東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、ちょっと、前回ちょっと長くなっちゃったんですけど、あまり切れがよくなかったので、結論というかたちで。そういう数字で交渉していかなきゃいけないと。外資系はきちんとそういうことをすると。日本企業だとなかなかそこまで、していいものだかという遠慮もたぶんあるんだと思うんですよね。ただ、ディストリビューター側からすると、引き継げるだけでラッキーで、10億だろうが5億だろうが、その分増えるんだからいいんだよねと考えている、華僑の人が考えそうなことではあるじゃないですか。と考えると、彼らは多ければ多いほどいいけども、それが少なくなったところで●純増●(00:49)だから、あまり腹の痛みがないという話なんだと思うんですけど、その辺のロジックを分からせないとなかなか、たぶん、そういう交渉をしようとは思わないということじゃないですか?
森辺:そうですね。全部計算だと思っていて。今の既存のディストリビューターがどれぐらいの、ストアに対してどれぐらいの、いわゆるセルスルー率、インストアマーケットシェアとわれわれは呼びますけど、インストアマーケットシェアがあって、各店舗にそのデータがあるわけじゃないですか。引き継ぎがなかなかうまくいかない、ディストリビューターを変えることに躊躇しちゃうメーカーって、その今の現状すら分かっていないケースが多いわけですよ。今の自分たちの既存のディストリビューターは何店舗に商品を置いていて、その各いろんな店舗があるわけじゃないですか。「店舗の売上ってどれぐらいなの?」「インストアマーケットシェアどれぐらいなの?」、それが分かっていたらそれと同じように配荷してもらうわけです、新しいところとか。それ以外にプラスアルファ、「どうやって2億積むんですか」という話なので、「じゃあ、新しい小売はこことここですね。店舗数何店舗ですね。じゃあ、今までの傾向で言うとわれわれのインストアマーケットシェアというのはだいたいこれぐらいなので、これぐらいはいきますね。よし、じゃあ、2億上乗せできますね。数字大丈夫ですね」とお互いが握れるわけじゃないですか。ここで初めて両者の頭が数字でつながるわけですよね。その前までって何となく雰囲気でつながっていて。
東:そうですね。
森辺:雰囲気でつながっていたら、やっぱり駄目なときっていかないし、駄目なときに対策を打てないじゃないですか。なので、ディストリビューターって数字でつながって握らないと、なかなかたぶん、難しいと思うんですよね。
東:そしたら、日本企業は、「ここ、こういうブランドを扱っているからいいディストリビューターだな」と、ディストリビューター側からしたら、「日本の商品でこの有名なメーカーを扱えることによって自分の地位が上がるからいいな」みたいな、その中で契約しちゃうみたいなことが多いと。
森辺:多い。契約して10億って約束したのに、仮に7億しかできなかったと。「7億しかできなかったから、じゃあ、また変えます」って日本のメーカー絶対言わないですよね。だって、変えたばっかりで。5億だったとしても、たぶん、また変えるということはしないわけだから、そんなことは火を見るよりも明らかにディストリビューターは分かっているので、そこはきっちり彼らにプレッシャーをかけて守らせる。それが物理的に守れるのかどうなのかという、さっき言った計算をメーカー側はしないと、「ばっくり何とか、ちょっとお願い」みたいな、そんなのじゃ、僕、怖くて変えようがないと思うんですけどね。
東:そうですね。
森辺:そこはたぶんすごく重要で、そこが契約交渉じゃないですか。最後の管理育成というのは、それをずっとモニタリングするということなので、どうやって管理育成をしていくかという話で、いいところだったらほとんど管理育成することなんてないわけですよね。でも、何も分かっていないから、訪問してディストリビューターが見せたい自信のある小売だけ見せられて、「問題ないよ。問題ないよ」と言われて、最後、「問題ある」みたいな話になっちゃうわけなので、そこまで分かっていたら、そういう話にはならないので。
東:そうすると、数字をもとにすれば管理育成ってそんなに難しくないじゃないですか。
森辺:難しくない。
東:KPIがストアカバレッジとインストアマーケットシェアだと、ストアカバレッジの数字が、例えば、1,000店舗で見ていたら、それが900しかいっていなかったら、なんで100の差異があるかというのはすぐ分かるわけじゃないですか。でも、それが数字で、結局お互い認識していないから、何となくになっちゃうということなんですね。
森辺:うん。そう。「なんでだ。なんでだ。マーチャンダイジングが悪いのかな。配荷が悪いのかな。何が悪いのかな」となっちゃうわけですよ。「価格かな。商品かな」となるわけですよね。最後、「ディストリビューターが悪いんじゃないか」みたいな話になって、ディストリビューターが悪いという結論に陥るというのがだいたいのところなんです。なので、数字で全部把握をしていく。非常にシンプルですよ。ストアカバレッジとインストアマーケットシェアだけですから。それ以上考える必要はないですから。
東:そうすると、ある程度、10億ぐらいの売上があると、ストアカバレッジを増やすところというのは1つあると思います。それはもう単純だと思います。そうすると、「インストアマーケットシェアを増やすためにディストリビューターが逆に何をしてくれるんですか?」「どの小売でどう」みたいなところまで詰めないと、数字の根拠ができないんだと思うんですよね。
森辺:できないよね。
東:そこまでやらないと、なかなか厳しいということですね。
森辺:そう。BTLをディストリビューターがどこまでやるのか、やれるのか、そもそもそういう機能を持っているのか、持っていないのかもそうだし。
東:棚の確保とかもそうですよね。
森辺:そうですね。ストアカバレッジは、言ったらチャネルじゃないですか。置くことですよね、棚にね。けど、インストアマーケットシェアというのは、棚に置いたものを消費者に選ばすことじゃないですか。この選ぶか、選ばないかというのは、これはメーカー側の責任で、商品が悪ければ選ばないし、商品が日本人のいいだと別に現地の人はいいと思わないわけなので、そこの商品の問題と、あとプロモーション、プロモーションも日本でこれだけ打つのに、できれば打ちたくないみたいなスタンスでいるわけですよね。だから、そこもやっぱり積極的に考えていかないといけなくて。そこはやっぱりメーカー側ですよね。何となくディストリビューターに言われるお金を払って、何に使われたのかよく分からないけど、何かキャンペーンやりましたみたいな、そんな話になっちゃうし。確かにアジア、ASEANの小売というのはいろんなお金を要求してくるわけですけども、それをちゃんと見極めて、これは出す、これは出さないということをやっていかないと、プロモーション0じゃ選ばれないので、ストアカバレッジは上がっても、インストアマーケットシェアは上がらないということにはなっちゃいますよね。
東:分かりました。今回の話をまとめていただくと、今後どういうことをやったらいいのかというのをアドバイスを含めて、リスナーの皆さんにお伝えいただければと思うんですけど。
森辺:一言で。強いチャネルの3原則は、発掘選定と契約交渉と管理育成、これだけひたすら詰めていけばいいです。消費財メーカーに関して言えば、ストアカバレッジとインストアマーケットシェア、これ以外に考える必要はないので、これを考えてください、ということで最後のメッセージです。
東:分かりました。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。