東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、遂に5章まで来ましたけども、『グローバル・マーケティングの基本』シリーズの1章1章トピックスを解説いただいているんですが、第5章に関しては、「中堅中小企業のためのグローバル戦略」というかたちで、中堅中小というかたちで分かりやすいキーワードが出ているんですけど。「中小企業には中小企業の戦い方がある」と5-1で解説されているんですが、これって大手と、そもそも中堅中小では、戦い方が違うというような感じなんですかね?
森辺:そうですね。この本は、基本的には大手企業のために書いた本なんですよね。第5章だけが、そうは言っても、中堅中小企業のためにも1章設けようというので、第5章は中堅中小企業向けにメッセージを書いていると。なぜこの章を設けたかと言うと、大手とはやっぱり戦い方が違うので、もしこの本を中堅中小企業のオーナー社長が手に取って、この本の通りやっても、やっぱりそこってやり切れないんですよね。経営資源が圧倒的に大企業とは違うので。そうすると、やり切れなくて、やっぱり、中小企業には中小企業の戦い方があるので、その戦い方の方法を書いた、まとめたのがこの5章なんですよね。例えば、この3章とか4章で、参入戦略の立案の方法とか、チャネル構築の方法とか、いろいろ書いたけども、あんなことを細かくやっていったら。だって、そもそも大企業は100億円つくりましょう、500億円つくりましょうと言っているから、あれだけのことをやる必要があるんだけど、中小企業って、まずは数億円、最終的に数十億円と言うんだったら、そんなことをやる必要は全くなくて、やっぱりやり方を変えなきゃいけないよねということで書いているんですよね。
東:うんうん。
森辺:あと、ここは、あれなんだけども、出ちゃいけない企業というのもあるんですよ。中小企業ね。こういう企業は海外に出ちゃ絶対駄目ですよと。出ないということも、これもまた立派な経営判断だと思うので、どういう企業は出るべきで、どういう中小企業は出ちゃいけないかという。中小企業の定義っていろいろあると思うんだけども。僕の定義というのは、まず利益が出ているということはもう絶対の条件。日本の中小企業が何十万社、何百万社ある中で、ほとんど利益出ていないわけでしょう?
東:うんうん。
森辺:海外やるって、利益が出ていない中小企業は海外なんかやらなくていいので、利益が出ているということはまず絶対条件で、利益が出ている中でどういうレンジの企業のことを言っているかというのは、インダストリーによって利益率って全然違うので。
東:そうですね。
森辺:売上数十億円でも全然いいし、数十億円、数百億円、1,000億円前後ぐらいまでのところ、ここまでを僕は中小、中堅。中堅って1,000億円…、数百億円後半ぐらいまで~1,000億円台はもう中堅なので。あと、数十億円~数百億円を僕は中小企業というふうに呼んでいて、あくまで利益が出ているということなので。売上数億円と言うと零細企業になっちゃうので、それで海外をやるとなるとなかなか厳しくて。だとすると、国内でもっと売上を伸ばしてからやるべきなので。そういうこともちょっと書いているのかな。
東:なるほど。コラムに「人脈があるに騙されない」ということを書いていらっしゃるんですけども、この辺はちょっとどういうことなのかなと思ったりするのですが。
森辺:海外に行くと、2つのタイプの人間がいて、1つは脅かす人。「こんなことになるよ」と、「ヤバいですよ」と。あたかも自分がそれを経験したかのごとく、もしくは自分の近しい人が経験したかのごとく非常にネガティブな怖い話をいっぱいするという人たちと。あと、もう1つは、「任せておけ」と、「俺に任せておいたら大丈夫だ。もう俺は人脈全部あるから」と。いまだにまだそういう人たちがいて。中小企業ってやたらそういう人たちが寄ってきちゃうんだよね。海外に行くと。だから、その人脈って、人脈で何とかしようとする海外展開って絶対失敗するんですよ。だって、中小企業がそんな凄まじい人脈、手に入るわけないですよ。だって、メリットだから、その中小企業にその人脈を使うよりも、大企業に使ったほうが、その人脈を持っている人にとっては絶対にプラスでしょう?
東:はい。
森辺:そうすると、やっぱり人脈って同じレベル感でないと使えないんですよね。例えば、僕が、孫正義さんの人脈でどうのこうの、そんなのあり得ないですよ。あそこのステージにまで行かないと、そういうふうにはならないのと一緒で、やっぱり人脈ってレベルが合わないとなかなか難しいので。だから、俗人的に何とかしようとするというのには気を付けないといけないという。そこにはあくまで戦略性がないといけないので、そういうことを書いたりとか。
東:うんうん。分かりました。では、ここでは、中堅中小企業がグローバル展開をするためには何が重要だというのは、森辺さんの考えだと。
森辺:大企業とは違った戦略が必要ですよと。中小企業であっても俗人的じゃいけないし、あと、中小企業だから行政が何とかしてくれるとか、誰かがただで何かやってくれるとか、そういうマインドの人は出るべきじゃないですよみたいな、マインドセットのところがまず書いてあって。じゃあ、そのマインドセットがクリアできた中小企業さんが、じゃあ、どうやって海外で売上上げるの?というところを分かりやすく解説している。こうしたら売上が上がりますよということを書いている。
東:はい。
森辺:僕は、実はこの中堅中小企業、オーナー企業のほうが、本気になって海外をやれば、大企業よりもよっぽど早く成功することができる。むしろ、日本の市場よりも海外の市場での売上のほう大きくなる可能性だって十分あるんですよ。十分あるんですけど、やっぱりそこに至れる企業というのは少なくて。だって、うちでも2割ぐらい、中小企業さんがいらっしゃるでしょう?
東:はい。
森辺:けど、社長と直接、指示系統が社長から直接飛んでくるわけじゃない?
東:うんうん。
森辺:そうしたときの経営判断の速さ。やると決めたらある一定の予算をドーンと投下をするわけですよね。そうすると、大企業の1事業部門の予算よりもよっぽど大きかったりするわけですよ。大企業の1事業部よりもよっぽど経営資源が大きいなんていうケースもあるわけですよね。そういう企業はやっぱり成功が速いので、大企業よりもマーケットシェアが高いクライアントさんなんて全然いるわけじゃないですか。
東:はいはい。
森辺:だから、そういう意味では、僕はチャンスだと思うんですけどね。
東:うんうん。分かりました。では、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。