東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続き、ベトナムの話をお聞きしたいんですけれども。
森辺:はい。
東:そうやって、エースコックさんみたいに成功されている企業もあると。
森辺:うん。
東:一方で苦労されている企業も非常に多い市場であるということなんですけども。そこで、エースコックさんも、ディストリビューターを使われていると思うんですが、それって、TTに入るには、基本的には自社で直販しているわけじゃないじゃないですか、どこも。
森辺:はいはい。
東:そうすると、どういうかたちでやられているのかと、何がポイントで成功している側と、何がポイントで失敗しちゃっているのかみたいなところというのはどうなんでしょうね?
森辺:1つあるのが、製品上の課題って1つあると思うんですよね。
東:はい。
森辺:TTで置くには、TTで求められる商品でなければいけないという。これは商品そのものの性質とか性能とか機能ということはもちろんなんだけども、いかにTTで売りやすい1個口とかばら売りみたいなものに商品形態がなっているかということと。あと、彼らがTTで賄えるような価格帯。TTで、そんなちょっと高いものを売ったって、それは誰も買わないので。FMCGなので、1回や2回買うことは誰でも頑張ったらできるんだけども、生活の中に取り込んで賄っていけるということはすごい重要で。そういう適正な賄える価格になっているかということが、まず大前提としてある必要があると。これが全くもってなっていなかったら、チャネルをどうしようが何しようが、もうどうにもならないので、最初のProductとPriceのPが最適化されているというのは1つだよね。
東:はい。
森辺:3つ目がPlaceのチャネルなんだけども、ここが、やっぱり、リーバネスレモデルになっているんですよ。やっぱり数百のディストリビューターを使わないと、あの縦長の国で細かくディストリビューションをTTにやっていくって、ほぼほぼ無理なんですよね。
東:うーん。
森辺:そうすると、PGモデルではなくて、ネスレリーバモデルのディストリビューション・ネットワークがちゃんとつくれているかと。これも全土にいきなりできないじゃないですか。まずは、経済規模の大きい南のホーチミン中心にその下のカントーぐらいのところからつくっていくみたいな話から、やっぱ始まるので。そこができたら、じゃあ、今度はそれと同じモデルをハノイでやりましょう、ダナンでやりましょう、その他地方都市をいきましょうと言って10年越しでつくっていかないといけないわけですよね。
東:はいはい。
森辺:なので、そういうことに、毎年毎年投資できているかということはすごい重要で。結構、今、失敗している日本の消費財メーカーって、今年も去年も来年も、そのことに毎年毎年、投資がなかなかできていなくて、今の現状、困ったな、ヤバいなという中でね、でも、何とか輸出増やして、工場の稼働率を回してしのごうみたいなところで足踏みしちゃっているという会社が非常に多いので。やっぱ、そこに投資しないと、何のためにベトナムに出たんでしたっけ?という話に振り戻っちゃうし。何か輸出が伸びなかったときに、結局、もうこれ以上増資できませんと本社もたぶん言うでしょうから、また問題が再発するというか、根本的な解決にはなっていない気がしますけどね。
東:はいはい。
森辺:話逸れた、ちょっと。ごめん。
東:いえいえ。
森辺:そんな感じだと思います。
東:じゃあ、投資は投資として。
森辺:うん。
東:そうすると、やっぱ、そこの投資をしないと、チャネルが築けない。
森辺:築けない。
東:ということに裏返ってくる。
森辺:うん。裏返ってくると。
東:そうすると、その投資をすることと、たとえば、投資するとしたとしても、なかなかうまく機能していなかったりする場面もあると思うんですけども、その辺はどうなんですかね?
森辺:うーん。こればっかりは、やったことない人にいきなりやれって言われても10倍時間がかかるわけじゃないですか。
東:うんうん。
森辺:だから、やった人と一緒にやる。
東:はいはい。
森辺:別にうちの宣伝していませんよ。
東:はい。
森辺:それで10年かかるものを10倍かかるものを、10分の1の時間でやるとかね、そういうことをしてノウハウを吸収していく。そもそも自前で全部やったら、エースコックみたいのだって、20年かけてるでしょう。25年かな、彼ら、かけているの。
東:そうですね。
森辺:今の状態をつくるのにね。
東:はいはい。
森辺:うん。だとすると、それだけの時間、本当にかけるんですかって話だから。今、そういう戦いじゃないから。その昔はそれでよかったけども、今、25年かけてられないですと。
東:うんうん。
森辺:2年5カ月しかかけれませんという、それぐらいたぶん時間軸って速くなっていると思うので、そうすると、もっともっとこう、外部を使って早くつくっていくという必要があるんじゃないかなと思いますけどね。
東:うーん。
森辺:いや、難しいですよ。
東:はいはい。なかなか、自社でやったときに、失敗しがちな。当然、成功しているところもあるので、100%とは言わないですけど、結構確率的には何回か失敗されているところって多いじゃないですか。
森辺:はいはいはい。
東:そこってやっぱり経験値がものを言ってくるという感じですね。
森辺:まあね、しょうがないんですけど、駐在して5年とかでようやく、何となく状況が分かってくるという状態でしょう?
東:はい。
森辺:もちろん、日本語のできるベトナム人を通じて、現場の営業部長のベトナム人と話すわけなので、いろんなフィルターがかかっているので、今まで日本でやってきましたとか、もともとアメリカの市場はよく分かっているけど、初めての東南アジアですみたいな。分からないけど、西側諸国から東南アジアに来る人だっているわけじゃない?
東:はい。
森辺:そういった中でやるというのは、なかなかやっぱり難しいから、陥りやすい問題としては、何が問題かよく分からない問題に陥っていたりしますよね。
東:うーん。
森辺:何が問題かというよりかは、何が真実か分からない。
東:はいはい。
森辺:何が問題の真実なの?というところが、なかなか見えない。
東:見極められないということですね。
森辺:うんうん。たぶん、こういうことなんだろうという大枠の方向性は分かるんだけども、じゃあ、その本当に根本的なボトルネックが一体どこにあってというね。日本人優しいじゃない?
東:はい。
森辺:だから、その優しさも相まって、という感じかな。ローカルの社員も賢いから、黙って何となく適当なことを言っていれば、この人、そのうち日本に帰任するでしょうと。そしたら、次の人がまた優しい日本人来て、また何か言うから、適当なことを言ってしのいでりゃあ何とかなるわと思っているローカルのスタッフとか、めちゃめちゃいるしね。
東:(笑)はいはい。
森辺:だから、腐った組織を立て直すことほど大変なことはないし、日本人が悪いっちゃ、日本人が悪いというか、本社が悪いって言ったら、本社が悪いんですけどね。
東:うーん。
森辺:と言ったらまた嫌われるから、あまり言うのやめましょうか。
東:分かりました。(笑)じゃあ、森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございます。
森辺:ありがとうございました。