東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、引き続き、リコーさんのセミナーで出た質問を共有させていただきたいと思うんですが。ちょっと、ディストリビューターとかは考えず、ざっくりとした質問にはなっているんですけど、「仮説の思考力を高めるにはどうしたらいいでしょうか?」という、すごいシンプルな質問ですけど、面白い質問ではあると思うんですが。
森辺:これね、なんでそういう質問をこの質問者さんがしたかと言うと、結局、うまくいっている会社は早く出ていますよという話をしたんですよ。早く出るということはなんでいいのかという話をしたんだけども。結局、早く出ると、誰よりも早く出るわけだから、誰よりも早く失敗するじゃないですか。だって、未開の地にいきなり行って成功するなんていうのは万に一つなので、失敗します。そうすると、誰よりも早く学びますよね。だから、結果、誰よりも早く成功するんです。だから、早く行かないと駄目ですよという話をしていて。成功している会社は早く行っていて、先駆者利益とか先駆者メリットとか、パイオニアはなぜ強いんだと言ったら、結局、早く行ったから市場が獲れたんじゃなくて、早く行って失敗したから、結果早く学んで、早く勝てたというだけのことなんですよ。早く行くことは重要だと。でも、無策で早く行っても意味ないんですよ。高度な仮説を持たないと駄目だということ。仮説なき行動というのはもう意味がないと。言ったら、仮説があって行く、行って学べるものが10だとしたら、仮説なしで行ったら、ただ底なし沼に足を引っ張られるだけだから、全く意味がないから、仮説を持ちましょうという話をしたと。そうすると、仮説の思考力を高めるにはどうしたらいいか、この質問者さん、分かっているのは、いや、日本企業の仮説って甘いよねと。日本でこの商品…、極端なことを言うとね、日本でこの商品売れていますと。これはインバウンドブームだし、中華系にも売れるでしょうと。ASEANだからちょっと値段安くするけど、これを持っていったら売れるんじゃないの?ということで行って、売れなかったとかっていって、言ったら、何年も赤字を垂れ流しておたおたするわけですよね。それって出る前の仮説が甘過ぎるから、結局、出てから売れないということに直面して、そこでまた右往左往して、どうしよう、ああしよう、そうしよう…って、そうなっているのね。なんだけど、もっともっと、たぶん仮説って高めなきゃいけなくて。そうすると、今現地に行って分かったことが、事前にたぶん8割9割分かるわけですよ。そうすると、最後の1個を学ぶって、ほんと高度なレベルでね。先進的な企業というのは、仮説のレベルがもうめちゃめちゃ高いと。じゃあ、これをどうやって高めたらいいんだ?という質問なんだけど、結局、情報量なんですよね。量と粒度、要は細かさ、質。情報が1しかなかったら、仮説の議論って1個でしかできないじゃないですか。一方向でしかできないですよね。けど、情報をたくさん持っていたら、10も20も持っていたら多角的に客観的にいろんな方向から仮説を議論できるんですよね。そうすると、仮説の思考力も高まるじゃないですか。だから、日本企業は圧倒的に情報収集をしていなくて、この情報収集というのも、取引先から聞いたとか、銀行が言ってたとか、商社から聞いたとか、自分の現地の社員が言っていたとか、そういうレベルの情報に留まっていて、しっかりと体系だった調査を経て情報収集をしていないんですよね。産業系も消費者系も調査をね。だから、情報量をしっかり持てば、自然と仮説の思考力というのは高まりますよという、そんなお答えをしました。
東:例えば、情報量というところで言うと、どんな情報をどのぐらいみたいな話になってくると思うんですけど、森辺さんが考えることだと、どんな感じなんですかね?
森辺:例えば、日本企業が一番、どの会社もまあまあ9割10割がた、この問題というのは、僕は、ここはできているなというのはなかったので、今までね、あるんだけども、自分たちの、売れないと、商品が売れませんと。自分たちのディストリビューターの戦闘能力をしっかりと数値で把握できている、要は基準値を持てている会社って、もう、なくて。例えば、敵が強いということは分かっていても、敵のその販売能力を100とした場合に、自分たちの販売能力が、ディストリビューターがどれぐらいなのか。敵のディストリビューターが100だって、戦闘能力がね、自分たちが70なのか、80なのか、はたまた20なのか、30なのかみたいなところが全く分かっていないんですよね。これって、まさにそういうことじゃないですか。だから、本当に基礎的なところの情報が全くなく、よく出てきたなという感じが非常に強い。あと、ターゲットに対する情報もそうですよね。ターゲットって一番重要で、4Pはターゲットにぶつけるものなんですよ。なんだけども、ターゲットを理解していないから、ぶつける4Pが間違えるわけですよ。むしろ、日本企業の場合は、用意されたもともとの日本での4Pをそのまま現地に行ってターゲットにぶつけるんだけど、中間層とか、B2Bだったら日系に当たらない、日系にしかハマらないから、何だろう、売上が伸びていかないという、そういう問題もあるんだけども。そういうことだと思いますけどね。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。