東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回、有給取得率について触れたんですけども、日本が著しく低いですと、それがグローバル化の直接的な原因にはなっていないのかもしれないですけど、やっぱり間接的にいろいろ節々で見え隠れするところがあるんじゃないかということをおっしゃっていたんですけども。森辺さんの専門のグローバル・マーケティングと有休取得率というのが、何となくのイメージでもいいのでリスナーさんに、どうつながっているのかというのをお聞かせいただければと思うんですけれども。
森辺:グローバル・マーケティングと有休取得率なんて直結している気がするんですよね。僕、グローバル・マーケティングってインプットがすごく重要だという話を過去にもしたと思うんですけど、できる限り情報がいっぱいないと、知識も情報もいろいろなものがガーッとあって、そこに自分の考え方とか経験則とかいろいろなことから掛け算されて、アウトプット、戦略アウトプットにつながっていくわけでしょう?
東:はい。
森辺:その中でインプットが同じ一定量あったとしても、「有休取得率50%、ふーん」と思える人が出すアウトプットと、「めちゃめちゃこれおかしいだろう!」と思っている外国人のリーダーの、じゃあ、フランシスさんの出すアウトプットと、「有休取得率50%、普通じゃない?」と思っている山田太郎さんの出すアウトプットって、やっぱり全然違うと思うんですよね。そうしたときに組織って人じゃないですか、企業って人だし。そうすると、どっちの組織に人は集まるかということを考えても、やっぱりフランシスさんでしょう。だって、フランシスさんの組織で言えば有休取得率100%取得できるわけだから、そうすると、そっちに優秀な人間がいっぱい集まりたがるし。日本の高度成長期はとにかく自分の人生、自分の時間、家族、子ども、すべてを犠牲にして会社のためにって歌があったじゃん、リゲインの「24時間戦えますか」、僕好きなんだけど、あの歌ね、あれだったでしょう、まさに。
東:うんうん。
森辺:だけど、今はもうそんな時代じゃないじゃない?だから、むしろ高収入でレベルの高い仕事をしている人って、めちゃめちゃ有休というか、休みを取っているでしょう、バケーションを取っているじゃない?
東:うんうん。
森辺:だから、これは駄目だよね。3年連続最下位で50%って、これ世界に公開されているわけですからね。こんな生産性の悪い日本、ちょっと問題という。マーケティングも生産性悪そうじゃない?
東:はいはい。
森辺:だって、有休50%しか取れない会社のマーケティング戦略ってすごい効率悪そうでしょう?
東:(笑)はいはい。
森辺:だから、僕は直結すると思うんですよね。
東:なるほど。そうすると、海外から見ると、どんなふうに、やっぱり生産性が悪いなと見られるということですかね。
森辺:あ、5時の鐘がなりましたね。
東:なりましたね。
森辺:そうなんです。5時に録ってるんです。(笑)
東:はい。(笑)
森辺:そうです。海外から見ると、日本はものすごい生産性が悪いというふうに見られていますよね。だから、生産性悪いランキングとかでも日本って低いんじゃないかな。
東:低いでしょうね。
森辺:今回コロナで明らかになったけど、IT化、IoT化がやっぱりほかの先進国に比べて遅れているから政府が焦ってIT推進委員会みたいなのを立ち上げて、これからボンボン、ボンボンやるわけでしょう。だから、やっぱりそうだよね、ITで効率が良くなるわけだから、そういうことではあると思うんだよね。
東:はいはい。
森辺:あと、この「みんなと一緒じゃないと駄目」文化がそれをそうしているんだけど、僕も20年前の記憶がよみがえってくるんだけども、5時の鐘がなったよね、今ね。会社にいても鳴るじゃん、これ、日本全国どこにいても鳴りますと。当時、僕もオフィスビルにいてフロアにみんながダーッと仕事をしているわけだよね、向こうのほうまで、他事業部も含めて。自分の事業部の島を見ると、みんなまだガリガリ、ガリガリ、パソコンに向かって何かやっていますと。でも、僕はもう仕事なくなりましたと。帰りたいと。立ちにくかったよね、新入社員のときに。
東:(笑)そうですよね、確かに。
森辺:うん。立ちにくいなと思ったけども、立って帰ってたけどね、俺はね、「お疲れさまでした!」と言って。
東:(笑)はいはい。
森辺:上司は「おっ、お疲れ」と言って、腹の中でどう思っているかは知らないけども、そう言ってた。先輩とかは「おい、おまえもう帰るのか」と、「おまえ、新人なのにもう帰るのか」みたいな顔で、何か言いたそう。
東:(笑)快く送り出してくれないって。
森辺:うん。何か言いたそうな感じで。それを何日か続けていると、世話係みたいな上司が、すごい優しい世話係がいたんだけど、何て言うの、新人研修…。
東:新人教育係とかですよね。
森辺:教育係ね、先輩がすごいいい人で、何気なく悪そうに「新人はもうちょっと居たりするほうがいいよ」的なことを言っていたんだけど、「意味分かんねえな」と思って、「だって、僕、仕事なくなったのに」と思っていて。だから、こういうこととか。あと、当時、新人が電話を取るという商習慣があって、僕、電話取り過ぎて左耳が聞こえなくなったことがあったんですよ。絶対、俺の電話じゃないのよね、だって、俺、新人で誰とも名刺交換していないのに俺に電話なんか掛かってくるわけないから。
東:そうですね。(笑)
森辺:なんだけども、電話を取らなきゃいけなかったわけよ。僕が「はい、何々でございます」と、「お電話ありがとうございます。何々株式会社の何々でございます。少々お待ちください」ってお名前聞いて電話をつなぐという、この非常にシンプルな、たぶん1回やればすぐ覚えるという業務、これに練習は要らないと思ったね。
東:(笑)はい。
森辺:「練習だ」と言うんだよ、新人のね。なんだけど、こんなの100回やって200回やってできるようになったからって何なんだよというのをすごい思っていて、「電話を取り次ぐために俺は大学を出たんじゃねえ!」と思って、言ったことあるの、先輩に、「俺の電話じゃないのに、なんで僕が出なきゃいけないんですか?」と。絶対、この人かこの人の電話だから、この人かこの人が取ればいいじゃない?直接ね。
東:(笑)はい。
森辺:「なんで俺が取るんだ」と。「練習だ」と。なんだけど、「もう3日やったらさすがにもう覚えた、3日で。もうどんな電話が来ても大丈夫ですよ」と。でも、それ駄目だったんだよ。僕はその後、自己洗脳をかけて1年間電話を取り続けたのね。だって、もうそうするしかないんだよ、「それ駄目」って言うからね。それで、電話取るの嫌だから会社辞めるなんて、そんなのないし。そしたら、左耳が聞こえなくなったの。
東:へえー!
森辺:しばらくしたらまた聞こえ出したんだけど、精神的なものだね。そういう無駄がいっぱいあって。こういう無駄をやっぱり解消しないといけないよね。だって、女の子の受付の子を1人雇って、その子が電話を取れば別に済むわけでしょう、例えば。なので、何の話していたんだっけ、電話の話じゃないよね?
東:(笑)違いますね。
森辺:生産性が悪いという話だよね。
東:そうですね。
森辺:いや、だから、本当に悪いと思うよ。生産性悪いことだらけでしょう。この20年でたぶんだいぶ改善はしてきたんだと思うんだけど、でも、まだまだあるんじゃないかな。
東:うん。結構、根強いものがやっぱりあるという。
森辺:そうそう。思い出した。だから、「みんなと一緒じゃなきゃいけない」文化というのがいろいろな生産性を悪くしているんだよね。高度成長期はみんなで一丸となってあの方向へ向かうという、そういう明確な方向があったからそこにドーンとみんなで向かうという、これは相当強かったと思うんだよね。でも、今、いわゆる創業者っていないわけじゃん。松下幸之助がいた、本田宗一郎がいた、ソニーの盛田さんがいた、そういう時代でしょう。「あっちに向かえ」と言うから、みんなでドーンと向かってよかったんだけど、今、向かう方向が示されていないのにみんなで同じことをするってよく分からないでしょう?
東:そうですね。
森辺:なので、やっぱり、そういうみんな…、だから、ダイバーシティが重要だということですよ。まとめると、そういうことだと思います。
東:分かりました。そうすると、最後に分かりやすく、グローバル・マーケティングと有休の消化率の低さというのがどう直結しているのか。いろいろ課題は分かったんですけど、その辺、森辺さんの考えをまとめて最後にお伝えいただければと思うんですが。
森辺:グローバル・マーケティングって市場を地球規模で見て、世界を相手に利益をあげましょうということが僕の中の定義なのね。マーケティングをグローバルに展開するということだと思うんだけども。そうしたときに有休取得率が50%で3年連続で主要国19カ国のうち最下位だと、3年連続、この状況を良しとしている国もしくは企業がつくるグローバル・マーケティングなんて、世界で通用するわけがないと思っていて。だって、組織とかマーケティングを動かす人とか企業って、全部人なわけでしょう。その人たちの権利だよね、1つの、お給料と休みって2大権利でしょう。この片方の権利が半分も冒されてしまっている現状を改善できない会社が、どれだけグローバル・マーケティングを考えたって、そんなの通用しないでしょうと。だって、世界は100%取っているのに、なんで日本だけ?というね。
東:そうですよね。
森辺:だから、僕は直結していると思うから、有休取得率も100%、会社員の皆さん、有休は権利です!忙しい、取りにくい、関係ありません!取得しましょう!!
東:(笑)選挙の演説みたいに最後なりました。
森辺:ということを言いたいと思います。
東:分かりました。今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。