東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回と引き続きなんですけれども、問い合わせを受けてからどういう流れで調査を実行するかというところまでご説明いただいたと思うんですが。「最初の段階で、あまり固まっていないものをどうやって調査に落とし込むか」とか、「上司を一緒に説得したりするんですよ」ということをおっしゃっていたんですが。企業さんの悩みって、当然、「売上が上がらないから、何かをしたい」なんだと思うんですけど、具体的にどういった悩みが多いのかというのは、一般論で構わないんですけれども、教えていただければと思うんですが。
森辺:おっしゃる通りで、うちはグローバルマーケティングの会社なので、基本的に海外でどうやって売上を上げていけばいいのかという、その問題にすべてのご相談というのが集約されるんですよね。その中で、やっぱり見ていくと、最も大きな要因の1つとしてあげられるのは、チャネル力が完全に弱いというケースが大半で。「ターゲティングも間違っていないし、しっかりとターゲット設定できているのに。プロダクトも悪くない。プライスもそこそこ頑張っています。でも、チャネルが本当に圧倒的に競合に比べて負けています。だからプロモーションを打ちようがないです」みたいな、こういうジレンマに陥っている企業というのが、もうほとんどです。じゃあ、競合と比較して自分たちの販売チャネルがどれぐらい負けているのかということを把握していない。そもそも自分たちの販売チャネルの競争力を数値で把握をするということもできてなかったりするので。たぶん、大半のお悩みって、そこの調整ネジを締めると解決する、というケースがほとんどなんですよね。じゃあ、販売チャネルを強化しましょうと、強化するための時間と予算と労力が必要ですと会社に現場は提言しないといけない。そのためのまずファクト集めをしていかないと、お金を出す会社も、「いや、そんなことをおまえが勝手に言っても、何をどう、予算をそこに付けたらいいんだ?」という話になるので、「競合A社、B社、C社と比べて、こうですよ。ああですよ。そうですよ」ということを証明していくわけですよね。それでようやく予算が下りて、その予算を使ってチャネルを強化していく、ということをやっていくので、そんな悩みがたぶん大半なんじゃないかな、と思いますけどね。
東:「チャネル力が弱い」というのは、どういったところに原因があるのかというのは?
森辺:これはやっぱり自分たちの求める売上とか、売上規模に対して、チャネルをつくり込んでいってないんですよね、かつての担当者と言ったら…。当時はそれでよかったんでしょうけども、結局、その進出をした当時、もしくは展開をした当時にチャネルをつくって、その時点でもうチャネルの進化が終わっているんですよ。最初につくったままなんですよね。だから、うまくいっているのは、そのチャネル、つまりはディストリビューターだったり、販売パートナーが勝手に成長していったから20年経って今があるという、そういう状態なんですよね。一方でうまくいっている先進グローバル企業というのは、そのチャネルを自分たちから自主的に強化させていくわけですよ。それは、例えば、契約をしたディストリビューターを管理育成して強くしていくということも1つだし、それだけじゃリーチしない顧客にリーチするために、ディストリビューターの数を増やすということもそうだし、いろいろなオペレーションプログラムとか、インセンティブプログラムをつくって彼らのモチベーションを上げていく。自走して自主的に成長していくということを促すということもそうだし。日本企業の多くはB2BもB2Cもそういう活動を今までしてこなかったので、基本的には自然に成長していった分しか成長していないんですよね。だから、そこを強化していかないといけない、というのは1つ大きな課題としてはあって。
東:そこって、やっぱり担当が代わるというのは1つ大手の場合はあると思うんですけど。なかなか手が出しづらいところなんですかね、企業側からすると。
森辺:そうですね。基本的にローテーションですよね。海外駐在4年~5年で1クールでローテーション、大手になればなるほどローテーションで。基本的にもう、赴任が終わったら、もうその国のことなんて人事ですよね、こんなことを言ったらあれですけど。自分の任期が終われば、「あの時代はこうだった」「ああだった」「そうだった」ということを言っても、基本的には自分の責任範疇から外れるわけなので。やっぱり次の新しい人がまた引継ぎがあったとしても1からやって、それの繰り返しなので。あと、日本ってトップのリレーションが弱いでしょう。華僑のビジネスだから、本当は人脈的な、トップ同士のねっちょりとした人脈形成というのは非常に重要で、ここをしっかりトップが最低年1回ぐらいで会ってやらないといけないんだけど、あまりそういう活動はしたがらないので。そうすると、現場任せのコミュニケーションになっちゃうわけですよね。リレーションに。その現場が何年かに1回代わっていたら、あまり、しっとりねっちょりという関係にはなりにくいというのは1つありますよね。ただでさえ、そういうねっちょりとした関係はしないけども、一方で戦略は非常にストラテジックみたいな、そういう話だったらいいんだけども、そういうことでもないじゃない?日本企業の場合。だから、大変残念な感じにはなっていますよね、B2CもB2Bも、製造業は。
東:そうすると、基本的にはチャネルの力が全般的に弱いというところに皆さん困っているというのが…。
森辺:そうですね。僕、これは明言できますけども、どんな製造業でもB2BでもB2Cでも、販売チャネルを改善したら、現状よりも3割は売上絶対上がりますから。日本企業はそれだけ販売チャネルに改善の余地があるんですよ。その余地をしっかりと改善してしまえば、最低3割は今よりも売上は上がるので。大きく伸ばせるところって全く販売チャネルが駄目だから、数倍レベルで売上が上がっていくわけですよね。伸びていくわけですよね。だから、本当にそれだけ日本企業の販売チャネルというのは弱いという。
東:まだ伸びしろがあるということですね。
森辺:そう。逆に言うと、伸びしろがある。今までずっと製品に頼りきってきたということなので。販売チャネルが2の次、3の次になっていたのでね。
東:分かりました。森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。