東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
東:森辺さん、前回に引き続き、本の中から少し要約して言葉でお伝えするという形で。日本とどう違うんですか?みたいな、代理店、日本の代理店営業だったり、代理店管理って、やられてきた経験がある方が海外に就いたりするパターンも結構多いじゃないですか。
森辺:はい。
東:そうすると、4-5の「日本とは異なるアジア新興国のディストリビューター」で、副題で「任せたら売る、が当たり前ではない」というところで、何となく分かるんだけど、ちょっとまだ経験も浅いしピンとこないという方もいらっしゃると思うんですけども、ちょっとその辺を少し深く教えていただければと思うんですが。
森辺:日本って、どちらかと言うと、ディストリビューターも御社のことをよく知っているわけですよね。なので、御社の商品をディストリビュートするということが決まると、それに対してものすごく真摯に取り組むというのって、まず御社への理解度がもうめちゃめちゃ圧倒的に海外のディストリビューターに比べたら深いんですね。御社の歴史も、存在感も、市場でどういうふうに思われているのかとか、あらゆることを熟知しているわけじゃない?
東:はいはい。
森辺:海外のディストリビューターに比べてね。
東:はい。
森辺:そうすると、それに取り組む姿勢というのがそもそも変わってくるし、またこれは国民性でもあると思うんだけど、日本の企業って、お引き受けした、いざお引き受けしたら、やっぱりできないことをできるとは言わないよね。できることしかやらないから。それが良い悪いは別にしてね。良い意味では責任感が強いという話だし、悪く言うとチャレンジングな目標にはなかなか向かわないというのはあるのかもしれないですけど、皆まで言わなくても、まあ、やるよね?
東:うん。
森辺:基本的には性善説で動いて、特に問題ないわけじゃない?
東:はいはい。
森辺:でも、一方で海外に行くと必ずしもそうではなくて。彼らが悪者だと言っているんじゃないんだけども、すべてが性善説で進むかと言うと、そうではないし、彼らは皆さんのことを理解はしていても、日本のディストリビューターさんほど、販売店さんほど理解をしていない部分もあるし。あと、物事を約束したことを守るということに対する感覚が日本人とは大きく異なるよということなので。良い悪いは別にしてね。もう約束を守れなかったら切腹ぐらいの勢いじゃない?日本人ってね。
東:うんうん。
森辺:なんだけども、守れなかったらしょうがないというような感覚が良しとして存在していて、そこにはね。だから、そういうことで、任せておけば全部がうまくいくって日本でいっている通りにはなりませんよということをここでは書いていて。
東:はい。
森辺:特になんだけど、ディストリビューターにとって日本のメーカーの商品を取り扱うというのは、これはディストリビューターじゃなくても、同業種でも何でもいいんだけども、日本企業と組むってマイナス面って1つもないですよね。基本的に組めばプラスじゃないですか。売れようが売れまいが。だから、基本的にルーズするものがない。一方で、日本のメーカーにとっては組んで売れなかったらそれだけの時間を無駄にするわけですよね。また、レピテーションも、その国でのレピテーション、新規参入であそこと組んだけど売れなかったよねというレピテーションがそのあと何年かついてまわるので、やっぱりメーカー側のリスクのほうが高かったりするんですよね。なので、ディストリビューターの、日本とはやっぱり常識と言うんですかね、前提が異なるよということを確か書いたんだと思います。
東:なるほど、なるほど。じゃあ、それが前提が違うので。あと書かれているのが「華僑系が9割」ということを書かれていると思うんですけど、華僑というちょっと人種というか、どういう特徴があるのかみたいなところは?
森辺:そうですね。ディストリビューターさんってもう9割がた華僑ですよね。いわゆる中華系の人たちがASEANに散っていって、長い歴史の中でね。そこでそういういわゆる商売的な、商社って貿易みたいなことはやっぱり華僑が多くて。その華僑とのビジネスになるので、ある意味昔は大変だったかもしれないけど、今の華僑ってなかなかやりやすいので、そういう意味では日本企業にとってはやりやすいんじゃないかなというふうには思います。あと、もう1つがね、オーナー企業なんですよね、圧倒的にオーナー企業で。自分たちのファミリーを守るということが彼らのプライオリティとしては一番上にきていて、会社を成長させようとか、上場させようとか、大きくしようというよりも、ファミリーをいかに守っていくかということのほうが優先されるんですよね。よくあるポイントで、華僑系、同族ディストリビューター、全部華僑で、全部同族なんだけど、彼らのスイートスポットというのがあって。例えば、20億ぐらいが彼らにとって最も利益率がよくて、最も贅沢な生活ができる売上だとすると、メーカーとしてはもっとやりたいわけじゃない?
東:うん。
森辺:なんだけど、それ以上やろうと思うと人を増やさないといけない、新しいチャレンジをしないといけない。そうすると、一時期利益率は落ちるわけですね。それに対して抵抗があってね。そのあと、それがうまくいけば彼らの売上はもっと伸びるし。
東:そうですね。
森辺:利益は相対的に上がるんだけども。やっぱりスイートスポットから出たくないというね。特にメーカーが、日本企業の場合は一応ずっと更新するんだけど、一応契約書は1年更新だし、非独占だし、いつ引かれるか分からないわけじゃないですか。本当の意味でのコミュニケーションも取れてなかったり、3年、4年で現地の駐在が代わったりとか、担当者が代わっていて、誰と心が通じているのかがオーナー自身が分かっていないみたいなね。日本の本社の役員はオーナーの心を捕まえにいこうとなかなかしないわけじゃない?
東:はいはい。
森辺:そうすると、部長さんあたりが現地のディストリビューターの心を捕まえる本来は役割なんだけど、その部長が担当がころころ変わったりするわけでしょう?
東:うん。
森辺:そうすると、やっぱりディストリビューターの立場からすると、俺は一体このメーカーの誰とどう繋がっているんだ?みたいな、そういう不安は常に付きまとっているので、なかなかスイートスポットから出ようということにならないというケースは見受けられますよね。
東:分かりました。では、ちょっと長くなりましたけど、森辺さん、今日はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。