東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続き、品質についてなんですけども、例えば、そしたら、日本企業が一番分かりやすいと思うので、日本企業だと、どういったところがうまくやっているのかなというのは皆さん思うと思うんですが、ポッキーさんとか、サロンパスとか、海外でよく見る商品って、結構そういうことが、われわれはできているのかなと思うんですけど、その辺はどうですか?
森辺:いやー、ポッキーなんかめちゃめちゃ素晴らしいですよね。だって、あれだけのSKUをメインのMTの棚に並べて、日本のいわゆるスティック系チョコレート菓子ではもう圧倒的だし、基本的にクッキー系チョコレート菓子で言っても圧倒的だし、チョコレートで言っても圧倒的じゃない?あれだけのSKUで面獲って、しかもアジア新興国、中国も含めて、網羅的にやっているじゃない?江崎グリコさんは、この戦いがもう本当に欧米ローカル系・中国系とのシェア争いなんだというところに腹を決めていて。でも、ポッキー一本勝負でここの領域では絶対に獲るというのが、陳列から見てとれますよね。だから、ポッキーなんかはすごいと思う。ローカルになろうとしているというか。
東:そうですね。日本で売っているポッキーと、中国で、例えば、売っているポッキーと、食べるとちょっと違いますよね。
森辺:味違う。
東:価格も当然、違ったりしますもんね。
森辺:違って。僕、10代のときに、シンガポールに行ったときにもポッキーってあって、当時、クッキーの味が違ったんですよ。チョコレートの味も違ったんだけど、日本のポッキーで慣れていて、シンガポールに移ったときに、「なんだこれ、まずい」と言って、当時、コールドチェーンもそんなにあれだったのかね、ポッキー1本ずつなんだけど、買うと全部くっついているんだよね。
東:(笑)溶けちゃっているんですね。
森辺:溶けちゃってね。逆に、僕はそれのほうがいっぱい食べられたから、僕、ポッキー2~3本一気に食べる派なので、1本1本食べているとチマチマしちゃって駄目だから、2~3本つまんで食べるんだけど、全部塊になっているから、チョコが溶けてね。
東:ちょうどいい?(笑)
森辺:ちょうどいいというのだったんだけど。でも、クッキーがいやだなと。でも、それ、食べていたらどんどん慣れていって。味覚って慣れるんだと思って。味覚は慣れるから、今は別においしいですよね。
東:そうすると、手軽に買える価格で、それなりの品質を保つことが重要?
森辺:重要。これ、僕、1本、1箱1,000円2,000円のお菓子を売っていますと、贈答品ですと、うちのお菓子はロイヤルですと。パーティーに行くときにお客さんに持っていくお菓子なんですと言うんだったら、そんなことをする必要はないんですよ。ただ、FMCGでしょう?
東:はい。
森辺:言ったら、単価の安い、数十円、数百円とか、100円、150円のものを売るということは、いかにたくさんの人に、いかに早い頻度で、いかに繰り返し、永遠に買い続けてもらえるかということが勝負じゃないですか。そうなってくると、品質をよくして売り先を限定しちゃったり、値段を高くして販売できる消費者を限定しちゃったら、そんなの勝てるわけがないですよね。絶対にどこかの時代で淘汰されちゃっていて、本当は日本の菓子メーカーね、20年前にASEAN、中国でやっておくべきだったんです。中国の菓子メーカーやアジアの菓子メーカーが成長する前に。
東:そうですね。2000年代前半ぐらいですよね。
森辺:2000年代にね。もう、本当出遅れているなというのを、今ね、日々思っていて。そしたら、少子高齢化でお菓子がほとんど売れないような20年後の日本国内を想像してみてください。そんなちっちゃなマーケットで、今、衰退しつつある駄菓子屋みたいなことを大手の菓子メーカーが日本国内だけでやるなんて、もう絶対無理なので。こんなにいっぱい菓子メーカー要らなくなるわけです。
東:そうですね。
森辺:そうすると、やっぱりだいぶ出遅れちゃって、今から本当に急ピッチで上げていかないと、本当にやばいと思います。
東:なるほど。
森辺:だって、チョコレートのお菓子、どれだけプレミアムと言ったって、ベルギーのチョコレート菓子、どれだけプレミアムのチョコレートメーカーあるか知っています? そんなところに勝てるわけないじゃないですか。なので、そこは本当に力強く思います。
東:ちょっと、じゃあ、ポッキーの話に戻ると、ポッキーは中国とかタイとか、いろんな国で見ていると、日本でないような味を開発していたりするじゃないですか。そうすると、SKUを増やすということが1つ、彼たちの戦略の中にあって、SKUを増やして棚を獲るみたいなところが何となく棚から感じるところがあるんですけど。
森辺:めちゃめちゃ感じます!
東:その辺はどうなんですか。品質という面で見ると、ちょっと品質と外れるのかもしれないですが。
森辺:最低3、普通に5、多ければもっとみたいなのが、だいたいポッキーのSKUだと思うんですよね。プリッツまで入れちゃうと、たぶん相当。
東:20~30じゃきかないですね。
森辺:きかないですよね。そうすると、ポッキーはチョコとイチゴと抹茶だよね。
東:日本で見るのは。(笑)ちょっと、よく分からないですけど。日本であまり見ないですよね?コンビニ行っても定番のしか。
森辺:高級ポッキーとか。
東:そうですね。
森辺:アーモンド入りの、イチゴ何とかとか。
東:アーモンド入りとか、ああいうのに特化しているイメージがあるので。
森辺:プレミアムポッキーとか。だから、何て言ったらいいのかな、日本ってコンビニプレミアムが売れる市場なんですけど、アジアって、別にそんなお菓子でプレミアムと言うんだったら、別に洋風のお菓子屋さんに行くよという、両極端なので、何て言ったらいいのかな?
東:なかなかそこがプレミアムで勝負するのは難しいんですよね。
森辺:なんですよね。だから、そこはプレミアムのいいところは使ったらいいとは思うんだけれども、そこはさじ加減が非常に重要で。ポッキーのSKUの考え方は非常に面白くて。プリッツなんか中国なんか麻婆豆腐味とかね。この間、タイとか行ったらトムヤムクン味的なやつとかあって。
東:味、ありましたね。(笑)
森辺:もう、あんなのって調味料で何とでもなる世界でしょう、調味料パウダーでね。だから、本当に上手ですよね。旨みパウダーがいっぱいかかっているんだろうな。あれ、食べたらおいしいですもんね。
東:おいしいですね。
森辺:だから、SKUの増やし方は本当にうまいと思いますね。
東:分かりました。最後になりますけど、品質の考え方ですか、定義でちょっとまとめてもらえればと思うんですが。
森辺:日本人の品質基準で言えば、絶対物事を考えないということが非常に重要で、特に日用品は。なぜならば、日本でプレミアムな人たちに対してプレミアムなものを売っているメーカーなんだったら、海外でも同じようにそうしたらいいと。日本で中間層に売っているのに、なんで海外に行って、いきなりプレミアムなんだって。それ、海外の人の所得が少ないから言っているだけでしょう?と言うだけなので、それはもう、辞めないといけないと。そうしたときに、一つ、じゃあ、どういう基準に日本の商品の品質を合わせたらいいんだと考えたときには、やっぱりローカルレベルに合わせるということが絶対重要で。ローカル、ないしはメジャーの先進的なグローバル企業がどういう品質基準にしていて、どういう価格設定にしているか。価格ありきなので、ぶっちゃけ、ローカルの価格に合わせられるんだったら、そこまで品質を落とすという話で。落とさなくても価格が落ちるんだったら、別に品質を落とさなくていいというのが僕の考えなんですけどもね。なので、ベンチマークをしっかり持つということが重要だと思います。
東:分かりました。森辺さん、4回にわたりありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。