東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:前回、何でしたっけ、カルロス・ゴーンさんの言葉が気になったということで、前回聞いてない方もいらっしゃると思うので、もう1回お願いしたいんですが。
森辺:カルロス・ゴーンさんがブラジルの有力紙の取材で、自身の逃亡が成功した要因について、「日本人はのろまで、準備と計画と理解にたくさんの時間をかける必要がある」というふうに述べたって、出ていたんですよ。
東:その言葉にちょっと引っ掛かっちゃったということですね。
森辺:引っ掛かっちゃったというね。僕はカルロス・ゴーンの事件について、ここで何か世間で評論家がいろいろ言っていますけど、そんなことを言うつもりは全くなくて、善とか悪とかも全く興味なくて、カルロス・ゴーンさんにも興味がないし、日産自動車にも興味がないんだけども。ゴーンさんが言ったこの言葉にすごく興味があって、確かになと。日本人というのは決めない。のろまって確かに嫌な言葉だけど、世界から速いか遅いかって言われたら遅いと思われているよね。途中でやり取りがとん挫するなんていうのはしょっちゅうだし。準備と計画と理解にたくさんの時間をかける、準備だけして、計画だけつくって、Actionが伴わないなんていうことはいっぱいあるし、われわれのクライアントでも8割ぐらいのプロジェクトは5年前の状態からほとんど進化していなかったりとか、というのは結構ある。だから、問題意識はあるし、課題が何なのかというのも認識して、では、それを解決するための方法も分かったと。でも、その後のActionがなかなか進まないというのは、日本人の慎重な性格、ここなので。この慎重な性格が功を奏して高い技術力や高い品質を維持し続けてきたというのが今までの時代だったと思うんだけども、これからの時代はなかなかちょっと厳しいなというのがそうで。ゴーンさんの、彼が20年日本で住んで、日本人と接して、その中で感じた日本人のネガティブな部分ということで言ったんだと思うんだけども、一理あるよなと思ってしまったという、そっちのほうが気になったというのが…。そうね。
東:なるほど。逆に、裏を返せば、そういういいところもある、そういうところがいいところでもある。
森辺:そうなんだよね。
東:ということであるけども、かたやグローバルの話になると、そこがボトルネックになってくる要素であるということを言いたいということですよね。
森辺:そうね。やっぱり外国の企業とかって、準備とか計画にそんなに時間かけないじゃない?えええ?そんなので大丈夫なの?みたいなのでバーンと行くでしょう。それで何とかやるじゃない?だから、何と言ったらいいのかな…。
東:でも、時間はかけないけども、内容はしっかりやるということは、ゴーンさんが言いたかったのは、準備をもっと緻密にやるべきだみたいな話なんですかね。どういう捉え方なんですかね?
森辺:いや、準備と計画と理解にたくさんの時間をかける必要があると言っている、彼の言っていることはもっとグローバルスタンダードから言ったら、準備と計画と理解にそんなに時間をかける必要はないと言っているわけだよね。準備なんていうのは、言ったら準備じゃない?
東:そうですね。
森辺:いつまで準備しているんですか?というぐらい緻密に。
東:時間がかかりすぎるということですよね。
森辺:うん。要は、絶対に失敗しないように準備をして、絶対に失敗しないように計画をして、絶対に失敗しないようにすべてを理解しようとするから、当然、時間がかかると。絶対に失敗したくないのでActionが伴わない。これが日本人だと言っているんだと僕は理解していて。でも、その通りな気がしていて。失敗なんていいんですよと。準備と計画、理解、そんなの分かりゃあいいんですよと。それ以上、そこに時間をかけたら当然Actionができなくなって、Actionしないと前には進まないじゃない?いくら準備したって、計画したって、理解したって、Actionしなければ1歩も前には進みませんと。Actionしなければ成功もないし失敗もないわけだよね。成功もなくて失敗もなかったら何も学ばないから進化しないということなので、企業や人が成長するというのは絶対Actionが伴わなかったら、その前段でやった準備や計画や理解というのは、僕は無だと思っていて。Actionしたら初めてそれが役に立つと。だから、何て言うのかな、日本人がもっと準備せずに、計画せずに、理解せずにやればいいんじゃないかなと思っていて。そこをやっぱりもっと変えていかないと、もっと適当になる必要があって。外国の人と仕事をしていたら、こいつは適当だなと思うんだけど、その適当でいいんですよね。その適当さが必要で。でも、適当じゃないところはすごい適当じゃないわけで、何かそこのね…。
東:そこのメリハリが。
森辺:メリハリなんですよね。
東:あるということですよね。
森辺:うん。日本人は、1が駄目なら2も駄目だし3も駄目だし4も5も6も7も8も9も10も全部駄目というのが日本人の考え方なんだけど。別にアメリカとかへ行くと、1、2駄目でも3、4、5がよくて、6駄目で7、8、9、10いいみたいな、これは全然ありだから、そういうことにも通じているんだと思うんだよね。何て言ったらいいのかな。
東:そうすると、1~10までを平均的に日本の人は力をかけてやるけども、本当に力をかけなきゃいけないところはどこかというのはきちんと絞ってやることもできるという、やり方の、たぶん、考え方の、たぶん違いなんでしょうけど、そういうところが日本人のいいところでもあるし、グローバルに出ちゃうとそこでスピードが遅くなるみたいなこともあり得るということですよね。
森辺:うん。そう。でね、ちょっと誤解を恐れずに言うと、僕、日本の学校にも行ったけど、アメリカンスクールにも行ってたでしょう。そのときに、日本の学校って部活動というのがあるじゃない?
東:ありますね。
森辺:例えば、野球とかテニスとかサッカーとかいろいろあって、好きでやっているからいいんだけども、別にプロ野球選手になるわけじゃないのに死ぬほど野球させられるでしょう、部活でね。甲子園に出れるのは一握りと。その中でプロになれるのはさらに一握りと。死ぬほど野球させられて、当人たちはそれが青春だと思っているからそれはそれでいいんだけど、否定しないよ、全然否定しないんだけど。、死ぬほど野球しますと。その中でプロになるのは0.1%なのか、0.01%の人たちがプロになって、その他は、逆に捉えると、その野球を死ぬほどやったこと、やらされたことで多くの時間を犠牲にしているので、結構、人生の選択肢が限られていくという。一方で、アメリカンスクールももちろん野球部ってあるんだけども、プロになりたい人、それ以外の人って明確に分かれていて、別に野球をやるときはそんなにめちゃくちゃやらないんだよね。例えば、12カ月のうちの4カ月野球やるとか、別にもっとライトにやるみたいな。
東:掛け持ち…。
森辺:掛け持ち部活という。
東:サッカーやっていても野球やっていたりする人もいますよね。
森辺:両方やりたいでしょう。だから、シーズンに、1月~3月は野球、4月~6月はサッカーとかってなっていて、スポーツを楽しむという、その本来の部活の意義ってそこで、プロにならないのにそんなにむちゃくちゃ野球やらせてどうするの?という、そういう考え方で。一方で、プロになりたい人というのは、学校外でプロになるための本当のプロフェッショナルスクールに行くというふうになっていて、そこのメリハリがそうなのね。日本の学校って、分かんない、僕の時代はそうだったんだけど、部活に絶対入りますみたいな、全員。入ったらむちゃくちゃやりますみたいな。朝5時に起きて6時に学校行って朝練して、そこから授業をやって、夜遅く8時7時ぐらいまでまた夕練するみたいなね。そういう、よくよく考えるとこれって意味なくない?という、何しているの、おれたちは?と。これを青春だというふうに思い込まされちゃって育ってきたんだけど、僕の年代なんかはね。だから、そういうロジカルじゃないことをしないよね、アメリカはね。
東:そういう文化もやっぱり背景にあるということですよね?
森辺:ある。うんうん。あと、警察官が、警察の制服を着たままマクドナルドでご飯食べていたりとか、吉野家でご飯食べているの、日本で1回も見たことがないでしょう?
東:はい。
森辺:だけど、警察だってお腹空くよね。でも、コンビニで弁当買っている警察すら、僕は見たことがなくて。もしかしたら、買っているのかもしれないけど。けど、アメリカへ行くと、別に警官が普通にファストフード店で飯食っていたり、車の中で何か食っていたり、全然あって。警官が制服を着たまま何かを食うということは、日本の中では違法じゃないけど、許されない常識なんだよね。なんだけど、世界ではオッケーじゃない?だから、そういうのもあれだし。うーん、何か…あるよね、そういうのがね。あと、アジアへ行くと暑いのにスーツ着て、ネクタイはしていないんだけど、スーツ着ているの、日本人だけでしょう、もう今ね。韓国人だって着ないし、中国人だって着ないですよと。みんな、ビジネスカジュアルじゃない?なんだけど、そんなネクタイもしないんだったら、それスーツ上下で着ている必要あるの?と。別にビジネスカジュアルでよくないですか?ポロシャツでいいんじゃないの?というのに着ていたり。でも、アメリカ人はちゃんとフォーマルなところ、ドレスコードがあるところはもうビシッとした格好で行くから、ドレスコードがあるのかないのかで明確に決まっていて、何となくビジネスだから取りあえずスーツ着ておくとか、そういうのはないんだよね。だから、こういう悪しき習慣というか、意味のない商習慣、こういうものはどんどん、どんどん、変えていかないと、なかなかちょっとグローバルで戦うのは厳しいんじゃないかなと、こういうところがたぶん、ゴーンさんの言っていることにもつながっていると、僕は思うんだけどもね。ちょっと話が逸れたけども。
東:分かりました。ちょっと話が逸れましたけど、時間が来ましたので、森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。