東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:引き続き、内山社長をお迎えしていますけど。
森辺:内山さん、よろしくお願いします。
内山:よろしくお願いします。これ楽しいですね。
森辺:ありがとうございます。楽しいと思います。今日もそんな感じでぜひリスナーのみなさんのお役にたつようなお話を頂戴できればと思います。内山さん、私、内山さん中国得意ではないですか。中国のお話を聞きたいのですけど、中国に関わってもう10何年ですか。その中で中国の経済をどういうふうに見ています?過去をまず振り返りからお話できたらなと思っていて。何が言いたいかというと、10数年前生産拠点というところから始まって、マーケットに変わって行って、みんなで挙って中国にダーっと行ったわけではないですか。そしてふたを開けるときに、成功できた企業というのはほんの一握りで、今どちらかというと中国からみんな引いてしまって。一方で東南アジア、ミャンマーだとか言っている人たちもいて、でも僕は決して中国のマーケットの規模は変わっていないし、大きいし、そもそも成長率が高すぎただけだと思っているので。その中で内山さんの観点で中国市場というのはどういうふうに今見えているのかなとお聞きできたらなと。
内山:多分、中国というふうに考えると僕たちが中国を見ると1つの国だと、そういうイメージがあると思うのですけど、中国はたくさんの省に分かれているのです。それに伴って、私たちが思う以上に貧富の差が激しい。だから、中国に対してのマーケティング戦略ということを考えて物を売ろうとすると、やはり失敗してしまうと思うのです。もともと、多分我々日本人、日本企業というのは中国人が良い物を買えるわけはないと思っていたはず。だから中国に対しては日本よりもちょっと質が低いやつを売るとか、中国人が日本製の物を買うのは本当に高所得彩層のみだからそこだけをターゲットとしていればいいわと。多分あまり僕真面目に考えて展開していなかったと思うのです。それよりも工場。生産拠点。どれだけコストを下げられるのか。沿岸部でやっていたのが高くなってきたなとちょっと内陸に入ろうと、そういうのが理想だと思うのです。
森辺:90年代後半から2000年代前半みたいな。
内山:実際今でもそういう感覚が非常に強いと思うのです。だから、中国人を我々は使ってきた。それが常に上から目線なのです。その気持ちというのは絶対にどこにでもあるはずなのです。要は、物を売る。ここがそういうフェーズに変わってきて、GDPで日本を抜いて、それを抜いたのは去年とかそれくらいですか。と言われていますけど、でも実際に中国にはブラックマネーがある。裏のお金が、やはり賄賂文化があるので、実際に表に出ていないお金のことを考えると、もう日本はずいぶん前に抜かれていただろうと。そういうところに、我々真摯に情報として気付いていなかった。中国の成長を実質数字で追っている成長だけに見ていて、本質を見ていなかったと。なので、韓国だとか海外のところが実際に入って行って、あそこは物が売れるから真剣に考えないといけないということに対して我々は乗り遅れた。だから、今うまくいっていない。それだけだと思うのです。逆に言うと、我々には技術力があっておもてなしの精神にも溢れている。うまくやれば必ず中国で売れる。そうすることができる。今日も新聞にありましたけど、自動車が回復した。これは反日の影響ではないです。中国の市場に合う車を作って、価格を設定して、サービスを出しているから売れるのです。だからその辺を考えて行くというのが、今後の市場デビューと生産拠点。その区別をしっかりしていくというのが必要になってくるかもしれないですね。
森辺:そうすると、どちらかというと今までの日本企業というのはもともと中国に入ったのが生産拠点として入った流れがあるので、どうしても上から目線で使ってやっているというような目線で、俺ら日本企業の製品欲しいだろうと。どうだ、買えないと思うけどね。こういうスタンスがどこかにあったのではないかなと。ただ、そうではなくてやはり中国の成長というのを一旦しっかりと認めて、その上で中国のマーケットに合った物をいわゆる現地適合化をして、マーケティングをやって、チャネルを作って商品をしっかりと売っていく必要があるのではないかと、そういうことですかね。
内山:そうですね。特に現地化ですよね。日本の常識というのは、それは通用しないというのがありますから、それをどういうふうにちゃんと現地に合わせた形で考えていくのか。僕の嫁がよく言うのですけど、日本人と中国人は、顔は同じだけど考え方は99%違うと。要は、僕ら日本人は島国ではないですか。横見てもみんな同じ顔をしていて、この顔です。森辺さんはかっこいいから、僕と全然違うのですけど、同じ黄色人種です。感じなのです。日本人は多分それに慣れている。そういう人を見ると親近感がわく。中国の方は我々と同じようなイメージなので、我々が話すこの親近感というのは平和になった日本ですよね。戦後たって、裕福になって。そんな中で競争の精神なんていうものが無いでしょ。海外に行ったときに。だけどあそこはまだみなさん戦っているのです。生活レベルを上げようと。自分をどういうふうに伸ばして行こうと。戦っている中に我々おっとりしてたのが入って行って、顔も同じだ。それがやられますよね。やられるのではなくて、向こうは普通にやっているだけです。我々がそれに対応しきれていないだけで。だから知るべきことが重要だと思うのです。
森辺:そうすると、我々としては、気持ち的な問題と、戦略、戦術的な問題といろいろあると思うのですけど、どう変わっていく必要があるのだと思います?
内山:まずは基本的なことをやるのはいかがかと思うのです。それは何かというと、中国というのは何なのかということを理解することなのです。市場があるだろう。空気は汚いだろう。メディアの情報はこうだろう。習近辺さんは大変なんだろう。それはメディアが発信している「だろう」に対して我々がのせられている。本質でいったときにどうなのだと。中国人は家族に対して日本人と同じような扱いで冷たく接するのかとか。中国人は何を食べている。それは餃子は醤油をつけてご飯を一緒に食べるのかとか、そういう文化。小さいところの何だろうを知って見る。そうすると何にしても、何がそこにあるか、何が欲しがっているかとニーズが分かると思うのです。そうするために、やはりいきなり中国にいって、人と接してそれを見てというのは非現実的。でも唯一できる簡単なことは、英語の中学卒業レベルの、英検でいう昔の言い方だと3級とか。その辺レベルの中国語を習得しようよと。そうしたら文化が分かるでしょと。
森辺:要はインプットを増やさないことには、アウトプットが出ないよと。そのインプットを増やすには語学が分からなかったら、耳から入ってくる情報も目で見る文字の情報もインプットされないでしょと。そういうことなのですよね。
内山:そうです。たとえば、検索するにしても、中国の中で検索できるものと、日本から検索できるものがありますね。
森辺:情報量が全然違いますものね。
内山:では、バイドゥ(百度)を使って中国語でちょっと検索できますかと。何かを調べたいと思ったときに。大抵の日本人はできない。それをちょっと調べて行って、中国の人民日報が中国で実際何が書かれているのかなと見たときに、その中の3割でも4割でも分かれば変わるでしょ。100%は必要ない。でもそれだけ分かれば何かを感じることができる。それを知るということが、有効的なマーケティングにつながる。それが必須なのではないですか。
森辺:根底にはそれがありますよね。それができれば逆に外部の力をかりる部分も、部分的でお願いできるでしょうし、何かパートーナーと外部のコンサルタントに頼り切るということをしなくて良いわけですから。
内山:そうです。特に外部のコンサルティングに頼っているのだったらまだ良いのです。それが中国のことを知っていれば。多分向こうに行って頼るのは我々につく通訳です。何でも通訳だったら、お前なんでも知っているだろうという気持ちになってしまう。商談にいく、向こうの人と話す、もう何言っているかチュンチュンしか聞こえない、通訳が話している、でも通訳の訳が本当に正しいのか分からない。だからよく日本で流通ビジネスをやるときに、通訳がビジネスをしているなんて揶揄されることがあるのです。全部分からなくても、いやお前その数字とか違うのではないの?とツンと言えることは、それぐらい結構重要なのではないですかね。そういう意味での基本、基礎。
森辺:そうですね。なるほど。だから中学校レベルのあれなのですね。ちょっとでも分かればね。
内山:そうです。そこまでで良いのです。だから喜ぶ人が多い。
森辺:そこからやるかやらないかは。
内山:そうです。それこそが人間関係ではないですか。グローバルビジネスは人間関係でしょ。その条件のところはせめて言えるかなと。人間関係がどうできるか。それに伴って靖国での、そういうところというのは人間関係を作ったりというところで、対局的に考えたときにどうなのかというのはいろいろな人が意見を出すところですよね。日本の個性がアピールすべきだと。
森辺:今後中国の今、現実問題として日本の企業の多くは東南アジアなんていうのは5年くらい前だと、中国が一辺倒だったのが今ガっとかじを東南アジアに向けている。タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア。その中で中国のマーケットは日本企業にとってどうなのですか?今後は。
内山:中国のマーケットは魅力的であって、お金があって、成熟してきているから、日本製のものに対して買える余力が増えているということは、まず間違いないと思います。右向けば右で、いきなり中国は難しいから左でという考え方でビジネスをやっているのだったら僕は失敗すると思っていて、やはりASEANを攻めるのだったらASEANのやり方があり、中国を攻めるのなら中国のやり方がある。だから中国チームがASEANチームまで見ますということは多分ないはずなのです。それをやろうとしているのであれば、その会社は多分失敗すると。それに対して、中国は中国の1つの大きなマーケットとして見て、ASEANは各国対応させるという形でも、親日の国もたくさんありますから、そこに合わせて提供していくといういろいろなやり方があると思うのです。グローバルとかというと、世界は1つだ的に見えるけど、実際に物を売ったりだとか作ったりというのを考えたときに、世界が1つなんてことはないのです。だからそこをちゃんと見極めて、本当にこれは大丈夫なのか、本当に受け入れられるのかはチームごとに提供してやっていくのがやはりそれが一番だと思います。
森辺:中でも中国ビジネスを進めて行く段階で、戦略を描いたりするアクションプランを作ったりというのはまあいいとして、実際にそれを実行に移るステージで、なかなか当初描いた戦略どおりに物事が進まないということはおおいにしてあるではないですか。「えっ」というようなことが。そんな中で思うのですけど、やはり語学の力はそのステージですごく重要だなという印象を持っていて。というのも「えっ」ということがいっぱい起きて、瞬間瞬間でいろいろなジャッジを求められるわけです。ですけど、それが5割でも6割でも自分の耳に直接入っていけるとその場でジャッジを下せるのですけど、それが別の形で耳に入って頭で理解をする、通訳を介してとかというとなかなかジャッジができなかったりするではないですか。中国のビジネスがすごく難しいというのは、実はその現場で実行のフェーズに移すときにいろいろあるのだけれども、その語学がある程度で来ていたら多分その場で瞬時にジャッジができることは意外に多いのではないかなという気がしていて。
内山:そうです。中国というのはその場で決めて行くというスタイルになるので、決めるのは決めようと。まずやってみようという、そういうステージです。日本だとそこでディジションができない。自分が決裁権を持っていたとしても本社に確認しないといけないかなと思うケースもあるので、やはりプロセス的に違ってきているのです。それをどれだけ合わせられるかが重要です。やはり語学はそういった意味で、ビジネスにおいてそれがスキルかと、ビジネススキルかというとそれはそうではないかもしれない。だけれども、人間としての関係性を作るという意味が、それがビジネススキルなのであれば、語学を勉強することは人間の関係を作るために必須なことなので、語学が多少できるのはビジネススキルでもありますので、それは新興国ビジネスにおいて特に中国のような非常にプライドが高くて上から目線で物を言われるのを嫌って、なおかつ人との人脈で仕事が進む国もあれば、語学。僕ら日本人だからペラペラになることはできないし、必要ないのです。ただ、あいさつ程度やってあげたり、お酒の席でちょっと冗談言えたりそれぐらいのレベルというのは非常に重要なのではないかなと思います。
森辺:そもそも現場の仕事、中国の人がそれを担当してやるというのが1番ベストなのですけど、問題が日本の本社でマネージメントしないといけないではないですか。言ってもね。そのマネージメントができるレベルにならないといけないわけです。マネージメント能力は何かというと、僕人の心を動かす力だと思うのです。マネージメントをするって。でも人の心をどうやって動かすのだろうというと、やはり行動と言葉2つ必要だと思うのです。日本人だと見ながら言うなと、行動だけ見ていれば分かってくれるからマネージメントをしやすいのですけど、中国に限らず新興国に行くと言わなければ分からないし、言っても分からないみたいになるではないですか。そういう意味でやはり言葉というのは重要な要素なのですかね。
内山:すごく重要には重要です。最近は、企業さんたちは我々たくさん研修させてもらっていますけど、本当レベルがあがっています。ちゃんとやっているところは、中国に対してのマネージメントのノウハウが溜まってきていて、本当この2、3年ぐらいで相当改善されてきていると思うのです。基盤はできつつある。本当に攻めたいと思っている、中国に攻めたいと思っているとか、本当に真剣にやっているという状況ではあります。あとはその中で、少しずつ取り組み始めている中でもう1歩踏み込まないといけないのは、文化を知るということだと思うのです。たとえば人材、ジョブホッピング。要は、これは激しい。日本だと最低はどれくらいやってみてというのがありますけど、ないですよね。これは中国に限ったことではないです。ジャカルタもそうですし、世界中だってそうです。ASEANだってジョブホッピングが超激しい国ですから。それが、中国人があんなに悪いのだ、彼らがジョブホッピングなのだと言っていること自体もグローバルと戦うものとしてはナンセンスなのです。
森辺:いいこと言いますね。そのとおりだと思います。
内山:中国が悪い、だからASEANなんだというのは、僕は完全に逃げだと思う。それは中国でやれないと。
森辺:素晴らしい。締めくくりの。確かにそうですよね。
内山:だから逃げるのではなくて、もうちょっと、一歩理解してみる。こういったらお前売国奴と言われるかもしれないですけど、もう1歩理解してみると結構面白いものが見えた。商売のチャンス。
森辺:深いですね、内山さん。
内山:出てくるのではないですか。
森辺:なるほど。ありがとうございます。今日はこの辺で時間が来てしまいましたけど、また次回引き続き中国ネタでよろしくお願いいたします。
内山:よろしくお願いします。