小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林真彩です。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林:本日のPodcastなんですけども、前回に引き続き、前回、日本経済新聞の記事で、スイスの有力ビジネススクールIMDが発表した2019年の世界競争力ランキングについて、日本の総合順位が30位と、前年より5つ順位を下げたと。この理由について、森辺さんが、外部要因と内部要因があるとおっしゃっていて。外部要因の1つとして、中国企業の台頭。2つ目として、アメリカのイノベーション力の高さとおっしゃっていたんですけど。最後に、この低下の要因について、内部要因についても今回触れていきたいとおっしゃっていたんですけど、この内部要因について、本日はお話いただけますでしょうか?
森辺:前回、外部要因の話をしましたと。低下をした理由は、いわゆる外部の環境が変わっている、外部要因が強いんですよと。中国がこれだけ成長した、台頭したというのは1つだよね。アメリカのGAFAに代表されるような産業構造が変わっていく中で、アメリカというのは、新しいイノベーションでどんどん、どんどん、企業が生まれてくる。ハードの時代から、ソフトの時代、ソフトの時代からIoTの時代になって、IoTの時代になると、今度インターネットが出現して、クラウドだったり、AIだったり、ビッグデータみたいなものが非常に重要になってきて、そういう先端の市場をすべてアメリカに取られてしまったと。シリコンバレーと、中国深センに取られてしまった。そういう話をしたんだよね。内部要因に関しては、やっぱり日本企業が、技術力がすべてだという考えにあまりにも固執されすぎちゃっていて、それでアメリカに勝ったんですよ、日本って。だって、もともと戦後、焼け野原の中から何もなかったんだよね。何もない中で、アメリカのもの真似していろんなものをつくって、ラジオつくって、ラジカセつくって、コンポつくって、自転車つくって、テレビつくって、自動車つくってってやってきたわけじゃない?最初はアメリカに日本製?と、粗悪品って言われながら。中国製が粗悪品って言ってた時代があったと思うけども、同じようなことを言われながら、それを欧米がつくるものよりも、よりよく、より安く、より小さくつくってきたのが日本企業ですと。そんな中で、アメリカに勝ったわけだよね。戦争に負けたアメリカに、今度は経済で勝ったという時代があったわけで。Japan as No.1とまで言わしめた時代ね。その勝ちの成功体験が、やっぱりこの日本の先陣をつくった人たち、日本の土台をつくった人たちというのは、もういなくなっているわけだよね。戦後、この急激な成長を支えた人というのは、経済の世界からもういなくなっている。一部は死んでるわけで、お亡くなりになられていて。その第2の世代が、それを見ていた人たちが出ていて。そこの世代で、今、われわれが、そのたぶん次の世代。小林さんなんかは、そのまた後の世代になってくると思うんだけど。技術で勝ったものだから、技術が高いことがいい。品質が高いことが重要。そこさえできれば、世界はそれを求めるんだという考えに、あまりにも固執しすぎていて、でも、時代は大きく変わっているんだよね。ハードだけの世界だけで言っていたら、技術技術、品質品質って言ってりゃいいよね。だって、この間も少し話したかもしれないけど、テレビが白黒、技術磨いてカラーにしましょうと。さらに、技術磨いて、薄くしましょう。これが、テレビの革命、イノベーションでしょう?なんだけど、今ってテレビそのもののハードよりも、その中でどういうコンテンツを流すんですかということに、よりフォーカスが当たっていて、でも、その中のコンテンツを流しているのってどこ?もう全部欧米でしょう?Amazonもそうだし、Netflix (ネットフリックス)とか。日本人はテレビ離れとか言って、サイバーエージェントの藤田さんだけが一生懸命頑張っているけども。AbemaTV、面白いね、あれ。よく見るんだけど。AbemaTV、あれあったらテレビ要らないよね。
小林:そうですね。
森辺:すごい真面目な番組から、しょうもない番組までやってんだけど、そのしょうもない番組が意外にシュールで面白いんだけども。まあまあ、ちょっと話が逸れたけども。そうでしょう?要は、発明からすごく時間が経っているから、技術革新って日本語で訳されるけど、イノベーションが目に見えにくいんだよね。イノベーションってもっと別のかたちで、その当時のイノベーションというのは、技術革新という言葉がぴったり当てはまるような、白黒テレビをカラーにするとか、ぶっといテレビを薄くするみたいな、そうだったんだけど。今ってそうじゃないじゃん。コンテンツじゃん。分かりやすいのは、例えば、タクシー業界とかで言うと分かりやすいんだけど、Uberみたいなのが新しいわけで、あれがイノベーションなわけだよね。1台の車も1人の運転手も持たずに世界最大のタクシー会社になるみたいな。これって、テクノロジーと既存のビジネスモデルをつなぎ合わせることで全く新しいビジネスモデルを生むという、これこそが本当の意味でのイノベーションで。技術革新じゃないんだよね。訳されっちゃっているけど、イノベーションってそういうことでさ。今あるものを、新しいテクノロジーでどう、よりよくするかということなのでね。そういう世界は、基本的にはGAFAに代表されるように全部取られちゃったわけでしょう?その内部要因というのは、技術なんだ、技術なんだと言っている間に、例えば、IoTって、Internet of Thingsって、いろんなものがインターネットにつながるということでしょう?だから、インターネットにつながって、例えば、分かんないけど、家に帰る前にエアコンのスイッチ入れるとか、家のドアを外から鍵閉めるとか、会社にいながらご飯を炊いておくとか、そういうことができるようになるわけじゃない?そこの、そのものが素晴らしくて、ハードそのものは何でもいいわけだよね。炊飯器とか冷蔵庫って別に何でもよくて。そこの競争を、もうしていないんだよ、世界はね。もっと大枠の、もっと大きな競争をしている。そこにだいぶ置いていかれちゃったというのは、あまりにもハードで勝ったから、アメリカにハードで勝ったものだから、ここの技術というものがすごく重要だということに、あまりにも固執しすぎちゃって、木を見て森を見れなかったって、すごい偉そうなことを、僕、さっきからずっと言っているけども。(笑)でも、そういうことだと思うのよ。いまだにそう言っているんだよね。技術が本当に重要なん…、重要なのは、重要なんだよ。僕は、技術を、別に否定しているわけじゃないけども、技術が本当に重要なんだったら、なんでシャープは台湾の会社に救済されなきゃいけないの?なんで日産とか三菱自動車は、ヨーロッパの自動車メーカーに支援されなきゃいけないの?なんで三洋という会社はなくなっちゃったの?みたいな。なんでNECは全盛期の半分の売上みたいになっちゃったの?みたいな。なんで東芝は?なんで富士通は?なんでソニーは?みたいな話になるわけですよね。だから、そういうことを変えていかないといけない。ハードをどれだけ技術力でってやるということよりも、世界の戦い方って変わってきているわけだよね。そのキーワードになるものがIoTであったり、クラウドだったり、ビッグデータだったり、AIだったり。それがすべてが混ざり合って。でも、その時代も、もうGAFAを代表とする企業に取られちゃっているよね。データがすべてだから、ビッグデータをベースにいろんなことが考えられて、データがないと何もできないから、そのビッグデータをベースにAIがあって。その枝葉のところで日本のテクノロジーみたいなものが、もしかしたら使われていくのかもしれないけども、それでいいの、日本?みたいなね。でも、もし、日本がまた起死回生する可能性があるとすると、僕は、素材なんじゃないかなと思うんだよね。
小林:素材?
森辺:うん。素材のイノベーションって、これからますます注目される気がしていて。日本にも素晴らしい素材メーカーがいっぱいあるけども、結局、ハードって磨いても、もう無理じゃない?
小林:はい。
森辺:インターネットを通じて、いろんなものをつなぎ合わせて、ビッグデータでデータを集めて、AIでそれを判断して、いろんなことをやるみたいな世界になってきているわけでしょう?そのときに、ハードの技術は磨けないけど、素材の技術と言っていいのかな、磨ける。要は、例えば、分からないけど、要らないときには消えてくれる素材とかね。変形自在な素材とかね。例えば、ソファーの素材でも、この部屋にはこういうかたちのソファーだけど、別の部屋に引っ越したときにはこういうかたちに変わるソファーとか、テーブルとか。分からないよ。例えば、車でも、キューってたためるような素材、鉄の素材ができるとかね、そうすると、またイノベーションで、これ、全然変わると思うんだよね。
小林:そうですね。
森辺:今は想像できないようなことを、素材の力で何か新しくできることは非常にあると思うので、頑張ってほしいな、素材メーカー、日本の。
小林:そうですね。
森辺:と思います。
小林:ありがとうございます。本日のPodcastはここまでにいたします。リスナーの皆さま、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。