小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林真彩です。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林:森辺さん、本日のPodcastなんですけども、本日、こちらの番組に寄せられたご質問について、森辺さんにお答えしていただきたいと思います。
森辺:はい。よろしくお願いします。
小林:よろしくお願いいたします。こちらのご質問は、消費財メーカーさまの方からいただいた質問です。
森辺:はい。
小林:じゃあ、質問なんですけども。「伝統小売TTと近代小売MTの議論をよく森辺さんされていると思うんですけども、今後ますますインターネットの出現で市場が変わっていくと思うんですけども、そちらについて森辺さんどうお考えでしょうか?」という質問でございます。
森辺:ECの話かな、それはね。
小林:そうですね。
森辺:インターネットの出現で、ECって書いてある?
小林:はい。
森辺:うん。EC化比率が上がっていくけど、そのことについてどう思うかということ?
小林:そうですね。
森辺:インターネットの出現で。
小林:はい。
森辺:なるほど。非常にいい質問だと思います。この番組では、よくMTとTTの議論をしているんだけど、これってオフライン流通の話をしていて、オフラインの、いわゆるリアルの流通の話をしていて。一方で、今後さらに比率が上がってくるのがECと言われる比率がどんどん増えていくので、オンラインというものが出てくるわけだよね。商品をオンラインで買うか、オフラインで買うかって、まだまだオフラインのほうが主流になっていて。当然、ものによっても違うんだよ。生活用品を買うのはどっちがどっちだとか、アパレルはオンラインで買うけど生活用品はオフラインで買うとか。あと、決まったものはもう、Amazonでオンラインで買うけども、そうじゃないものはどうだとかって、いろいろあるんだけど。大きな意味で言うと、EC化比率というのはどんどん上がっていきます。それはその通りだと思うので、そこには着目をしないといけない。一方で、EC化比率がどれぐらいのタイミングでどうなのかというときに、まず我が国日本を考えたときに、まだ10%にも至っていないという状況を考えたときに、もうすぐ5Gだと言われている日本ですら10%になっていなくて。これが5Gになったら一気に加速するんだと思うんだけども、そういう状況がある。それをASEANで考えたときに、もっともっと低いのね。とくにアパレルだったらまだちょっと先行しているんだけど、生活用品となるとさらに低くて。なぜならば、それだけ伝統小売が網の目のように張り巡らされていたりするので、やっぱりそこで買うということと、あと、物流のインフラが整っていないんですよね。そうすると、じゃあ、買ったものを誰が運んでくるの?という問題があって。ヤマトとか佐川みたいな便利な運送会社さんというのがなくて、あれだけの規模の会社が、あれだけの即日配達をして。ECって物流でしょう。だって、Eコマースのサイト自体ってもう別に、そんな簡単にできるとは言わないけど、それよりも物流をどうするかというのがEコマースの事業の最大の肝だと言われていて。そうすると、物流の進化がやっぱりEコマースの発展。もう1つは通信の進化、ASEANに行ったら分かるんだけど、まだ3Gとか自分の携帯に出ちゃうんだよね。4Gでの通信すら限られていて。そんな中でどうかということと、あと、中国のあの異常なEC化率、いわゆる国が旗振って外資系を一切入れずにやってきて、アリババ、タオバオ、もう一極集中と言ってもいいぐらいの状態でやってきているわけで。あの中国の異常さ、11月11日の独身の日で、楽天1年間の売上よりも売り上げちゃうんでしょう?4兆円でしょう、今年ね。あれを見て、それを同じようにASEANに当てはめると、ちょっと中国は別個の市場ですと。アメリカよりも別個の市場ですという話だもんね。ただ、間違いなくEC化比率は上がっていきますよ。そうなってくると、1つはオフラインの意味がなくなるのかと言ったらそんなことなくて。人間ってやっぱりないものねだりで、オンラインで買っているというのが続くと、今度オフラインでもの見てもの触って買いたいなという欲望が出てくるし。今までオフラインだけの世界だったところにオンラインが急激に出てくると、「うわ、世の中全部オンラインになっちゃうんじゃないか?」という錯覚に陥るんだけども、オンライン化がある程度浸透したら、そこから今度共存していくという世界になってきて、オンラインもオフラインも両方共存するのね。なので、絶対にオフラインというのは重要度は減らないというか、重要であるというのは間違いないです。一方で、オンラインは非常に重要ですよということがあって。僕、それよりも脅威なのは、インターネット事業者がオンライン化することによって、ビッグデータを持ち始めるでしょ。どの消費者が、どの時間帯に、どういうものを、どうやって繰り返し買っているかみたいな。小売ってPOSデータ止まりだったじゃない?
小林:はいはい。
森辺:オフラインの近代小売って。TTはそもそもデータないわけだよね。近所のおっちゃんの何々さんが毎日この洗剤買ってきて、あの人はこの石鹸好きよとか、歯磨き粉はこれよという、いわゆるそれがデータ化されていないというのが伝統小売でしょう。それをPOSでデータ化したというのが近代小売じゃない?
小林:はい。
森辺:なんだけど、それってどういう年齢層の男女どちらかが、何時に何を買ったかというところまでなわけだよね。けど、インターネットになったら、あらゆる情報が手に入るわけだよね。言ったら、「誰か」まで手に入るわけじゃん。例えば、セブンイレブンで小林さんがおでん買って、小林真彩がおでん買ったって、セブンイレブンは分からないでしょう?
小林:はい。
森辺:だって、セブンイレブンに名前登録していないから。ただ、たぶんこの人20代だろうなって見える人が、レジの人がこの人20代だって、小林さんが30代に見られちゃったら30代のボタン押されるんだけど、そうやってそういう情報しかないけど。インターネットになったら、小林真彩が何月何日どこのセブンイレブンでおでん買った、ごめん、ECだから、どこのECで何買ったというのが全部データ化するわけ。Amazonなんかもう、そのデータを持っているわけでしょう。そういうものを持ち始めると、結局、サプライチェーンの中で一番強いのはメーカーだったのが、今度、小売が一番強くなっちゃうんだよね。
小林:なるほど。
森辺:Amazonなんかがまさにそうじゃん。タオバオなんかがまさにそうじゃん。タオバオであれだけ売れるとなったら、タオバオで売るためにものすごいマージン取られて、埋もれないために広告投資バンバン打って、やっとこれだけ売れると。でも、利益どうなの?と。11月11日にこれだけ売ったけど利益どうなの?と見たときに、それはそれだけ売るんだもんね、Eコマース事業者だってたくさんマージン取るでしょう。そうなったときに、コモディティ化しちゃっているようなFMCGのいわゆる消費財は、別にA社のもの、洗剤じゃなくてもいいわけだよね。言ったら、Amazonのオリジナル洗剤でもいいわけでしょう。Amazonのオリジナルチョコレートでもいいわけでしょう。だから、何が言いたいかというと、トイレットペーパーなんかどこのでもよくない?
小林:うんうん。そうですね。
森辺:そうすると、A社のトイレットペーパー、今まではメーカーのA社が強かったけど、別にEコマース事業者がつくる、Amazonがつくるトイレットペーパーでも安けりゃよくない?
小林:うんうん。
森辺:クオリティ一緒ですと。そうすると、今まで、ブランドを持ってやってきたトイレットペーパーメーカーが単なる下請けメーカーに陥って、Amazonがいわゆるメーカーになるということも。
小林:立場が逆転しちゃうということですか?
森辺:逆転しちゃう。そうすると、「あんたたち下請け。安い金でわれわれが言っている量入れりゃいいのよ」ということになっちゃうわけだよね。
小林:なるほど。
森辺:その世界がすごく恐ろしくて。今までは、つくる人が強かったんだけども、これからはマーケティング、売る人が強いという時代になってくるわけだよね。
小林:なるほど。
森辺:そこを考えると、僕は本当の脅威はそこで、だからこそオンラインの時代に消費者とコミュニケーション取らなきゃいけないというのが今のメーカーのやるべきことでね。Eコマース、EC化比率が上がるんだったら上がるほど、オンラインで消費者とコミュニケーションを取ると。もう、A社の商品じゃなきゃ消費者が駄目なんだと刷り込まれれば、EC事業者がどれだけ売ろうが何しようが、強いわけじゃん。Appleがまさにそうでしょう。Appleの商品じゃなきゃ駄目なんだと消費者が思っているから、ヨドバシカメラが売ろうが、ビックカメラが売ろうが、ヤマダ電機が売ろうが、Appleはもう、この値段じゃない?
小林:はい。
森辺:でも、ほかのものって、たぶん売ってやってるとなっているよね、小売がね。でも、Appleの場合は、売らせてあげてるとなっているわけでしょう?だから、どうやってそうなれるかということを、たぶんメーカーは考えなきゃいけなくて。
小林:お客さまのファンを増やすということですかね?
森辺:うん。特にコモディティになればなるほど、そういう世界観というのが出来上がってくるので、オンライン・オフライン、どっち頑張らなきゃいけないかという議論もそうなんだけども、同時に主軸が変わる、主役が変わってくるよということのほうが僕は脅威だと思うんだよね。
小林:力関係が変わってくるということですかね。
森辺:という感じです。
小林:なるほど。分かりました。ちょっと暗い話になっちゃいましたけど。(笑)
森辺:うん。長くなっちゃったね。はい。すみません。これぐらいにしておきます。
小林:いえいえ。ありがとうございます。本日のPodcastはここまでにいたします。リスナーの皆さま、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。