東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回に引き続き、商品の品質に関してなんですけれども、ちょっと話が逸れてしまいましたが、過剰品質とか過剰サービスとかって言われがちなところもあるという日本のサービスとか品質なんですけれども。それをじゃあ、どう考えてどう現地に落とし込むのか、実際に、FMCGのお客さんだったり、FMCGに関係している方が多い中で、たぶん社内の説得が一番最初に来るのかなと。全員が分かってできれば一番いいんでしょうけれども、なかなかそうはいかなくて。担当者が分かっていても、なかなか開発部門が分かってくれないとか、品質とか、あとは生産部門が分かってくれないとか、いろんな悩みをお持ちの方もいらっしゃると思うんですが、そういう方に対して具体的にどうしていけばいいのかみたいな、ちょっと、森辺さんなりの考え方を教えていただければと。
森辺:まず、決定権者に理解をさせるということが非常に重要で。決定できる人ってそんなにたくさんいないわけじゃないですか。それこそ品質をアジア新興国の某国の基準に合わせるなんていうことになってくると、今まで国内でやっている基準を変えるという話になってくるわけですよね。なので、そこはある程度の決定権者で。品質を下げたから値段が下げられるのかという問題もあるし、値段を下げるということが重要で、品質を下げるということよりも値段を下げるということが重要じゃないですか。ただ、往々にして、その品質周りのところをいじると値段が下がるというような話なので、そこはちょっとしっかり考えないといけないと思うんですけどね。まず、決定権者に現実を理解をさせるということが、たぶん、すごく重要なんじゃないかなと思うんですよね。
東:具体的に、その決定権者の人にどんなことを分かってもらったらいいのかというのは?
森辺:例えば、やっぱり、現地現場に行って見せるということがすごく重要だと思うんですよね。他人から何をどう言われても。
東:自分で見ていないものはなかなか。
森辺:見ていないものはなかなかスッと入らなくて。結局、「身内に言われるより、コンサルタントに言われたほうがうちの上司は話聞くんです」と言って、「来てください、ちょっと説明してください」みたいな、あるじゃないですか。たまにね。
東:はい。
森辺:だから、そういうのもそうなんでしょうけど、でも、それよりも、「一緒に見に行きましょう。これです。このことですよ、専務」みたいなね、そういう話をたぶんしないとなかなか難しいだろうなというのは思いますよね。
東:じゃあ、例えば、現場に一緒に行くことになりました。結構、海外だとそういう機会も多いと思うんですけれども、偉い人と回る機会。そうすると、どういうところをどう見せたらいいのかみたいなところもあると思うんですが、森辺さんなんかはいろいろ見られていると思うんですが、具体的にどういうポイントを見ていったらいいのかというのは?
森辺:例えば、僕は一番…、消費財だよね?
東:はい。
森辺:消費財で言うと、本当に中間層、要は、マジョリティの人たちがどんな生活をしているのかというところを実際に見ないと、消費者調査して、こう言っています、ああ言っていますって、もうバイアスかかりまくるわけですよね。そもそも調査に参加して謝礼をもらおうという人たちの答えって、もうバイアスがかかっているわけじゃないですか。僕も長年調査をやってきたけど、そのバイアスをどうかけないかということがすごく重要で。サンプリングの数よりも、実際にその生活者のお宅に突撃で行かないと、あらかじめ「行くよ」と言っていたら、きれいにされるわけですよね。
東:そうですね。(笑)
森辺:見栄はってよくするわけですよ。日本人だってそうでしょう? 「いや、今日来るんです、調査員が」と。そしたら、部屋きれいにしません?
東:そうですよね。
森辺:ちょっと見栄えのいいものを出してきておきますよね。それを見ると勘違いするので、もう僕は基本ふらっとしか行かないんですよ。だから、入れないケースもいっぱいあるんだけど。そこはすごく重要だと思うんですよね。いかにバイアスをかけないか。なので、アジア新興国のいわゆるベッドマーケットとか、TTとか、スラムとかって行くときって、基本、突撃ですもんね。なので、そんなところを見せるというのは非常に重要ですよね。意外に日本の企業って調査会社がおぜん立てしたシチュエーションに連れて行かれて、真実と少しこう…。
東:違うところを。
森辺:違う現場を見せられて、それを現場だと理解しているケースというのが僕は結構あると思っていて。それでも衝撃だから、「うわ、やっぱそうだね」ということはおっしゃるんだけど、「いやいや、実はもっとえぐいんですよ」というところを見せないと、金槌で頭をひっぱたかれるようなぐらいの衝撃を受けるじゃないですか。本当のリアルを見るとね。「こんなとこで、うちは何を売ろうとしていたんだろう。僕ってバカかな」って、その瞬間に初めて思うわけですよね。それを思わなかったら、「いや、うちはプレミアム!」みたいなことをずっと言うわけなので。そこはやっぱり考えないといけないですよね。もちろん、化粧品とかは別ですよ。日本でも3,000円の化粧品、化粧水、5,000円の化粧水売っているんだと。1万円のチョコレート売っているんだというメーカーは全く今の話は違うので、あくまでFMCG、消費財。
東:というところですよね。
森辺:ところはそうだと思います。
東:分かりました。じゃあ、お時間がきたので今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。