東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続き、前回、人事異動の話もありましたけど、「オーナー企業だとずっと海外担当にするみたいな決断がやりやすい」とおっしゃったんですけど、その辺はどういうことかというのをもうちょっと。
森辺:言ったら、自分事ですからね、オーナー企業の場合はね。もう自分の会社の経営資源、しかも限られた経営資源で、オーナー企業ということは比較的規模が小さめじゃない?大きくなればなるほど、たぶんオーナーの力というのは組織から離れていくわけだから。もちろん一部の例外はあってもね。そうすると、オーナー一族がいる=非上場=ある程度自分のリーダーシップで事業経営ができる。そうすると、華僑はもう完全にオーナー企業でしょう。そうすると、そこのウマが合う+一度海外を担当させた、中国を担当させた人間を、じゃあ、アメリカ担当させるってもうあり得ないでしょう。だって、社員教育をするって一時期流行ったけど、会社ってお金払って社員を教育する場じゃないし、昔みたいに終身雇用が保証されていればね、それは雇用、基本、社員は辞めないというものだから、教育をしたらいいけど、社員は今辞めるということが前提でしょう。そうすると、そんな教育したって意味ないから、当然替えないよね。中国のスペシャリストになっていくわけで、世界を見てなんていうことにはならないので。なので、やっぱり、オーナー企業というのは、自分事なので必然的にそうなるというのは、じゃないかなと思うんだけどね。
東:なるほど。そうすると、オーナー企業のほうが決断は当然しやすいですよね。
森辺:うんうん。決断も早いし、決断もしやすいし。あと、グローバル化には、僕は向いていると思うよね、オーナー企業のほうがね。特に、大企業でオーナー系じゃない会社さんは人事異動を3年~4年で海外の担当者が替わります。次の担当者来ます。そうすると、僕らは何年か越しで一緒に改革をしようとしているわけでしょう?過去20年30年やっているような市場で、なかなか売上がこう、成長が鈍化してきた中で、再参入戦略つくって再参入をするわけじゃない?
東:はい。
森辺:再参入というか、もう今、出ているんだけども。
東:再構築みたいな。
森辺:再構築をね、戦略の再構築をして、それを実行していく。その道半ばで担当者が辞めていく。それで、これはサラリーマンだからしょうがないんだけど、自分が人事命令で担当が替わったら、今までどれだけ注いでいた愛情も、その辞令とともに一瞬で消えるでしょう?
東:はいはい。
森辺:「うわー、一緒にやります。頑張ります!」と言っている者がね、辞令ですと、中国担当から、はい次、インドネシアと。「東さん、辞令が出て4月からインドネシア担当になりました。次はこのA君なので、よろしくお願いします」「えーっ」という話だから。それはしょうがないよね。でも、それってもったいないなと思うよね。
東:ただ、そういう企業さんも多いじゃないですか、実際にグローバル化している企業の中でも。そうすると、相手側のディストリビューター側の気持ちとしたら、何でしょう、どうしてほしい、それが起きることが前提だと思うんですよね。
森辺:うん。ディストリビューター側の気持ちとしては、最初、一緒にいろいろやっていこうと思っているわけで、一緒にやっているわけじゃないですか。
東:そうですね。
森辺:なんだけど、それが道半ばでころころ替わるわけだから、当然、トーンダウンをしていって、それが1回2回3回4回って繰り返されていくと、トーンダウンというよりか、トーンがもう底辺にたどり着いちゃって。そうなってくると、また新しい新人を送り込んで来るんだろうと。また、次の訳分かんない、何も分かっていないのが来るだろうと。そしたら、いいようにしてやれという話になって、いいようにされちゃっているというケースが多いよね。そのいいようにされちゃっているということも本人気付いていないみたいなね。だから、自分はしっかり引き継げて関係もしっかり築けているみたいなね、そういうケースというのは非常に多いので、やっぱり、もったいないですよね。
東:そうですよね。大企業になればなるほど、出張に行けるケースもそんなに毎月毎月行っている方のほうが少ないじゃないですか、当然。
森辺:まあね、昔に比べたらね。
東:そうですね。そんな中で1週間ぐらいしか行かないと思うので、ディストリビューター側からすると、見せたいとこだけ。
森辺:見せて。
東:見せるみたいな感じになっちゃうんですかね。
森辺:そうね。見せたいところだけ、見せたい客だけ見せて、見せたくないところは見せないと。で、見せられるところだけ見せられて、「うわー、すごいね。頑張っているね。ありがとうね。よろしくね」と。「数字がうまくいかないのは、こういう問題があるからなんだね。なるほどね。分かったよ」という話に何となくなって、なかなか改革が進まないし。あと、実態を分かっていないから決断ができないですよね。
東:なるほど。
森辺:大きく、これはバッサリ切って決断をしなきゃいけないというところに踏み込めない。だって、実態見えてないからね。しかも、引継ぎされて、普通、何をやるにも自分が新しいところを引き継いで、いきなり担当は着任して問題を把握して何かバサッと変えようっていうことはしないじゃない。まず1年間様子見るでしょう?
東:そうですね。なかなかできにくいですよね、それは。
森辺:そうだよね。最初の1年、様子を見ますと、2年目で、うーん、どうしようかなと、3年目で、やっぱりこれは変えたほうがいいなって気付いて、はい、4年目で担当替わりますと。そしたら、また1年は様子見ます、2年目、ん?これはどうやら問題がありそうだな、3年目でいろいろ改革したほうがいいな、はい、4年目で担当替わりますの繰り返しだから、本当に日本のグローバル化は日本のその担当替えというか人事異動がすごく足を引っ張っていて。なおかつ、外部を使う傾向が少ないじゃない?何でも自前で抱え込もうとするでしょう、日本の会社ってね。
東:そうですね。
森辺:生産もそうだし、開発もそうだし、営業もそうだし、海外事業もそうだし、自分たちが専門でない海外事業を自分たちだけで抱え込むって、これ、ものづくりもオープン・イノベーションだと言われてもう時間、結構経つけど、そう言われているのに、海外事業こそね、オープン・チャネル・イノベーションで、外の外部の力を借りて中にノウハウ貯めないと、そんなのわれわれの従業員なんて、みんな幼稚園、小学校、中学校ぐらいから海外で、アジアで育っているような連中がここで働いているのに、そんな何か会社勤めして、30代から海外担当になりましたというのとはもう全く土台が違うわけで、それはなかなか僕は厳しいと思いますよ。
東:なるほど。
森辺:なんか偉そうなことを言って、すみません。
東:(笑)分かりました。そうすると、問題が見えていないのでなかなか、よくわれわれは、ディストリビューターの管理育成という言葉を使いますけど、管理がなかなかできにくい状態にあるということなんですね。
森辺:うん。管理ができにくい状態にあるし。管理はそもそもできないよね。だって、現地法人があっても、甘いわけだよ。出張ベースでやっているような次元の国だったらもっと見えないよね。現地法人があったって、駐在員が着任して最初の1年は様子見ですよ。2~3年目でいろんな問題に気付きだし、3~4年目で。4~5年目でいろいろ改革していこうかなで、はい、帰任ということの繰り返しだから、それは何もできないですよね。それをひたすら繰り返しているだけというね。
東:なるほど。分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。