東:こんにちは、ナビゲーターの東忠男です。
森辺:こんにちは、森辺一樹です。
東:では引き続きフィリピン、マニラからお送りしたいと思いますが、前回所得層の話について少しお話していただいたと思うのですけど、もう1回簡単で良いので振り返りをしてもらっても良いですか?
森辺:いろいろな所得に関しては富裕層、中間層、低所得者層といろいろなところがいろいろな定義を出していると思うのですけど、僕は中間層の定義を1万5,000ペソと引いています。1万5,000ペソがやはり中間層と呼べる超ギリギリのボトム。上位中間層になると2万5,000ペソ。かける2.3をしてもらったらいいと思うのですけど、そこがやはりあれかなと。アジアはどこでもそうなのですけど、このピラミッドの中の1番下の低所得者層がどんどん中間層になっていて、いわゆる三角形が菱形になっていくわけです。この中間層のふくらみが最も美味しいゾーンですよというのがアジアの最大の魅力で、フィリピンもそれは変わらないと。これからフィリピンのマーケットを狙っていくにはいかにこの中間層を押さえるか。この中間層を押さえるためにはやはり欧米なんかは早くから低所得者層に投資をし続けていますよというのが基本的にはフィリピンも同じ構造になっているというのがフィリピンです。
東:そうすると、前回森辺さんと話をした感じで、アジアの流通は大きくMTとTTに分かれますという話だったと思うのですけど、それはフィリピンで言うとモダントレードとトラディショナルトレードと言うと具体的にどうなっているのかというのをざっくりでいいので教えていただきたいのですけど。
森辺:近代小売のほうです。モダントレードで言うと、外資規制があるのでローカル系の財閥系のグループが。
東:ほとんど入っていないですよね、外資。ウォールマートもない。
森辺:メトロがあったかな、ドイツの。セブンイレブンとかミニストップとファミリマートは合弁でやっているので、51%以上が確かミニストップなんかも現地企業だったと思います。基本的には大手のいわゆる近代小売と言われるところはこっちの財閥系のグループ企業なのです。有名なのだと、海外展開もしているフィリピンの会社ですけど、SMって。S、Mと書いてマルとしているやつなのですけど、こことあとピュアゴールドという黄色い看板の、黄色と緑の。
東:バナナっぽい。
森辺:バナナっぽいピュアゴールドというところと、あとルスタンズというところと、それからロビンソンズ。この4つですかね、近代のデカイところというと。
東:やはりこれはもう全て財閥系みたいな。
森辺:そうです。中でもSMなんていうのはBDOという銀行なんかも持っていますし、建設会社とかいろいろなことをやっている。不動産デベロッパーです。
東:日本で言うと三井とか住友とか三菱とか。イメージ的に言うと。
森辺:イメージ的に言うと旧財閥系が全部牛耳っている。韓国と一緒です。財閥系が。
東:ロッテとか。
森辺:そうです。そんな感じです。
東:外資規制があるがゆえになかなか外資は単独では当然入って来られないし、単独で入って来られないのだったら旨味がある市場かどうかというと小売に対してはそう思うところと、そう思わないところがあるので、最大店のウォールマートなんかは入って来ていないみたいな。
森辺:そうです。そんな感じです。珍しいですよね。ウォールマートとかカルフールとかいろいろなところにアジアでも出ているではないですか。だからそういう意味では非常に特殊。小売もやはり欧米チックと言ったらどこも欧米チックなんでしょうけど、特にフィリピンは欧米チックで。置いてあるもの、買い方、そういうのが非常に欧米チックです。
東:SMのモールオブエイジアみたいな、1番大きいところ。アジアで1番。
森辺:アジアで1番大きいと言われていますよね。
東:そこにユニクロが入っていますよね。
森辺:ユニクロはたしか2012年だったかな。11年か12年ぐらいにいわゆるSMグループと合弁でこっちに店舗を出していっていると。そんな戦略をとっています。
東:僕もちょっと見てきたのですけど、モールオブエイジアのユニクロが入っていて、2階に。1階に無印良品も入っていて、ここはやはり、この2社というのは中国を見てもどこを見ても海外展開が進んでいるなというイメージがあったのですけど、やはりユニクロの隣にはZARAがあったし、GAPもあったしみたいな。やはり欧米系の色が強いですよね。
森辺:ユニクロも無印も1度失敗しているでしょ、海外展開は。だからそこで多くを学んで戦略がやはり徹底的に考えられています。どの国でもフィリピンでも。
東:そうするとMTの今言った4社というのがどんな特色を持っているのかとか、実際森辺さんも何カ所か見られていると思うのですけど、どんな印象を?
森辺:やはりSMという会社はフィリピンで1番大きいです、グループ全体で言うと。そのSMがやはり強いです。どこにいっても見るのがSM。面白かったのが、ピュアゴールドという会社がS&Rという、いわゆるコストコが横浜にあるではないですか。僕も年に何回か行くのですけど、いわゆる会員制のショッピングで、会員にならないとショッピングはできないと。そのホールセラーという風に言うのですけど、実際にホールセラーが買いにいくかと言うと、実際は消費者が買いにいくわけなのですけど、とにかく全てがデカイわけです。店舗もデカくて、棚も天井10m、20mぐらいあって、上にダーッと商品が積んであって、バルク買いしていくというそういうところなわけです。
東:イメージ的には日本のコストコ。
森辺:コストコが全く一緒です。
東:IKEAとかああいうような店のつくりになっていると。
森辺:全くのコピーで、フィリピンに4店舗ぐらいあるのです。
東:マニラで4店舗。
森辺:そこに行きましたら、ものすごく富裕層なのです、客層が。
東:フィリピンでそういう会員制。物を買うのに会員にならないと会費も払うのですよね。
森辺:会費も実は僕もメンバーになったのですけど、2000円ぐらいするのです。2000円というと、1000ペソ近いではないですか。さっき言った中間層の月収が1万5,000ペソなので15分の1です。会員になるのに。そんなの払う分けないではないですか、普通の人たちが。だからものすごく富裕層であまさんを連れてきている。メイドさん、家政婦さんを連れてきていて、運転手と。まずS&Rの駐車場自体が、車がめちゃめちゃ高級車なのです。
東:どんな車があったのですか?
森辺:トヨタもハイクラスもだし、三菱でしょ。三菱やトヨタやホンダの中でもグレードの高いやつ。ピカピカに磨いてあって、運転手を車に待たせて家政婦連れて行くみたいな。
東:では運転手付き、メイド付きの家に住んでいるお金持ちがそこに来るみたいな。
森辺:そうです。大量に買って帰るのですけど、また今度話せばいいでしょうけど、フィリピンとかは伝統小売のほうで、普通の小売からホールセラーが商品を買って伝統小売で売るみたいな特殊な構造があるのですけど、そういうお客さんは一切いない。だから大量に買っていますけど、それは売る目的で買っているのではなくて、自分の家で消費する目的で買っていて、あれだけの大量の商品を買えるということはまず冷蔵庫があるわけです、家に。キャッシュフローが全然いいので、月に2回お給料日がありますよと前回お話しましたけど、基本的にその月に2回もお給料をもらわなくたって十分貯蓄があるような人たちが。
東:そんなの関係ないみたいな。月1回2回だろうが関係ないと。
森辺:関係ない人たちが来ていて、オシャレして来ていますよ。プラダとかシャネルのバッグを、通常偽物を持っているわけではないですか。ディレクトで。思い切り本物だし、恐らく僕よりも全然所得が上のような人たちが買い物に来ていると、そういうイメージです。
東:結構人が入っているのですか?
森辺:入っています。めちゃめちゃ入っています。だからレジが20レーンぐらい、レジがあるのですけど、並びますからね。
東:そこにはどういう商品が置かれているイメージなのですか?
森辺:家電。
東:テレビとか。
森辺:まず入るとすぐに家電とかがあるのです。どこもそうなのです。家電とかコストコもそうですよね、入るとまずテレビがドーン、冷蔵庫がドーンみたいな。そういうものがあって、日本のSONYとPanasonic、SHARPもありましたけどやはり相変わらずLG、サムスンも強いですよね。冷蔵庫もLGがやはりいっぱいあって、とにかくデカイのです。冷蔵庫が、売っている冷蔵庫がアメリカン冷蔵庫。
東:日本の小さいのではなくて。
森辺:倍くらいある、アメリカン冷蔵庫があって、家がどれだけデカイかということがまず売っている冷蔵庫を見るとどれだけ家のデカイところに住んでいる人たちが来ているかというのが分かります。テレビもデカイですから、あんなデカイテレビを置ける家というのはやはりデカイので、それがすごく分かって。いわゆる家電です。あと日用品、生活雑貨、それから食料品。それから肉の生鮮食品というのですかね、そういう物が売っているところは3つのエリアに分かれていて、あと4つだ。すみません。キャンプの。
東:キャンプ道具とか。
森辺:キャンプ道具とか、あとテントみたいなね。あとタイヤ館みたいなのもあります。5つぐらいですかね、カテゴリーで大きくわけると。最後キャッシャーを出たら日本のコストコと一緒でピザかホットドックを食べて、コーラを飲んで帰るみたいな。
東:全く、イメージでは本当にそのまんま。
森辺:まねっこです。完全にマネ。
東:コストコのフィリピン版。フィリピン版と言っていいのか分からないですけど、それがS&Rという。S&Rというのはどこの会社が。
森辺:ピュアゴールドのモーグル。これは非常に面白い。ピュアゴールドという会社は上場していますから。決算書公開されているので見ていてもすごく戦略的だし、非常に面白い財閥系にしては戦略的なトレンドを早く取り入れてどんどんやっていくようなそういうイメージを私は持っているのです。
東:コストコみたいなのがフィリピンで流行るとはなかなか普通の人は思わないですよね。
森辺:だから基本的にはアメリカみたいな、ある程度の所得があってトラックとかに乗って、ミニバンとかね。ああいうデカイ車に乗って月に1回買い出しに行って、家もデカくてガッと買って帰るみたいな。そういうイメージですけど、ものすごく流行っていますね。
東:お金を払って会費制のスーパーマーケットというのは他にあるのですか?
森辺:S&R以外にはないのではないですかね。ないと思います。
東:そうすると明確に会員制を取っているのはやはりS&Rだけだと。
森辺:だから面白いのではないですかね。スーパーだと一緒ではないですか、どこへ行ってもだいたい。だからS&Rがあったのはビックリしました。
東:やはりすごく巨大な?
森辺:ものすごく巨大で。僕も日本のコストコに行くときにも1日中疲れるわけです。この嫁の買い物の付き合いでホームパーティーするからと行くわけではないですか。そうしたらバカでかいカート。普通のイオンとかのカートの4倍くらいあるカートをごろごろ押して。
東:あれ満杯になってしまうのですか?
森辺:満杯になってしまいます。高い棚からわざわざ商品を重たいのをとって、買って帰るのですけど、車に積むのも大変だし毎回来る度に僕は2度と行かないと思っていて。流行っていますよね。
東:結構このコストコ、フィリピン版のコストコのS&Rが今後どういう展開をするのかというのは1つ面白い視点なのですかね。
森辺:面白い視点だと思います。注目すべき視点だと思います。今ある貧困層が中間層にあがって、この中間層の所得水準が上がったときに、当然スーパーやグローサリーで買うというのも1つですけど、やはりコストコのようなS&Rのようなスタイルがもしかしたら浸透する可能性というのは非常に高くて、ピュアゴールドグループはそれを見越してS&Rに投資をし続けているのかもしれないですし、ただバッと見た感じS&Rは収益が十分成り立っているイメージには見受けられました。
東:そうすると中間層が今ピュアゴールドで買っているけれども、将来あそこで買いたいみたいなゴールを。
森辺:ステータスにはなっています、間違いなく。こっちの人に聞くとS&Rは富裕層が買うところというのは明確な認識として持っていますから、その辺の人たち何人にも聞いていますけど、やはり明確に持っているので。
東:そういう認知は明確にあると。
森辺:ルスタンズもやはり富裕層はルスタンズで買うというイメージがあって、一方でピュアゴールドのスーパーマーケットなんて言うと、結構安いというイメージがあってSMよりも5%から10%は安いという印象をやはり持っています。すごくポジショニングが各社明確になっているというのは。
東:うまくポジショニングが分かれているみたいな。
森辺:そんなイメージが受けます。
東:分かりました。今日はお時間なのですけど、コストコのフィリピン版に今後も注目ですね。分かりました。今日はありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。