東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:森辺さん、ヤフーの河合さんを迎えて最後の回になるのですけれども、最後はどういった話題でいきましょうか。
森辺:河合さん、最後は御社が掲げられている「爆速」と。大変インパクトの強い言葉なのですが、これについて教えていただきたく、お願い致します。
河合:お願いします。
森辺:そもそも「爆速」はこれ何なのですか?爆発の爆に速いと書いて「爆速」ということ。
河合:何なのですかねとよく言われる。
森辺:またロゴもかなりコミカルなというか。
河合:出た当初から今に至るまでダサいダサいと言われ続けて、実は。社内からもですね。対応される端末にステッカーが貼られているのですけれども、格好悪いから見せたくないとか言っている社員も中にはいるぐらいでして。
森辺:僕、空港でパソコンの裏側にこの「爆速」のシールが貼ってある人がラウンジでカチャカチャパソコンを叩いているのを見たことがある気がすごくする。
河合:弊社社員か、ステッカーを配っているのでそれをお貼りいただいている方ですね。
森辺:一体これは、社内で掲げているという、2013年頃ですかね。
河合:12年ぐらいです。
森辺:12年ですかね。宮坂さんが社長に就任されたあとぐらいから掲げられている言葉だと思うのですけど、これは一体どういうことなのですか?
河合:まずはこれイメージが大きくて、まさに爆発的に速い。とにかく速い、ひたすら速いと。正直なところ、宮坂含めそのぐらいしか言っていないのです。定義としては。逆にただ、「爆速」というその言葉のイメージからしても、とにかく速く、速く。「爆速」でと言うと速くなければいけないという。言葉の意味はよくわからないが、とにかく速い。速くなければ行けないのだというところはとても社内に浸透していて、そういう意味である意味言霊なのです。「爆速」というのは。メソッドとかではなくて、メンタル的な。言霊に近いと思います。
森辺:これは海外事業でもスピードが日本企業は遅くて、アジアの企業に限らず欧米を含めて「もういいよ。」と言われるケースが非常に多いのですけど。このとにかくスピードというのが非常に重要で、結構世界的なコンサルティング戦略系の、コンサルティングファームでもクイックということをすごく言われていて、クイックアンドダーティーと言って、汚くてもよいから速くやるという。とにかく速くという。このクイックが一般の人の常識だと1週間ぐらいをクイックと言うのですけど、クイックイコール今みたいな。そういう本当に「爆速」に近いスピードを求められる会社は結構あって、そういう会社は伸びているのです。リーンスタートアップの話と一緒で、可視化バカになる必要はないと。ポイントを判断して、可視化すべきところ、すべきではないところ。それで仮説、検証をとにかく速くまわして、たくさんまわして確率を上げていくみたいな。スピードがそもそも遅いと確率が上がらなくて、以前お話いただいた打数のお話と多分すごくリンクしてくるのだと思うのですけど、結局バッターボックスに立つ数が少なかったらどう考えたって1割以上伸びないじゃんという。そういうイメージなのですかね。
河合:そうですね。本当にリーンの考え方とまさにシンクロしていて、どれだけの仮説のサイクルをまわせるかというところで、プロダクトがあって、仮説をまわしてというところを速く繰り返せば繰り返すほど良いのですが、やはり動きだしの速さなのです。よく「なるはや」でと言われるのですけど、「なるはや」は「爆速」ではないのです。どちらかというと、「なるはや」で出して、放り投げて以上みたいなことになっていると、それは結局さっきの打数の話しで言うと、フィードバックの回数がまわせていないという形で。一定期間内にどれだけフィードバックのサイクルをまわせるかというところの「爆速」で。みなさまたちが別の言い方で表現しているところだと、2倍失敗して2倍リカバーするということを言いますね。まさに考え方としては仮説にして検証の結果で、また次のことをやると。そういう言い方をしている。それが今年から10倍になったらしいので。だから「爆速」が伸びると。
森辺:2014年はかける10倍となっているわけですものね。「爆速」かける10倍なわけですか。
河合:そういうことですね。
森辺:すごいですね、それは。「超爆速」みたいな感じですね。
河合:そのリーンスタートアップのそもそも速く動かなければ、速くまわすということ自体がリーンスタートアップとほぼイコールなので、「爆速」はその意味でリーンスタートアップとイコールなのですけど、冒頭で申し上げた言霊的な意味だとなかなかリーンスタートアップという概念を学んでも、座学で学んでもなかなか実践が出来ないわけなのです。よくあるのが、笑い話みたいな話しなのですが、これはリーンスタートアップというやり方なのかというのをじっくり考えるみたいなことで。僕らみたいなこともあるわけなのです。リーンスタートアップをやっていいかどうか許可を取るとか。判断を仰ぐとか。「爆速」というのがはっきり定義されずに社内で、でもとにかく「爆速」なのだと言っているところの効果としては、とにかく速くなければいけないことはみんな分かってきていると。そういう意味で、速く動かなければいけないというところの、そういう判断の基礎体力をとてもつけるという意味で、そこの意味でエッジが大きいですね。こうあらなければいけないと。実際にそれをうまくまわすには自分たちでグレードアップしていかないといけないのですけど。こうあるべきだというトップダウンのビジョン、あるべき姿の「爆速」がきて、実際にそれをボトムからリーンスタートアップとして実践していく。その手法としての速くよくまわすという「爆速」があって、このトップダウンとボトムアップの両面が「爆速」という意味が含まれていると。どちらかだけでもやはり語りになってしまうのです。
森辺:上と下かということですね。
河合:「爆速」をやれといったところでは、全然さっきの「なるはや」みたいになってしまって、あちこちバラバラに飛んで行くだけの速いになってしまうのですけど、そこでリーンスタートアップといったボトムからのしっかりした手法と合わせてやることで、はじめて全員が同じ方向へ。魚群のようにザッと動くような形ができると。これが逆にリーンスタートアップという座学の考え方だけであっても、なかなかさっきのように速く実際に動けない。それを一言でなかなかうまく表現したなと、偉そうな批評をすると。
森辺:業界や企業によってスピード、何でもいいのですけど、事業のスピードもそうですけど、全てにおいての社内のスピードは全然違うのですよね。いろいろな規模のいろいろな業種のお客さんのところに行ってお仕事をしていると。全然スピード感が違ったりするので、ゆっくりやっていてもまだ大丈夫な業界とかあるではないですか。比較的業界全体がゆっくりな業界とか。そういう業界に属している企業さんはものすごくスローで、結構のんびり進むというイメージがあるのですけど、特にヤフーさんのような変化の激しいところの「爆速」くらいの強烈なキーワードを打ち出して行かないとなかなかこの時代のスピードについていくというか、その先を走っているわけではないですか。そうすると他がそれについてこないといけないわけで、追い付かれてしまうというそういうイメージなのです。
河合:そうです。そして、さっきの、大企業の話になるとやはりいくらインターネット、若いときでも、大きい組織が動くというのは難しいではないですか。そういう意味では、おっしゃられたようにすごく強い言葉としての「爆速」というメッセージが体勢変更の、そのタイミングでバッと降りてきて社員の意識を180度変える。そういう役にとても立ちましたね。
森辺:さっき言っていたこのトップダウンとミドルアップ。ボトムアップか。ボトムミドルアップのお話なのですけど、多分会社でこれ「爆速で」という「爆速」という言葉は普通に出ているわけじゃないですか。でもこれトップダウンで「爆速」を変えなかったら、人に「爆速」でやってとか言われたらドキッとされる。
河合:何のこっちゃってなりますよね。
森辺:分からないでしょうけれども。これがこうトップからバーンと出されて定着していくという意識が社員全員に浸透していって、俺たちヤフーの社員は「爆走」で進まないといけないのだということが標準化している世界というのは強いですよね。
河合:強いですね。それをしかも外向けにたくさん打ち出したではないですか。散々。なので、他社様からも「爆速」なのですよねと言われることで、外堀が埋まるのです。
東:社員教育ですよね。
河合:そうです。その意味では伝達されやすいこういう強い、短いメッセージという意味としても非常に有効に機能しているだろうなと。
森辺:提案してくれ、見積もりしてくれ、1週間くださいとか許されないわけですよね。「爆速」でと。お客さんに逆に言われてしまうということですものね。
河合:言われてしまいますね。
森辺:それは面白いですね。今後のヤフーの方向性としては、2014年は「爆速」×10倍ということで。
河合:ビックリなサービスを10倍でと。
森辺:CMO室からは何かビックリなあれは、お話できる物とできないものがあると思うのですけど。
河合:もちろんいろいろ取り組みはかけていきますが、最初の定義にあった通り、成功するかしないかはやってみないと分からないので、そういう意味で10倍を何かしら公言するとしたら、すくなくとも10倍のアウトプットをまずは出したいなというのはあります。そうしていくことで、打率が1割だったら、何本か出るだろうと。なかなかやはりこう言っていても、実践していくことがなかなか困難で、その間していなかったのですが、その辺をどんどんやっていこうかなと。その辺はただ数学的な話しになってくるのですよね。打率がだいたい変わらないので。やるべきことは分かっているので、あとはそれをどう実際に行えるか。数字がもうここまで出来てきたので、まさに今からどんどん出していくフェーズになっているなと思っています。
森辺:海外展開でも「爆速」というのは非常に学んでいくべきことなのだろうなということがすごく思って、調査して、結果でてみて悩んで。ジャッジするのに半年かかって、1年かかって、さあやろうと思ったときに市場が変わっているということは大いにしてあるので。グローバル展開も「爆速」で進んで行かないとこれからさらに成長が著しい新興国の方と、なかなか難しいでしょうね。
河合:そこでさっきの「爆速」とか「なるはや」とか。検証されていないところにとにかく全力でいくみたいなところに、やはりある意味容易に転換されてしまうのも事実なのです。なので、やはりリーンの考え方と両輪でまわしていくことで、広めて行くことでとても有効にビジョンとしての「爆速」とやり方と、それを有効に形にするためのリーンという。やはりその両輪があってこそになるのかなと。「爆速」以前からいろいろ取り組んでいたわけですけど、やはり広めるのにとても時間がかかる、理解してもらうのに時間がかかると。そこの補填として「爆速」というビジョンがとても有効に来ましたと。
森辺:日本人だから特に思うのですけど、なるべく早く、略して「なるはや」ではないですか。こんな言葉は英語では無いですよね。「As soon as possible」 という言葉はあるのですけど、これは「今すぐやってくれ」という話しで、直訳すると「可能な限り早くやれ」ということで「なるはや」と思われがちなのですけど、これはすぐやれという話しなので、ASAPと書かれたらすぐという印象なのですけど。「なるはや」はやはり日本人の良い所なのかもしれないですけど、相手のことをちょっと考えつつも速くやってほしいからなるべく早く。どっちやねんという感じなのですけど。やはりそういう、私そういうの大好きなのです。日本人の良い所。けど世界の常識ではないので、やはり「爆走」くらいの強いインパクトのある言葉で「なるはや」を蹴散らして行かないと多分変われないという判断で、強烈なインパクトをつけたのかもしれないですね。なるほど。分かりました。4回につづき、非常に貴重なお話をいただきましてありがとうございます。何か最後にリスナーの皆さんにメッセージがもしあれば、どうでしょうか。
河合:2014年、Yahoo!JAPANの新体制の3年目ですかね。今後もさらに速度を上げてどんどん変化して行くと思いますので、みなさま2014年のYahoo!JAPANにもぜひご注目いただければと。引き続きよろしくお願い致します。
森辺:河合さん、どうもありがとうございました。
河合:ありがとうございました。