東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回の引き続きで、中国製の技術もしくは品質がたぶん急激にここ15年20年で上がってきていると思うんですけども、それをやっぱり認知するというか認めるということが日本企業は少し遅かったということなんですかね?
森辺:だいぶ遅かったですよね。認知が早まっていたらね、僕、日本企業はもっと変われたかもしれないと思っていて。やっぱりそこを認めると…。いまだにいるからね、「いや、われわれのほうが技術が上だ」とか、「われわれのほうが品質が上だ」という。いや、上なのは上なのかもしれないんだけども、それって評価外の上だから、もう何て言うのかな。
東:お客さんには届かないという。
森辺:うん。届かない部分のところで、むしろ、そこで戦っていなかったりするわけですよね。ハードじゃなくて中身のソフトだったりとかで戦っているわけだし、なかなかそうじゃないという部分だから、なかなか厳しいですよね。
東:うーん。
森辺:そうなったときにね、日本企業の生き残り戦略ってどうなるんだろう、デジタル化も遅れているわけでしょう?
東:はい。
森辺:一生懸命、今、「DX、DX」と言っているけど、デジタル化も遅れていて、僕ね、ヨーロッパもだいぶ疲弊したんですよね。日本の高度成長期、60年代70年代に日本企業がより安く、より小さく、より良くつくった時代って80年代90年代ぐらいまで続いたと思うんだけど、あの時代、アメリカ・欧米の企業も苦労して。でも、彼らはね、特にヨーロッパの企業はね、唯一無二の存在になったでしょう?例えば、今バッグなんて世界中でつくれるじゃない?
東:はい。
森辺:何なら日本の職人のほうがよっぽどいいバッグをつくれるのに、フランスのエルメスというブランドはもう圧倒的で唯一無二じゃない?
東:うん。
森辺:ルイヴィトンもそうでしょう?
東:はい。
森辺:こういうブランドってヨーロッパにあるでしょう?
東:うんうん。
森辺:ピアノとかもそうなんだけど、中国製のピアノがめちゃめちゃ安くて、中国人の子どもさん、ピアノを習わすってあって、日本にもヤマハが良いピアノをつくっていますけど、まあまあ中国製に比べたら全然高いですよと。そうじゃなくて、スタインウェイ&サンズってヨーロッパにありますけど、1,500万円とかするピアノね、この域までいくともう芸術品みたいな。そうすると、安いのだったらもう中国製でいいやってなっちゃうんだろうなと思っていて。でも、スタインウェイ&サンズまでいくともう唯一無二だから、要は負けようがないんですよね、ここまでくると。これって前回言ったテレビの話でもそうだと思うんだけど、テレビの話も「中国製なんて使わない」と思っていたのに使うんだもん。僕でもだよ。これだけソニーが好きでソニーのブラウン管を14歳からずっと見ていて、ソニーのずっとテレビだったのが、「次のテレビはもう僕は中国製にしようかな」と思っているぐらいだから、そうなったときに日本企業の生き残り戦略ってどうなんだろうなというのがすごく僕は悩むところ。今のうちに統廃合もしたほうがいいし、デジタル化もどんどん、どんどん、進めていかなきゃいけないし、「これからはビッグデータの戦いとかって言われ始めたら、もうどうするの?」みたいなね。産業構造が大きく変わるわけじゃない?
東:はい。
森辺:今までメーカー主導でね、メーカーがピラミッドの頂点にいて、完成品メーカーが、そこから問屋があって小売があって消費者がいてみたいな。でも、これからって「消費者の購買データを持っているところが一番強くなる」なんて言われた日にはね、「技術力あります」と言ったところで下請けになり下がるわけでしょう?だから、変わらないといけないよねと思います。
東:なるほど。変わっていくためには、まずは中国製の品質がいいという、良くなってきているということがやっぱり認められないとなかなか難しいというところはありますよね。
森辺:そうですね。10年後20年後に本当に彼らの存在があったときに、自分たちって必要なのかということをやっぱり直視しないと、そこから逃げていたらたぶん次のイノベーションを絶対生めないですよね。
東:うん。
森辺:だって、先のことには人間は目をつぶれちゃいますから、だから、やっぱりそこで直視をして、「もう勝てない」と思ったら何かそこに新しいイノベーションを生み出さないと、変わっていかないとたぶん次には進まないと思うので。難しいことだと思いますけど、一緒にそんなことをやっていけたらいいなと思います。
東:了解しました。森辺さん、今日は時間が来たので、ここまでにしたいと思います。
森辺:ありがとうございました。
東:ありがとうございました。