東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回、前々回に引き続き、少しディストリビューターとの関係性なのか、管理育成なのか、たぶん売るステージに入って、長年付き合いがあるとか、今、付き合い始めたとか、いろんなステージがあると思うんですけども、やっぱり、ディストリビューターに「売ってもらっている」という感覚が強過ぎるがゆえに、なかなか突っ込んだ議論ができないと。突っ込んだ議論ができないということは、現地法人があるところは戦略が現地法人まかせになっていたり、ディストリビューターが戦略を立てて勝手に売ってしまったりするパターンも多いと思うんですけど。どういうものが理想で、今現状どういうところが多いのか、みたいな、そのギャップを教えて…、分かりやすいように教えていただければと思うんですけど。
森辺:今、これはB2C、B2B問わず、日本の製造業さんのアジア新興国の販売というのは、現地法人があったとしても、なくてもあっても、輸出でやっていても現地法人があっても、基本的には売ることの戦略を日本の本社は持っていないよね。東京の本社は明確には持っていない。じゃあ、現地法人は持っているかと言うと、残念ながら、あまり持っているところは多くはない。どちらかと言うと、ディストリビューター任せになってしまっていて、いいディストリビューターとたまたま組めている地域ではうまくいっているけども、そうじゃないところはうまくいっていないと。うまくいっているところのうまくいっている要素が、うまくいっていないところに体系化して広げられていない、うまく活用できていないというケースが圧倒的に多くて。そもそも何が問題なのかということも分かっていなかったりするケースが非常に多いので、やっぱり真剣にディストリビューターと深い議論を、戦略の議論ができているところというのは少ないと思うんだよね、まず現状はね。
東:うんうん…。
森辺:そうよね。「うわっ、ここはやっぱりすごいな!」というところ、会ったことないもんね。俗に言う、日経ビジネスとかダイヤモンドで書かれている「アジア新興国で強い会社」と言われるようなところと話をしても…。うん。
東:そうすると、現状がそうだとすると、理想形というのはどういうものを目指すのか、今後組み立てるのかと言うと。
森辺:理想は、やっぱりメーカー自体が売ることの戦略を完全に理解をして、それを自前でやるのか、外を使ってやるのか、つまりはディストリビューターを使ってやるのかということだと思うので、やっぱり売るということはよく分からないからディストリビューターに任すというよりも、売るということを完全に戦略立てて、その行為だけをディストリビューターにアウトソーシングしているというふうに捉えないと、捉えるというか、そういうやり方をしないとたぶん駄目で。さらに言うと、KPIをしっかり決めて、ディストリビューターに何が、異変が起きたら、それがしっかりモニタリングできる、モニタリングしてそこに改善が打てる状態に常にしておくということが、やっぱり一番いいですよね。だって、それって俗人的な感じで、お父さんの代はすごくよかったんだけど、息子に代わってからうまくいかなくなったとか、もうしょっちゅうあるわけでしょう。
東:はいはい。
森辺:アジア新興国のディストリビューターは、だいたい一族だからね。
東:そうですね。はい。
森辺:必ずお父さんじゃん、ディストリビューター。ディストリビューターで創業社長の息子以外、娘以外で跡を継いでいるのってそんなにいないじゃない?
東:そうですね。
森辺:だいたいご子息が継ぐわけだから。
東:なかなか、外から来るというパターンは少ないですよね。
森辺:うん。お父さんの時代はよかったんだけども、息子の時代になってからなかなか関係が悪く、悪くなってるとは言わないけど、関係が薄くなってきちゃっていて、自分たちの商品の取り扱いポートフォリオが少なくなっちゃったと。
東:はいはい。
森辺:昔みたいにあんまり戦略を把握してなくても頑張ってやってくれていたのが、最近あんまり頑張ってやってくれないみたいな話って、しょっちゅうあるわけじゃない?
東:うんうん。
森辺:なんだけど、メーカーとしてみたら20年やっているんだけど、実は売ることの戦略にほとんど介在していなかったから、「あまりよく分からないんだよね」みたいな話というのは、別に珍しくない話なのでね。だから、やっぱり、そうじゃ駄目ですよねという。メーカーの仕事ってつくることもそうだけど、つくることと同じぐらい売ることがあるので、それをディストリビューターに完全丸投げっていうのはちょっと乱暴すぎるよね、という話だと思いますけどね。
東:そうすると、やっぱりディストリビューターが売ることの行為はやるけれども、戦略は一緒に考えるという立ち位置なのか、ある程度メーカー主導でメーカーがやりたい売上というのは当然あって、それに落とし込んで戦略を持つべきであるというのが理想なんですかね。
森辺:基本的には、メーカーが主導でというのと、ある程度一緒に、というのの僕は混合だと思っているんだけども。なんでそういう表現を使うかと言うと、メーカー主導でやると、例えば、東京がそれを考えると、全く現地の実態からかけ離れたような戦略を出してきて、それを押し付けるみたいなことになるケースも普通に多々あるんだよね。一方で、メーカーと一緒にやると言っても、やっぱり日本の製造業のほうがおしとやかだと言うのかな、人がいいと言うのか、議論したら言い負かされるというか、丸め込まれるというか、そういうケースもあるので。むしろ、ある程度こっちで議論したほうがよくて、白紙で議論すると向こうのペースに巻かれちゃうというケースも全然あるので、両方重要だよという話をしたくて、今、そういう表現を使ったんだけど、そういうことだと思いますけどね。
東:そうすると、共同作業的な意味合いが強くなってくると。
森辺:うん。ちなみにマーケットのシェア高い会社で「売ることの戦略はもうディストリビューターさんにお任せしていますから」とか、「合弁先の相手方にお任せしていますから」なんていう会社は1社もないので。そんなので高いマーケットシェアなんかないので、いわゆるその商品、魂の入った商品、製品を売っているメーカー側がしっかりと売ることの戦略的に介在をしていて、それをディストリビューターというツール、もしくは手段を使って売っているという話だと思うので、やっぱりメーカー側はしっかり持たないと駄目ですよね。
東:分かりました。森辺さん、今日は時間が来たのでここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。