小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林真彩です。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林:森辺さん、本日のPodcastですが、リスナーの皆さまからいただいた質問に対し、お答えしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
森辺:お願いします。
小林:早速、質問にまいります。B2Bの製造業の方からのご質問でございます。「数年前にベトナムに進出しましたが、あまり状況がうまくいっておりません。また、数年前はこの番組の存在も知らず、森辺さんが番組を通じておっしゃっている戦略や販売チャネルの重要性を全く意識しないまま進出してしまいました。現地で弊社の製品の販売を試みているのですが、なかなか売れません。一方で、今回は社長の肝入りで進出をしたので、会社としては撤退の雰囲気も今のところありません。また、弊社は多少中国でビジネスをしているものの、そんなに海外ビジネスに長けている会社ではないので、どうすればうまくいくという答えもありません。このような状況で苦しんでいるのですが、どうしたらよろしいでしょうか。これだけの情報ですとなかなか答えにくいと思いますが、何かしらアドバイスをいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします」というご質問でございます。
森辺:なるほどね。B2Bの。
小林:製造業の方からの。
森辺:製造業さんの中堅メーカーさんだね。中国に。
小林:多少…。
森辺:多少やっていると言うけど、あと、ベトナムだもんね。
小林:でも、なかなかうまくいかない。
森辺:どうすればいいかということ?
小林:そうですね。(笑)
森辺:どうすればいいかというのは、僕は、ちょっとお会いしてもう少しお話を聞いてみないと、なかなか明確な答えを申し上げられないんだけども。お会いして詳しいことをお聞きしていない、今いただいた情報の中だけで言うと、客観的に見たら、とにかく1日も早く撤退したほうがいいというのが、僕の結論で。理由は、中国で少しビジネスをしているぐらいで、なぜベトナムに出てしまったのかという。仮にも今、問題を抱えていてうまくいっていなくて、悩まれてここに連絡をしてきているわけですよね。
小林:そうですね。
森辺:その中で、これを巻き返すって、いや、社長が「いいんです。内部留保をバンバン吐き出してでも、あと5年10年かけてでもベトナム事業を成功させるんです」という気概でやっているのであれば、もちろんやったらいいと思うんですけど、おそらくそんな感じでもないんじゃないかなと思っていて。こういうお悩みのあれはよくある話なんですよ。社長の肝入りで行きましたと。ベトナムにたまたま何かいて、パートナーがいてとかで始めるんですけど、実際に蓋を開けてみたらなかなかうまくいかないけど、社長の肝入りで始まったので、なかなか撤退の雰囲気がないという。なので、結局、失敗するので、もう。であれば、早く決断をして、そのマイナスを減らすほうが僕は圧倒的にいいだろうなと。そして、経営資源をしっかり整えてから、もう1回再参入戦略をする。別に撤退することはカッコ悪いことでもないし、間違ったことでもなくて。むしろ、今、「何の戦略もないまま出ていっちゃった」と書いてあったでしょう?
小林:はい。
森辺:要は、この番組でおっしゃっている?
小林:森辺さんがおっしゃっている戦略ですとか。
森辺:うん。販売チャネルの重要性を全く意識しないまま出たと。要は、戦略なき進出をしましたと、社長の肝入りでね。仮にも中堅のB2Bのメーカーで、中国でちょろっとビジネスをしているぐらいで、海外ビジネスというのはほとんどやったことがない。その中でベトナムに法人をつくっちゃったんだけども、なかなか売上が上がらなくて、現地法人の固定費が捻出できないということなんだと思うんだよね。書いてあることから想像するに。これ、ベトナムの難易度って非常に高くて、ASEANって3つに分けると、SMTとVIPとメコン経済圏に分かれるんだけども、CMLとかというふうにも言うけど。SMTだから、シンガポール、マレーシア、タイ、先進的なASEANでしょう。あと、新興ASEANがVIP、ベトナム、インドネシア、フィリピン。後進ASEANがメコン経済圏であるミャンマーとラオスとカンボジアで。ミャンマー、ラオス、カンボジアはちょっと置いておいて、難しい順番に言うと、ミャンマー、ラオス、カンボジアのグループ、次に難しいのがVIP。VIPの中でも、僕はベトナムが最も大変だと思っていて、ホーチミンとメトロ・マニラとジャカルタを比べたら分かるんだよね。
小林:どうしてですか?
森辺:僕、空港を降りたって、パッと街をうわーっと車で、バイクでもいいけど一周したら、ホーチミンが最も遅れているんですよ、その3都市でね。そう考えたときに、そのベトナムでマーケットの5割がホーチミンですから、3割がハノイで、1割がダナンで、その他で1割みたいな、だいたい大枠で言うと、インダストリーによってももちろん違うんだけども。そうしたときに、それだけまだ成熟していない市場ということは、どういうことかと言うと、B2Bだからユーザー企業じゃないですか。ユーザー企業の財布の紐が堅いということなんです。だって、成熟していないんだもん。お金があれば、財布の紐が緩むでしょう。そうすると、それだけシビアですと。そうすると、中堅・中小企業のつくる商品って絶対に安いことないんです。なんでかと言ったら、商品って原材料の価格に自分たちの技術力を掛けて金額が決まるわけでしょう、商品って。そうすると、中堅・中小企業というのは売上が低い。ということは、つまり、原材料調達も少ないということだから。そうすると、例えば、分からないけど、グラムあたりの原材料の仕入れ単価が絶対に大企業に比べたら高いわけです。だって、それこそ大企業のほうがたくさん売るから。そうすると、当然、大企業はたくさん売る、商品をつくる、材料の仕入れは安くなるという話だよね。中小企業というのはそれが高くなるという話だから。だから、別に中小企業でも、利益を削って安くするというのはできたとしても、大量生産になっていないから、そういう意味での。そう考えたときに、まあまあそこそこいい値段するものを、財布の紐がきつい、堅いベトナムの市場の企業に売り込むって、たぶん、至難の業で。もちろん、日系企業から始めるということで、たぶん出られているんじゃないかなという気はするので、日系の工業区なんかを狙って行っているんだけど、それだけじゃ当然ベトナムの日系企業の進出数とかを見てもらったら分かると思うんだけど、なかなか法人のオーバーヘッドは出せない。例えば、単価次第だと思うんだよね。1社から何千万も年間取れるんだったら、たぶん十分だと思うんだけど、何百万でもいいと思うんだけど。それが1社から数十万とか数万円とかだったら、たぶんもう、まず現法のオーバーヘッドは出ないよね。なので、ローカルメーカーにターゲットを合わせていく、日系やって、外資やって、ローカルやってということになってくるんだと思うんだけど。でも、そういうところにもなかなか売ることができないんだと思うんだよね。それを売るための販売チャネルをつくっていかないといけない。ただ、基本的にそのノウハウがないわけでしょう。それを自前でつくることができないのに、われわれみたいな会社を使って代わりにやらせて、そのノウハウを吸収していつかは自分たちでできるようになっていくというのが一番素晴らしい姿なんだけど、たぶん、そういうフィーを払うのもたぶんしんどいと思うんだよね、今、赤字だとね。なので、分からないけど、社長さんが「しばらく赤字でも踏ん張ってやるんだ」と言うんだったらやったらいいと思うんだけど、なぜ先にベトナムに出たのかということで、もう絶対的に中国なんです。だって、あれだけ広くて都市があれだけたくさんあって、今、中国の企業のほうが本当にお金っ払いがよくて。そうすると、中国で儲けたお金でどうやってASEANに投資するかとか、ASEANで投資、中国で儲けてASEANで儲けたお金をどうやってインドに投資するか、どうやってアフリカに投資するかということを考えていかないといけないので、そういうもう少し長期な目で見たら、今、潔く負けておくことは、将来、この会社が多勝ちするために、僕は必要なんじゃないかなというのを何となく思っていて。でも、きっとやめないと思うの。それで、2~3年後に撤退しましたと。森辺さんがあの番組で、2019年の…、2020年、これ、放送?
小林:20年ですね。
森辺:「20年の何月に言ってたときにやめていたら、これぐらいマイナスが減っていました…」とかという話になるんだと思うんだけど。
小林:(笑)じゃあ、ちょっと…。
森辺:何か、冷たく言っているけど、決してそういう意味じゃないんですよ。匿名希望だね。そういう意味じゃないんです。ただ、そうだと思うので。だって、今、逆にそこから這いずり出る策もないという中で、こうしている間も日々お金は流れていって出ていっているわけで、出血はしているわけで。そうすると、僕は、早く決断をして、1回抜いた刀をおさめて、この戦は負けましょうと。そして、次の戦で絶対勝つために。
小林:何を準備するかということですね。
森辺:するかということを、やっぱり考えるいうことは重要じゃないかなと思いますけど。冷たい?かな…。冷たいかな。いや、だって、こんなの、「いや、頑張りましょうよ」とかって言うほうが無責任だよね。
小林:(笑)そうですね。
森辺:だって、僕、そんな会社いっぱい見てきているもん。でも、こういうのって本当にスパーンと撤退したほうが身が楽ですよ。出血しているときに、出血を止められたら、もうマイナスの発想しかない頭が、出血止まった瞬間にプラスになるので。
小林:なるほど。
森辺:まず止血!
小林:はい。
森辺:出血しながらオペはできません。
小林:(笑)
森辺:以上です。
小林:かしこまりました。ありがとうございます。
森辺:ありがとうございます。
小林:本日は、Podcastをここまでにいたします。リスナーの皆さま、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。