東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回、日本のプリンシパル側にも、やっぱりコミュニケーションの問題とか交渉の課題があるんじゃないかということをおっしゃったんですが、それって具体的に、当然ディストリビューター側も最初はそのメーカーの商品を取り扱いたいと思って契約を結ぶわけで、どの時点でミスコミュニケーションが生じるのかというのは、森辺さんの言える範囲でいいので、一般論として教えていただければいい。
森辺:東さんのおっしゃる通り、最初はピュアな気持ちで頑張ろうと、もう100%思っていますよ。
東:そうですよね。
森辺:ディストリビューターなり、合弁先のパートナー、製造業、財閥、何でもいいですけど、思っています。その中でミスコミュニケーションが起きてくるというのは、レイヤーが2つあって。現場レイヤーで起きるミスコミュニケーションと、あとトップのレイヤーで起きる2つの、僕はレイヤーがあると思っているんですけど。まず、一般的に悪いのは、日本企業はマーケティングに対するストラテジーが全くないのに、知識武装も十分にできていないのに、とにかくうるさく細かく言い過ぎる。無意味な管理をしたがるという。これがアジア新興国のビジネスのやり方とは合致してこないというね。彼らを管理するときには、シンプルな指標で、管理されていることを意識させないような管理をしていかないといけないのに、ものすごく細かく管理をしていくわけですよ。日本人の必殺、大好き報連相みたいなことをやらせるわけなんですけど。
東:はいはい。
森辺:結局、これね、報告だけはするんだけども、報告をしたものに対して、上司が報告をしろと行った10項目、そのすべての10項目に対してリプライをしてあげないと報告したほうは「何だよ」と思うわけですよ、これ。日本人は、いや、報告することは当たり前だから、「10項目報告しろ」と言われたら、素直に10項目報告するんだけど、これ、世界に出ていったら、報告した10に対して返答が10返ってこなかったら、「何のために報告したんだ?」とみんな思うわけですよね。これ、思わないのは日本人だけでね。なんだけど、基本的には、上司が10項目知って「ふむふむ」と言いたいから「報告しろ」と言っているわけじゃないですか。それに対して、10項目返すということはまずないですよね。そうすると、現場レベルでよく現場のことを分かってないのに、やたら報告をさせたがるみたいな、ここの現場レイヤーのフラストレーションでコミュニケーションが崩壊していくというのと。あと、トップの営業もしなさ過ぎ。基本的にはトップ会談をすることで、トップ同士の人脈形成で。
東:関係性を。
森辺:事業の関係を成り立たせるわけじゃないですか。
東:はいはいはい。
森辺:けど、それが全くない。現場は日本の大企業の人事の問題で基本的にはローテーションするわけだから、現場はそういうのないんですよ。どんどん、どんどん、ローテーションするわけだから。けど、トップって、執行役員でもいいですけど、取締役でもいいですけど、基本的には退任するまでずっとそのポジション以上を維持していくわけじゃないですか。どんどん、どんどん、偉くなっていくわけですよね。そうすると、やっぱりトップレベルが海外の企業とコミュニケーションを取り続けないと。年に1回会えばいいだけですよ。それでお酒飲めばいいだけなんですね。
東:はい。
森辺:それをやらない。そうすると、やっぱり関係はどんどん、どんどん、悪くなっていくので。結局、ローカルのアジア新興国の会社って、トップが「やれ」と言うことしかやらないので、基本、現場から「コンフリクトが起きるようなことをやろう」なんていう話にはならないわけですよね。トップが、「これ、コンフリクトが起きることをやると、うち儲かるな。けど、関係崩れるな」と。「ただ、いいや。あいつら、よく分かってないで、うるさいことばっかり言ってるし」と。「あいつらとの商売、そんなに大きくするつもりない」と思ったら、コンフリクトが出るようなことをやる。例えば、同様のものをつくるとか、自分たちで単独で工場を持つとか、そういう話になるんだけども。コミュニケーションをしっかり取れていると、「これは確かにコンフリクトがある。儲かるんだけども、これをやっちゃうと関係が崩れるな。そうすると、やっぱり将来、もしくはもっと未来にもっと大きいことを一緒にできるのにそういうものも打ち砕かれるな。やめておこう」という判断になるわけなので、そこの2レイヤーでやっぱり問題がある。本当にけんかみたいな話になって、出せ、出せ、出せ、出せ。出したくない、出したくない、出したくない。データとか情報とか。
東:はいはい。
森辺:だから、そこがなかなか…。それって、契約する前に、どういう管理指標で自分たちのKPIを見ていくかとか、こういうことだけは毎月報告してねみたいなことをしっかり決めて契約しないからそういうことになるんですよね。なので、そこは1つ大きいから。僕は日本のプリンシパル、メーカーの問題だと思っているんですよね。
東:うーん。それは、トップの関係性をなかなか構築できないのは、やらないのか、やろうとしているけどできていないのかと言ったら、当然例外はあるでしょうけども、一般論で言うとどうなんですか?
森辺:外人と飯食うの、面倒くさいでしょう?
東:はい。(笑)
森辺:ぶっちゃけ、そういうことだと思うんですよ。
東:はいはいはい。
森辺:そんなにね、小難しい話じゃなくて。トップだって、そんなみんなが語学が堪能で、中国語できます、英語できます、インドネシア語できますという話じゃないし。そうすると、僕だって、「もう今週は外人と飯食うの疲れるな」って、外国人の皆さん、聞いていたら申し訳ないですけど。(笑)
東:(笑)
森辺:この番組を聞いているということは、日本語が分かるということだからいいと思うんですけど。でもね、そうですよ。だって、僕の嫁の親戚がアメリカから来たときに、1カ月僕の家に泊まられると、ちょっときついなと。家庭の中が、会話が英語になるわけでしょう。
東:はいはいはい。
森辺:ちょっと疲れるなとか思うから。ぶっちゃけ…。だって、ほら、海外で、ホテルで今日はちょっとゆっくりしたいなっていうときにディストリビューターに飯誘われたら、「うわ、地獄の飲みが始まった…」とか思うでしょう?
東:(笑)思いますね。
森辺:そういうことだ。単純にそういうことだと思うよ。
東:はいはい。
森辺:けど、それを肝臓を傷めてでもやっぱり若干やる、ということがまだまだアジア新興国では必要で。「現場と飲め」と言っているんじゃなくて、海外担当役員がオーナー企業、数百億、数千億の企業ですよ。アジアの、新興国のね。
東:そうですね。
森辺:財閥、何兆円のところもあるけどね。そこのオーナーと、高級レストランで高級なワインを飲みながら、それもまた疲れるんだけども、2~3時間の話じゃないですか。飛行機で片道6~7時間飛ぶのかもしれないですけど、ビジネスクラスで行くわけでしょう?
東:はい。
森辺:こっちに呼んでもいいわけじゃないですか。だから、そういうコミュニケーションはしっかり取ったほうがいいと思うんですけどね。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。