東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回に引き続きなんですけども。チャネルが弱いということをおっしゃっていたんですけども、それって具体的にどういったことなのか、というのをリスナーの方にも分かりやすく説明いただければと思うんですが。
森辺:日本企業のチャネルが弱いというのは、例えば、これは製造業を2つに分けて、B2Bの製造業とB2Cの製造業に2つに分けてやったときに、B2Bってユーザーさんじゃない?お客さんが。そのユーザーさんに対するリーチが、現状のディストリビューターでは弱い、ということが非常にケースとしては多いんだよね。これはどういうことかと言うと、自分たちの競合が必ずいて、その競合がリーチしているユーザーの数と、自分たちのディストリビューターがリーチしているユーザーの数が、極端な話、4分の1、5分の1だったとか。これは、それだけ差があると、4社5社、もう4社~5社つくらないと一生リーチしないじゃない?結局、B2Bって、ユーザーにそもそももうリーチできていないんだとすると、自分たちがリーチしたいユーザーで、自分たちのディストリビューターが今現状、リーチできていなかったら、そのディストリビューターがその自分たちがリーチしたユーザーと取引を開始するのに何年もかかるわけじゃないですか。下手したら5年10年かかる。もしかしたらずっと取引できないかもしれない。だって、もう「スーパーど新規」ということなので。そうすると、そこに期待していてもたぶん非常に難しい。あと、B2Bの場合は入札案件というのも、ものによっては全然出てくるわけで、そもそも、もう入札に入れない、このディストリビューターでは、この地域のと。アジア新興国では、もうベタベタの入札がいっぱいあるわけでしょう。そうすると、「この地域ではこのディストリビューターは入札に入れないよ」ということだってあるわけなので、「端からユーザーにリーチできません、このディストリビューターでは」というのが決まってしまっているケースというのはあって、そういうのをしっかり調べていくと、それが確定するんです。そうすると、次のアクションとしては、それでも売上を上げるにはユーザーにリーチしなきゃいけないので、やっぱり別のエリアに関しては別のディストリビューターを使わざるを得ないとか、そもそもこのディストリビューターの競争力は弱すぎるから別のディストリビューターに替えなきゃ駄目だとか、そういうことがB2Bだったら見えてくるし。あと、B2Cだったら…。B2Cの場合、新興国って伝統小売の存在がどうしても大きいではないですか。そうすると、近代小売はまあまあ、そこそこたぶん日系メーカー、やれていたとして、伝統小売にどうやって配荷を進めていくかとなると、今使っている1カ国1ディストリビューターのこの1ディストリビューターではなかなか配荷が進まないから、複数のTTに強いディストリビューターを使わないといけないとか。そもそも本来、現法があれば、「MTなんて直販しなさいよ」ということになるんだけども。そういう意味で、そもそもディストリビューターの数が足りていないとか。小売がもう決まっているわけじゃないですか。例えば、タイだったら「セブンイレブンとTESCOを取りましょう」と。セブンイレブンが1万2,000店、TESCOが2,000店、そしたら、「ここを取らないと、近代小売は駄目だよ」というのが確定していたら、セブンとTESCOに強いディストリビューターにしないといけないとか。今、使っているディストリビューターが弱かったら、これは入らないですよね。じゃあ、フィリピンだったらSMとピュアゴールドとロビンソンズ、ここにしっかりリーチできなかったら、まず論外ですよね。ここにリーチできて初めて、伝統小売の80万店のオーナーが「その商品を取り扱いたい」と思うわけだから、MTはマストで。次に、この80万店のTTにリーチができるディストリビューターを選んでいかないといけない。こんなの、物理的に1社で、主要島3島あるフィリピンで80万店になんか1社でリーチするわけないんだから。サブディストリビューターを使ったって絶対無理だから。そうすると、エリアに分けて複数のディストリビューターを使うと。あのP&Gですらフィリピンで8社使っていて、ネスレ・ユニリーバに関しては100~200使っているわけじゃないですか。そうすると、やっぱり数で圧倒的に日本企業は負けていると。数で負けているというか、そもそもディストリビューション・ネットワークのストラクチャー設計が間違っちゃっているんですよね、もともとの。こういう状況を分かっていないから、設計図が描けていないので、取りあえずパートナーをつくってやって、やらせてみて今があるみたいな、そういう状態になってしまっているので。実際、それがさっき言っていた、東さんが言っていた、駐在員がころころ変わるというので、問題がどんどん、どんどん、薄れていくみたいな。駐在員が代わって、代わって、代わっていくたびにディストリビューターとの関係も薄くなっていくみたいな、こういう問題が日本の製造業には残っていますよ、ということだと思います。
東:なるほど。そうすると、「その辺のチャネル力の弱さというのは、どうやって改善していったらいいんですかね?」というのがたぶん聞いているリスナーの方も疑問に思うところだと思うんですが。
森辺:これは、B2CもB2Bもやっぱり競合との比較なんですよね。結局、競合と競争しているわけなので、競合がどういうレベルにいるのかということと、自分がそのうえで今どういうレベルにいるのか、という2軸をまず可視化するということが必要で、競合が10だったときに、今の自分たちのチャネル力って7なんですか、8なんですかと。7~8だったら、何となく気合いと根性で頑張れそうじゃない?
東:うん。
森辺:けど、これが3~4だったら、どんなに気合いと根性を詰め込んだってこれは敵わないので、もう1回つくり直さないといけない。多くの日本の製造業の場合は、B2CもB2Bも3~4レベルなんですよね。だから、ここを変えていくと。大概は今扱っているディストリビューターをいきなり替えるということは非常にリスクもあるので、いかに補完していくかということが重要で。どう補完しようかということを考えたときに、競合の可視化というのは重要なんですよね。
東:なるほど。そうすると、競合の可視化をまずして、競合との差を、実態を見るということがファーストステップというかたちなんですかね?
森辺:そう。それが見えると、「差が10ありますね」とか、「7ありますね」と。「じゃあ、その7という差を何年で埋めていきましょうか」という計画が立てられて、「今年はここまでやりましょう。来年はここまでやりましょう。再来年はここまでやりましょう>、3年後に追い付きましょう」みたいな、そういうことをやっていくわけなんですよね。今、多くの製造業がそれに着手し始めているという、そんな感じだと思います。
東:なるほど、そうすると、やっぱりそこの着手が少し、欧米系に比べると、日本企業は少し出遅れているというところがある?
森辺:相当、出遅れているよね。だって、ここ最近ですから。着手のスピードも遅いし。欧米系はそれを、例えば、さっき言った、P&Gがフィリピンで8社使っていると、もともと彼らは50社~60社使っていたわけです。けど、それを統廃合して最終的に8社とかになっていて、ASEANではどの国でも6社~8社ぐらい使っていて。それってやっぱり過去に統廃合をずっとやってきて、経験値でどんどん、どんどん、チャネルを改革して改善していって今の姿があるわけで。これはネスレ・リーバも一緒で。そうすると、日本企業は問題に今何となく気付き始めたみたいな、消費財なんかも。B2Bなんか本当に全く気付いていないんじゃないかというレベルだから。一番怖いのは、問題を問題視できていないという企業が非常に多くて、変え始めている、チャネルを改善し始めているというのは本当にごく一部の会社なので。だから、まだまだこれからやっていかないと、もういいもので売れない時代ですから、なかなか大変なんじゃないかなと思いますけど。
東:分かりました。森辺さん、今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。