小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林真彩です。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林: 森辺さん、本日は、東さんにナビゲーターをバトンタッチしてお送りしたいと思います。
森辺: はい。東さん、よろしくお願いします。
東: よろしくお願いします。
森辺: 今日は、どうしましょうか?
東: 今日は、森辺さんがいろいろ日本企業の支援をしている中で、グローバルマーケティングの中で何が重要なのかというのを、少しおさらい的な要素も含めながら、ちょっと振り返っていきたいと思うんですけども。ここ最近、20年間ぐらいやられていて、ここ最近と過去が変わっているのか、変わっていないのかも含めて少しお話いただければと思うんですけど、いかがでしょうか?
森辺: そうですね。面白いのでやっていきましょう。ちょっと、20年近く、そうだよね、こうして支援をしてきていて、過去の話だと、ちょっとトレンドは大きく変わっていると思うんですよね。たぶん20年前って、どちらかと言うと、海外、アジア新興国で販売をするというのは、確かに始まったばかりというか、そういう状況で、今、思うと本当の意味で今みたいに本気にはなっていなかったよね、日系企業各社さん、というのはやっぱりあって。だから、何が重要かというよりかは、情報収集がすごい重要な時代というのがあったと思うんだよね。最初の10年、2000年~2010年ぐらいって、アジア新興国のことを全く分からない中、市場環境がどうなっているんだ、競争環境がどうなっているんだ、流通環境どうなっているんだと、ひたすら調査ばかりをしていたという、そんな印象があって。たぶん、日系企業のトレンドとしても、分からないことを可視化したいという、そんなニーズがすごい強かった。2010年以降の20年までのこの10年というのは、どうやって本当に売りを立てていくんですか?ということに企業のフォーカスって大きく変わってきているという、まず、大きくそんなふうに感じますかね。
東: その2010年以降の大きく変わったところで、本気で売上を●(02:46)ときの、今までの課題もあれば、今までの課題が継続している場合もあると思うんですけど、そこの課題感とか、企業が疑問に感じていることというのは、具体的にどういったことなんでしょう?
森辺: 課題としては、僕は商品サイドの課題とチャネルサイドの課題と、たぶん2つあるんだなと思って、日本企業って。いい商品をつくるという意味では、「いい」という定義が、ここも問題なんだけど、日本での「いい」がアジア新興国の「いい」には、必ずしもそうはならないので、その議論は一旦しないといけないんだけど、ちょっと今回は置いておいたとしてね。ものづくりには長けているわけじゃない?B2CもB2Bも。だから、あまりにもものづくりにフォーカスがいってしまって、チャネルがおろそかになったというのは非常に強くあって。ものとチャネルが両輪で動いて初めて商品って売れていくので、そのいいものをつくれるというのは分かっているんだけど、それが誰にとってのいいものかという、そういう意味でのものづくりとね、もう1回ものづくりを再構築しないといけないと思うのね。それとあと、やっぱりチャネルを、今まで戦略的につくらなかったチャネルを、もう1回再構築するということが、僕は課題としてあるんじゃないかなと思うんだよね。そうすると、日本企業が本当にやるべきことって、「ターゲティング」と「4P」なんですよね。ここが僕は日本企業の課題だし、グローバルでマーケットシェアをしっかり上げていきたいんだったら、「ターゲティング」と「4P」を、もう1回しっかり再構築するということが、たぶん僕は重要じゃないかなというふうには感じていますかね。
東: 「ターゲティング」と「4P」をする前に、森辺さんが言われた、ものと商品とチャネルが同時じゃなきゃいけないというのは、具体的にどういうことか、皆さんに分かりやすくご説明いただきたいんですけど。
森辺: 例えば、基本的には日本の企業の戦後からの成長の過程を見てみると、日本でつくったものを日本で消費した時代というのがあって、プラザ合意で円の価値が急激に高くなったので、アジアで生産したものを、あくまで日本で消費するためにアジアで生産してきたという背景があるじゃない?
東: はい。
森辺: だから、すべてがB2Cなら日本の消費者を満足させるためにつくってきた商品。B2Bなら日本のユーザーを満足させるためにつくってきた商品。だから、よくある中堅・中小の部品メーカーとかパーツメーカーが海外に出ても、結局、海外で日本の完成品メーカーに商品を納めているから、日本でビジネスしているのと全く変わらないという現象がよくあるでしょう?タイでも中国でもね。そうすると、日本の「いい」をそのまま海外に持っていくと、必ずしもそれがそのまま「いい」にはならないということなんですよね。例えば…。
東: それって、具体的に、いいものにはならないというのは、例えば、お菓子とかあめとかだったら、おいしいはおいしいじゃないですか。日本とアジアで売っているもので比べたら。そうすると、森辺さんがいいものにならないと言っているのは、具体的にどういうことなの?
森辺: 例えば、日本ですごい人気のあるあめです。これを、訪日観光の市場だけを見ていると、「おー、中国人も求めているじゃないか」「タイ人も求めているじゃないか」と。これはアジアでウケるんじゃないかという発想でそのまま海外に出ていくわけじゃないですか。でも、結果として、日系の匂いのする小売にしかそのあめって置かれなくなるわけですよね。それって、本当にごく一部の上流階級の人たちのニーズを見ていたり。あと、訪日観光で日本に来ているからそれを買いたくなっているだけで、例えば、われわれがハワイに行ったときにハワイアンクッキーを買って帰るのと一緒で、それをじゃあ、日本のコンビニでハワイアンクッキーを売っていたら買うかと言ったら、買わないじゃない?
東: はい。
森辺: だから、それを誤解してしまって、「中国の人はこのキャンディー好きなんだ」と。「ビタミンC入りのこの高付加価値のキャンディー好きなんだ」と言って中間層に持っていくんだけども、中間層は別にそんなこと思っていないというケースが非常に多くて。だから、いい原材料を使って高い技術力でいいものをつくった、プレミアム商品だと、これがアジア新興国の中間層にはハマらないというのが、まさにその製品の不一致。ここをやっぱり変えていかないと、日本での「いい」というのは、確かに一部の外国人は「いい」と思う人はいるんだけども、メインストリームの人たちが必ずしもそう思うかと言うと、そうじゃなくて。もっと分かりやすいのが、白物・黒物の家電、エレクトロニクスの業界でまさにそれが証明されて、日本の「いい」が通用しなかったから、全部中国に取られていったわけですよね。だから…。
東: なるほど。じゃあ、その辺は次回に。
森辺: そうだね。もう時間だね。
東: はい。引き続き、お聞かせいただければと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺: ありがとうございました。