小林:皆さん、こんにちは。ナビゲーターの小林真彩です。
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。森辺一樹です。
小林:森辺さん、本日のPodcastですが、リスナーの皆さまからいただいた質問に対して、お答えしていただきたいと思います。
森辺:はい。
小林:よろしくお願いいたします。
森辺:よろしくお願いします。
小林:では、早速質問にまいります。「新興国で成功するために最も重要なこととは」ということで、「日本の消費財メーカーが、新興国で成功するために最も重要なことは何なのでしょうか?」というご質問でございます。
森辺:うーん、なんか、すごい質問だね。
小林:(笑)
森辺:大きいね、質問がね。
小林:アバウトですかね。(笑)
森辺:ねえ。ざっくりしているね。
小林:ざっくり、はい。
森辺:あれ、小林さん、リスナーの質問をディスってない?
小林:(笑)申し訳ございません。
森辺:駄目だよ。ディスっちゃ!
小林:(笑)
森辺:いや、僕が言っているのは、すごいざっくりしているなと思って。それしか書いていないの?
小林:そうですね。
森辺:うんうん、ん?どこ、誰、あー、なるほどね。消費財メーカーだね。
小林:…はい。
森辺:まあまあ、いいや。答えはシンプルで、「チャネル」です。
小林:チャネル?
森辺:はい。最も重要なことでしょう?
小林:はい。
森辺:消費財メーカーにとってという、「消費財メーカー」「新興国」「最も」と書いてあるじゃない?
小林:はい。
森辺:僕もその3つのキーワードがパッパッパッと浮かんだというか、何だろう、僕にとっての重要なキーワードだったんだけども、消費財にとって最も重要なこと、新興国でと言うと、チャネルなんだよね。これ、先進国だったら必ずしもチャネルにはならなくて。でも、新興国だとチャネルになるんだよね。なぜならば、新興国には近代小売だけじゃなくて、伝統小売TTというものが存在するでしょう?
小林:はい。
森辺:日本の消費財メーカーは、ものが駄目なメーカーなんて、正直ないので。
小林:そうですね。
森辺:そうすると、ものはできているんですよ。何が駄目かって、チャネルが駄目で、多くの消費財メーカー、新興国でなかなかマーケットシェアが獲れていないわけでしょう?
小林:うんうん。はい。
森辺:もちろん、その手前の戦略が駄目というのもあるんだけども、根本的にはチャネルが駄目というのがやっぱりあるので、販売チャネルが一番重要だと思うんですよ、新興国でね。特にTTって何万店とか何十万店獲っていかないといけないわけだもんね、新興国で。
小林:はい。うんうん。
森辺:そうすると、やっぱり、この販売チャネルをどうつくっていくかということと、販売チャネルって一夜にして成し得ないというか、つくり上げることは難しくて、やっぱり、何年とかという時間をかけてつくっていくものなので。そうすると、そういう意味でも非常に重要で。新興国と言えば、やっぱり伝統小売なんですよ。これは数十年先まで消えないので、これをどう攻略するためのディストリビューション・ネットワークをつくり上げるかということが大変重要で。もちろん、ものはいいんだけども、伝統小売向きじゃないもので、良過ぎちゃうから合わない、というのは当然あるんだよ。だから、そこを変えなきゃいけないというのはあるんだけども。やっぱり、「一言でパッと答えを言え」と言われたら、僕は「チャネル」だと思うんだよね。もう少し広い意味で取ると、「ターゲティング」と「4P」なんですよ、重要なものってね。どういうことかと言うと、ターゲティング、新興国で誰をターゲットするのか、ターゲットとするのか。これって絶対的に、消費財の場合は、中間層でなければならない。
小林:はい。
森辺:いや、1瓶5,000円する化粧水とか、1本何万円もするペンとか、それとか何千円もするお菓子と言ったら、これは中間層じゃないよ。新興国に行っても富裕層だよ。日本で富裕層を相手にしている企業は、世界どこに行っても、新興国に行っても、富裕層を相手にすべきなのね。でも、日本で中間層を相手にしているのに、海外に行ったら価格が合わないから、いきなりターゲットが上振れするというのは、これは間違いで。中間層向けの消費財は、やっぱり中間層を相手にしないといけなくて。ターゲットは中間層ですと。そしたら、その中間層というターゲットに対して、どういう4Pをつくるかということがすごく重要で。日本企業の場合は、日本で培った実績をベースにした4Pがすでにあって、それを当てはめる先が、中間層が重要だというのは分かっているんだけども、なぜか上振れするというのが今の新興国のビジネスの最大の特徴で。4Pファースト、ターゲティングセカンドみたいになっちゃっているんだよね。
小林:うーん。
森辺:でも、本来はターゲットファーストでなければならなくて。何よりも重要なのは、ターゲットで、誰に売るんだということが、もう絶対先にないといけない。その誰に売るんだというところに対して、何を売るんだ?いくらで売るんだ?どうやって売るんだ?どうやって知ってもらうんだ?みたいな、Product・Price・Place・Promotionの4Pがあるわけじゃない?
小林:はい。
森辺:なので、消費財だったら、ターゲットは中間層です。そしたら、4Pはどういう4Pになるかと言うと、中間層が求めるProduct、商品、製品を、商品を、中間層が求める、賄える価格で。
小林:価格、はい。
森辺:この賄えるというのがミソだよね。
小林:はい。
森辺:消費財だから、1回や2回、どんなに高くたって買うことはできるんですよ。ただ、消費財のビジネスの最大の特徴は、いかにたくさんの人に、いかに早い頻度で、いかに永遠に買い続けてもらうかということが、ビジネスモデルの最大の肝でね。
小林:はい。
森辺:そうすると、1回2回買われたって意味がなくて。生活の一部として賄うというね、取り込まれないといけないから、価格は買える価格じゃなくて、賄える価格である必要があると。
小林:なるほど。
森辺:Placeに関しては、メーカーが売りやすい売り場じゃなくて、消費者が、中間層が買いやすい売り場。
小林:目につきやすい売り場ということですね。
森辺:うん、そうね。そうすると、それは近代小売もそうだし、伝統小売も含めて、両方になるわけなんだよね。さらに、そうやって商品が小売に並ぶということは、どういうことかと言うと、競合と隣同士に並ぶということなわけですよ、ドン・キホーテに並ぶ以外はね。ドン・キホーテは並び方がむちゃくちゃだから、必ずしも競合の隣に自分の商品並んでいないでしょう?
小林:はい。
森辺:けど、普通の小売に並ぶということは、競合の隣に並ぶんだから、競合よりもより頻繁に手に取ってもらわないといけない。その仕掛けをするのがPromotionじゃない?
小林:はい。
森辺:競合の商品が、例えば、5回に1回選ばれているんだったら、自分たちは4回に1回、3回に1回選ばれないといけないわけですよ。そのために、Promotionをしないといけない。並べるのはチャネルの力だけども、選ばれるのはPromotionの力だと。ということで、この中間層に対するターゲティング、中間層ターゲティングと、それに対する4Pが、やっぱり僕は重要で、消費財メーカー、今、成功していない会社、何が駄目かと言うと、これが駄目なんですよね。ターゲティングと4Pが駄目だという。その中にチャネルが入っているから、チャネルが駄目だと。チャネルが駄目だったらそうなんだけども、じゃあ、ユニ・チャームとか…、味の素さんとか、ユニ・チャームさんとか、サロンパスさんとか、ロートさんがなんでうまくいっているかと言うと、なんでインドネシアのマンダムさんとか、ベトナムのエースコックさんがうまくいっているかと言うと、まさにそれで。もうターゲットがめちゃめちゃ明確。ズバーンって明確。比べてみたらいいと思うんですよ。ベトナムはいろんな企業が、今、消費財メーカーはこぞって行っていますけど、結局、成功しているのって数えるほど。じゃあ、成功していない企業と、エースコックのターゲティング、ユニ・チャームのターゲティング、ベトナムね、これを見てみたらいいと思うんですよね。それがもう全然ぶれている。でも、ユニ・チャームもエースコックもぶれていないですよ。
小林:ターゲティングがぶれていないんですね。
森辺:ターゲティングがね。そのターゲティングに対する4Pがもう非常に最適化されている。もう、中間層が求めるこの商品を、賄える価格って。エースコックの袋麺の金額なんて、本当にすごいからね。日本製だから、ジャパンプレミアムでちょっと高めとか、そんなこと全然やらないので。基本的には完全ローカル勝負、しっかりしているし。ユニ・チャームだってそうだよね。高級なイメージをあげるために若干高めに設定するというのはありだけども、金額が高いからブランディングができるって、必ずしもそうじゃないからね。だから、そこはしっかり考えないといけない。そういうことができていて。チャネルだって、30万店以上に置かれているわけですよ。
小林:それはすごいですね。
森辺:うん。エースコックなんかね。まあまあ、少なくとも、まあ、そうだね、30…、20数万店には置かれているよね。どんなに少なく換算してもね。ユニ・チャームだって、15万店ぐらいには置かれていますからね。だから、それだけ獲っているということですよね。なので、やっぱり、ターゲティングとチャネルが非常に重要なんじゃないかなと思います。気合と根性じゃないですよ、重要なのは!
小林:(笑)
森辺:「ターゲティング」と「チャネル」だと思います!
小林:はい。ありがとうございます。本日のPodcastはここまでにいたします。リスナーの皆さま、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。