東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:じゃあ、前回の続きをもう少しお伺いしたいんですけども。ディストリビューターさんと、今、関わっている多くの人は、結構、「出張」もしくは「駐在」でやられている人が多いと思うんですけれども、その間、もしくは出張でやるところの限界とその間のメリットみたいな、結構、多くの方はまだまだ出張ベースで、日頃はメールと電話のやり取りで何とかしようとしているという方が多いと思うんですが。
森辺:そうだよね。出張はやっぱり限界があって。あってというのは、新規でチャネルを、販売チャネルを立ち上げていくというと、最初の1年がすごい重要で、この1年しくると2年目なくて、3年目ないという話で。言ったら、広い意味では3年がすごい重要なんだけど、本当に重要なのは最初の1年ですと。そうすると、もうこの最初の1年はもう徹底的にディストリビューターとの関係を構築をしながら、契約のときに決めたKPIをしっかりと管理育成をしていくということをしないと売上が上がっていきませんと。KPIがしっかりされないということは、売上が上がらないということなので、これをゴリゴリやるんだけどもね。これを、例えば、1年に1回、半年に1回、3カ月に1回の出張で何とかしようと言ってもなかなか無理で。毎週行けるんだったらこれはいいと思うんだけども、月1でも難しいんじゃないかなというふうに思いますと。ASEANってだいたい7時間ぐらいかかるじゃない?7時間8時間ぐらいね。中国だって4~5時間?
東:そうですね。
森辺:早くても3時間半ぐらい?
東:移動で1日使っちゃうって感じでしょうね。
森辺:うん。使っちゃうよね。だから、なかなかたぶん難しくて。一番いいのは、しっかりノウハウがあれば、立ち上げの期間、法人を持って駐在するというのは、もうこれ、イニシャルコストが掛かるので、もう売上がしっかり立ってからですというのは変わらないんですけど。この「出張」と「法人を持つ」間がないというのが問題で、われわれなんかだと、やっぱり立ち上げのときに法人を持たずして、人がそこに駐在していく。
東:うーん。
森辺:だからもう、住んでしまう。
東:はいはい。
森辺:そのうえで一緒にチャネルを構築していく。ディストリビューターの中に席も貸してくれるし、別にディストリビューターの近くにアパート借りて住めばいいわけだし、そんなのはいくらでもどうにでもなると。ただ、これがノウハウがない人間がそこにいくら住んだって、学ぶのに3年、一人前になるのに5年6年とかかかるわけだから。
東:はいはい。
森辺:なので、それも意味ないんだけど。そうすると、やっぱり、ローカルの人を法人がない段階から雇うというのは1つ手で。われわれなんかはお客さんの専属のローカルスタッフを、われわれのリスクでお客さんが販売チャネルを立ち上げるときに雇って、それをディストリビューターに入れ込んでいって、決めたKPIを報告させて、それができているかできてないかを数字で追っていきますと。できてなかったら、そこに処方箋を出すということをやるわけなんだけど、そういうことをやらないと立ち上がらないですよね、チャネルはね。
東:うーん。なるほど。そうすると、コミュニケーションの、当然「質」も大事だけど、やっぱり「量」を取っていかないといけないみたいなことも言えるということなんですかね?
森辺:そうですよね。だって、「質」と言っても厳しいよね。恋人同士だったら「質」って上げられると思うんだけど、ビジネスライクの関係で「質」を上げるって、やっぱり限界があるので、そうすると、やっぱり「量」になると思うんですよね。
東:うんうん。
森辺:だから、「量」は非常に重要だし、ディストリビューターとの信頼関係。一旦、信頼関係が成立しちゃって、立ち上がっちゃえば、これはリモートでも十分できるんでね。
東:はい。
森辺:前回もお話したけど、リモートがなんで今、われわれ社内でも、社外でもまかり通るかと言うと、もともとの人間関係がベースにあるから。
東:そうですね。
森辺:物理的に会ってなくても問題ないという話なので、そこが1つですよね、ということかな。
東:なるほど。分かりました。そうすると、基本的には「出張」と。企業側としたら、「その間」というのは今までに選択肢があまりないというか、物理的にコンプライアンスとか、いろいろなたぶん関係で、大企業ほどなかなか難しいというのは何となく現状としてあると思うんですけども、その辺はどうなんですかね、実態として。
森辺:もう、日本企業の海外戦略とかグローバル戦略のやり方自体を、僕は変えないといけないと思っていて、「出張」と「駐在」の間の形態をつくる必要があって。コンプライアンスをクリアしながらつくることというのは全然できて。日本って、正社員か派遣社員か現地法人での現地駐在か現地採用かみたいな、もういくつかの採用形態が決まっていてね。
東:そうですね。
森辺:その決まっていない採用形態で採用するのが難しいというわけなんだけど、この「難しい」って誰が言ってるの?という話でね、突き詰めていくと、人事に関係する部門が「前例がないことをやるのはややこしいから嫌だ」と言ってるだけの話でね。だから、「難しい」という話になるんだと思うんだけど、本当にその必要性を理解するのならば、そういうやり方をやっぱりやっていかないと、送れちゃいますよね。そもそも遅れているのに、さらに遅れてしまうし、非効率だし。結局、そこ「難しい」と言ってやらないで、じゃあ、現地法人出しちゃって、もっと大きな損失を出して帰ってくるということを散々やっているわけじゃないですか。だから、やり方を僕は変えるべきだなというふうには思うんですけどね。
東:はいはい。なるほど。
森辺:なので、自分たちで直接雇用しなくとも、外部を活用して雇用するということだって全然できるわけなので、もう少し間を、中間を入れてもいいのかなという気はします。
東:なるほど。そうすると、ちょっと今回のお話を森辺さんなりにちょっと整理していただいて、どういうところにメリットがあるのか含めて。
森辺:海外で新規で販売チャネルつくるときは、最初の1年がもうめちゃめちゃ重要ですと。ディストリビューターを決めた後ね。そのディストリビューターと、1つはコミュニケーションを取るということをしないといけない。人間関係を物理的にしっかりつくるということをやらないといけない。もう1つは、ディストリビューターと議論を対等にしないといけないので、ディストリビューター以上に現地の市場のことを知らないといけないと。これ、知識に差があると議論にならないので、いわゆる立場の強いほうの意見が通るというだけの話で、全くもって議論にならないわけなので、やっぱりその知識を高めるという意味が2つ目の意味で、最初の1年は非常に重要ですよと。そんな中で、日本企業の今までの海外進出というのは、「出張」か、そのステージが終わると「駐在」か、みたいな両極端だったんだけども、「この間を入れるべきですよ」という話をしていて。法人を出すのは絶対に売上が上がって、利益がしっかり取れて、イニシャルがある程度クリアできるということが見越せてから法人を出すべきだと、僕は思っているので、後でいいですと。ただ、出張でやるには限界があるので、ある程度、今までの雇用形態にはない形態なのかもしれないけども、「現地に法人がない中で、現地で人を雇っていく」ということを、コンプライアンスをクリアしたやり方の中で実施していくという新しいやり方を取り入れていかないと、これからのグローバル戦略というのはなかなか強固なものになっていかないんじゃないかなということですかね。
東:分かりました。森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。