辺:先生、若いですね。
大石:いやいや、おれ、YouTubeでちらっと見たから。「いや、何だ?」って。じゃあ、そんなに人気なんだったら、おれ聴いてみようと思ってね、YouTubeで聴いたんですよ。でね、カントリーラップというジャンルなんですよ。全然分かんない。
森辺:カントリーって、あのカントリーじゃないですか?
大石:うん。カントリーで。
森辺:それとラップが融合するんですか?
大石:いや、だから。(笑)だから、われわれにはそれを聴いてもね、しかも、カントリーウェスタンのある大御所が「これは面白い」と言って、またそれをサポートしたらしいんですよ。だから、それがうわっとこう、広がった。きた?そうそうそう。これこれ。ちょっと、それ、小林さん、名前読んで。
森辺:へえー、全然知らないですね。
小林:リル・ナズ・Xさんですね。
大石:うん、そうそうそう。20歳の黒人の若者なんですよ。いや、これね、だから聴いたって、何がいいのか、そんなに、アメリカだけじゃなくて世界でヒットしているか、僕らには分からないんですよ。
森辺:はい。ですね。
大石:これがね、やはりミレニアル世代と僕らの世代間の差なんですよ。
森辺:ですよね。だから、われわれがいいと思うものとか、欲しいと思うものは、ミレニアル世代が必ずしもいいとか欲しいとは思わないわけですよね。
大石:思わない。
森辺:いや、それは社内でもギャップを感じるんですよ。これ、いいよなって。例えば、「タリーズで買ってきてあげる」と言って、僕、行くんですけどね、意味不明なものを頼まれるわけですよ。チョコリストとかっていう。「えっ、そんなもの飲むの?」みたいな。「本当にそれでいいの?」って確認をしてしまったりとか。あと、ヨーグルトアサイー何とか、「アサイーって何?」みたいな。「フルーツっていうのはもっと分かりやすいものでしょう?」みたいね。そういうものとか、まさにそういうこともたぶんそうなんでしょうね。
大石:そうです。しかもね、ここの研究をやらなきゃいけないというので、今、僕もある調査会社と組んでグローバル・ミレニアル・ラボというのをやって企業の方々と研究しているんです。関心ある人いは、また連絡いただければ紹介しますけど。特に、今年は「食と健康」ということにテーマを決めて1年間研究しようということをやっていますけど。これね、本当に皆さん、企業の方々も分からないと、だから、調べなきゃいけないんだと。もちろん日本国内だけじゃなくて、アメリカ・中国、そういうところも調べますよと。やっぱりこのグローバルマーケティングをやっていくうえで消費者を知らなきゃいけない。
森辺:そうか。消費者も大きく変わっているということですもんね。
大石:そうです。アメリカの友人がニューヨークにいるんですが、その娘さん2人がミレニアル世代で、これがやっぱり理解できないと言って嘆いておられるんですよ。消費者庁さんの専門家なんですけどね、彼女は。だけども、そういうふうなやっぱり行動とか何かが違うので、そこをしっかり研究しようと。ここは皆さんも気を付けて見ておいていただければいいかなと思いますね。
森辺:ありがとうございます。そしたら先生、今日もお時間が来てしまいましたのでこの辺にして。次回また最終回になりますけども、先生にご登場いただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。
大石:はい。よろしくお願いします。
森辺:本日はありがとうございました。