東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回まで『グローバル・マーケティングの基本』の書籍の振り返りというか、章ごとに少しトピックスをお伺いしたんですけれども。そもそも「グローバル・マーケティングの定義」っていろいろたぶんあると思うんですけども、森辺さんの、スパイダーのと言ったほうがいいのか、森辺さんのと言ったほうがいいのか、定義を教えていただければと思うんですけど。
森辺:そうだよね。「グローバル・マーケティングって何?どういうこと?」と。何となくニュアンスは分かるよね。「グローバル」と「マーケティング」で両方とも英語なんだけど、分かりやすい英単語なので、みんな何となく定義は分かっていると、イメージはね。
東:イメージはつきますよね。
森辺:イメージはついていると思うんだけど。実は、マーケティングって別に国境問わずの話なので、わざわざなぜそこに「グローバル」とつけているのかということを含めて説明をすると。やっぱり日本のグローバル・マーケティングの研究の第一人者って明治大学の大石先生だと思うのね。その先生の定義って、ちょっと読み上げると、「グローバル・マーケティングとは多数(複数)の国、地域で国境を越えて同時にかつ関連して意思決定しなければならないマーケティング」とされています。この定義って単に日本から海外のある国へ輸出をするというような経済行為を指すものではなくて、もう複数の国が入り乱れて事業展開する、単純な二国間貿易とはもう全く異なる話なわけだよね。だから、戦略だってそうだし、事業のいろいろな調整が必要になってくるという、こういうことを言っていて。これがまさにグローバル・マーケティングの定義だと思うんだよね。うちはこの定義をベースとしてもう少し実務寄りに再定義をしているんだけども、それは「地球規模で市場を捉えて、ニーズに応えて利益をあげることですよ」と言っていて、われわれは「地球規模で市場を捉える」ということと、「利益をあげる」という、この2つが非常に重要な要素だよねというふうに言っているというのがグローバル・マーケティングですよね。
東:なるほど。
森辺:これね、一番重要なのって、やっぱり二国間の貿易から、今ってASEANで、中国でつくったものをASEANに出したりとか、ASEANでつくったものをアジア全体に出したりとか、言ったら、ものすごい複雑に絡み合っているでしょう。サプライチェーンもそうじゃない?
東:はい。
森辺:そうしたときに単純に二国間で終わらないというところが非常にグローバル・マーケティングの重要なところで、かつて「国際マーケティング」という言葉が流行ったと思うんだけどね、この「国際マーケティング」って1960年代ぐらいに言われ始めたんだよね。当時は、自国と外国の間で行われるマーケティングという意味で国際マーケティングという言葉が使われたんだけども、自国と、言ったら、視点が自国と海外なんだよね。でも、グローバル・マーケティングって視点が全く違って、国際マーケティングはあくまで視点は自国なんですよ、自国と外と。なんだけども、グローバル・マーケティングというのは地球を全体的に捉えてああだこうだするものなので、視点がグローバルなんですよね。ここが国際マーケティングとグローバル・マーケティングの決定的な違いだというふうに僕は思っていて。もっと言うと、かつて「インターナショナル」とかってよく聞いたでしょう、「インターナショナル」って。
東:インターナショナル・デパートメントとか、インターナショナル・セールとか。
森辺:あまり言わないよね、今ね。
東:そうですね。
森辺:今、「インターナショナル」という言葉は「グローバル」という言葉に置き換わっていると思うんだけども、これがまさにそういうことで、以前は視点が自国と海外だから「インターナショナル」という、「国際的」とか「国際間の」というふうに訳されるんだけども、この言葉がよく使われるようになったんだけども。今って「グローバル」に取って変わって、「地球全体の」とか「世界的な」というふうに訳されているわけなんだけども、そういう視点がやっぱりビジネスの中で大きく変わったんだよね。60年代、70年代、80年代のときのインターナショナルの視点から、今のグローバルな視点に変わったということがすごく重要で、やっぱりこの視点というのはグローバル・マーケティングにおいては大変重要な要素かなというふうに思います。
東:分かりました。では、最後に「グローバル・マーケティングの定義」をもう1度教えていただけないでしょうか。
森辺:はい。「地球規模で市場を捉え、ニーズに応えて利益をあげること」です。
東:はい。では、今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。