東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の引き続きなんですが、前回の回答をちょっとまとめていただくとどんな感じになるのかっていう。
森辺:えーっと、何話したっけ…。そうだね、質問があって、その質問というのは、中国の企業が安いものをつくってきますと。最近、違いが目に見えて分からないと。言ったら、技術革新が進んで意外にいいものをつくってきますというのがストレートなわけなんだよね。そうなってくると、やっぱり価格差が3倍とか4倍とか、下手したら10倍あって。でも、価格差は何倍もあるのに、いわゆる使い勝手の差というのは、そんな何倍も開いてないとなると、なかなか苦戦していますと。私たちどうしたらいいですか?という話なんですよね。一番は、付加価値の高いオンリーワンの商品をつくっていくということが非常に重要なんだけど、そんなのね、ものすごい大変なことなわけじゃないですか。すべてがすべて1から10まで、そんなものつくれないわけなので。
東:はいはい。
森辺:それをやるということは、一番重要ですと、1つね、目に見える違いをつくるということは重要で。残念ながら、世界では違いが目に見えないとお金は出さないという話なんですよね。そうすると、やっぱり、世界標準の価格というのものを中国メーカーがもうつくっていっちゃっているとするんだとすると、そこで戦うしかないと。それを踏まえてグローバル戦略を組み替えるということをしないと、時間をかけて中長期でじり貧になっていくってだけなんですよね。だって、そうでしょう、だって、違いがないのに意味分からないじゃないですか、3倍4倍って。そこの商品じゃなきゃ駄目だという、明らかな違いがあればいいですよ。例えばね、面白いのが、ヤマハのピアノも中国製のピアノも、ヨーロッパのスタインウェイ・アンド・サンズか。
東:はいはい。
森辺:最近、息子にピアノを買おうと思って調べていたから。
東:(笑)
森辺:ちょっと覚えたてなんだけど。
東:はいはい。
森辺:昔からロゴは知ってたんだけど、読み方をちょっとね、分からなかったんだけどね、グランドピアノ、1,400万するんだよ。
東:うーん!
森辺:車か、おまえ!と思ったんだよね、僕ね。
東:(笑)
森辺:それで一方でね、ヤマハとか中国製は、たぶん数十万円から、言っても100万とかね、そんなものですと。
東:はい。
森辺:じゃ、この1,400万でグランドピアノを売るヨーロッパのピアノメーカーさん、何なんだ!?と言ったら、やっぱり世界の一流の音楽家は、「このピアノじゃないと演奏しない」というやつがいるわけですよ。これはブランドだよね。
東:そうですね。
森辺:だって、その演奏家に憧れて演奏する、いわゆる演者の人たちは、そこに憧れを持つわけで、それが言ったら、圧倒的になっていくわけじゃない?
東:うんうん。
森辺:だから、そこをやっぱり狙っていくということを日本企業はしないと、ヨーロッパにそこのポジショニングを取られて、コモディティを中国に取られて、一体、日本企業は何なの?と。「品質と機能だけは負けないんです」と言ったってね、品質も機能も目には見えないんですよ。でも、目に見えるのはブランドと、あと、価格なんですよね。
東:はい。
森辺:でも、品質と機能は目に見えない。
東:うん。
森辺:ここをやっぱり考え直す必要があって。目に見えないもので金を取ろうというのは大きな間違いだと僕は思います。
東:はいはい。
森辺:という話をしたんですよね。
東:うん。そうすると、どうしたらいいんでしょうかねという。(笑)
森辺:どうしたらいいかって。
東:はい。
森辺:いや、だから、違いをね、目に見える違いをやっぱり出すしかなくて。それはどういうことかと言うと、圧倒的なイノベーションでその業界の常識破りのような商品を出していくみたいなことをやる。これは必ずしも技術という意味だけじゃなくて、既存の技術とアイデアを組み合わせて新しいものを出していく。この間の例に出したようなのだと、ペンとかだと、フリクションペンなんかまさにそうでしょう。
東:はい。
森辺:あれだと思うんだよね。あと、チョコレートの世界なんかで言うと、ビフィズス菌が入ってるんだっけ、何だっけ…、大腸菌じゃねえや。
東:(笑)大腸菌ですかね。
森辺:大腸菌、大腸菌じゃなくて、チョコレートに、ほら、最近入っているじゃない?
東:はい。乳酸菌ね。
森辺:乳酸菌、乳酸菌。
東:はい。
森辺:乳酸菌が入っているチョコレートとかね、あんなのって、もう元々あったものの組合せじゃないですか。
東:はい。
森辺:けど、あれだけヒットしている。それとか、あと、カカオ。カカオをたくさん入れて健康にいいみたいなね、ああいうものもそうだと思うんだけども、ああいうものというのは、まさに付加価値ですよね。
東:うんうん。
森辺:もしくは、やっぱりブランド力をつけていかなきゃいけなくて。
東:はい。
森辺:ここのメーカーのチョコレートを買うことがステータスにならないといけない。これもヨーロッパのブランドのチョコレートが多いよね。ゴディバ然り、何然り。
東:はい。
森辺:だから、そういうブランドの投資をあまりにもしてこなくて、日本企業と言ったら、品質と機能にしか投資をしてこなかったので、そういうことをこれからはやっぱりやっていかないといけなくて。ブランドを築くのって四半世紀かかるんですよ。
東:うんうん。
森辺:本当に一流ブランドになるには100年かかるんですよね。ヨーロッパの一流ブランドって100年かけているんですよ、時間をね。だから、やっぱり今のうちからそれをやっていかないといけないと。それができないんだったら、コモディティ化の世界でグローバル競争をするしかなくて、中国企業にできることが、なんで日本の企業ができないんですか?という話で、それはやらないだけでしょ?という話なんですよね。だって、彼らはできているわけですから。なので、そこの領域で腹を決めて戦うと。いずれかで、中途半端に、いわゆる目には見えないんだけど、品質と機能の差はあるんですと。価格の差は3倍5倍するんですと、これ、そのうちじり貧になるので、日本の経済がどんどん、どんどん、停滞していったら、おそらくなかなか厳しくなってくると思います。
東:了解しました。森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。