東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
<『グローバル・マーケティングの基本』の紹介>
森辺一樹の新刊『この1冊ですべてが分かる グローバル・マーケティングの基本』が出版されました。ぜひ、お近くの書店、Amazonでお求めください。
東:森辺さん、前回に引き続いて『グローバル・マーケティングの基本』から第6章のケースをご紹介しているんですけれども、今回はケース3、「伝統小売への投入がなかなか進みません」と。消費財メーカーですと、近代小売(MT)への導入率は比較的よいのですが、伝統的小売(TT)へのなかなか導入が進みませんと。伝統小売における導入率を上げるにはどうしたらよいのでしょうかと。
森辺:これ、結論を先に言うと、やっぱりディストリビューション・ネットワークなんですね。伝統小売を直販でやっているなんていうのは、先進的なグローバル消費財メーカーを見たってそんなのはないので、基本的にはディストリビューターを使いますと。ただ、これポイントは、1社のディストリビューターでどうこうなるという話ではなくて、ディストリビューションのネットワークをつくっていくということがすごく重要で、だって、伝統小売って幅2m×奥行2mみたいなね、もうちょっと大きいのもありますけども、そういうパパママショップに網羅的に配荷をしていくということですから、1社のディストリビューターの営業マンでは物理的に数が達成できないというか、これは計算上出てきちゃうわけですよ。例えば、ベトナムで50万店存在する伝統小売に1社のディストリビューターで網羅的に配荷しようと思うと、北のハノイから南にホーチミンまで直線距離で1,500~1,600kmあるわけですよね。それで50万店ですから、その1社のディストリビューターに100人営業マンがいたとして、1日どれだけ回れるかということを考えていくと、38年かかりますみたいなね、そういう計算になっちゃうんですよ。しかも、それは移動経費と移動時間を考慮していませんみたいな、それを考慮すると138時間かかりますみたいな、そういう話になってしまうので。やっぱりディストリビューターを束ねるということがすごく重要で。これを一気に網羅的に全部やろうというのは、やり方としてはやっぱり投資対効果が悪いので、ある程度ドミナントでやっていくということがすごく重要で。MTに配荷が比較的うまくいっていると言っているのであれば、そのMTの配荷がうまくいっている地域のTTからまず始めていく。そこである程度の回転、セルアウトの実績をつくってから別の地域に移動していくという、そういうことをやっていかないといけなくて。エリアを絞る、絞ってやって、そこのケーススタディを次に、ということをやっていくことがやっぱりすごく重要で。
東:はい。
森辺:TTに配荷をするディストリビューターって、そこに強いディストリビューターというのがいるんですよね。MT強い、TT強いとこうあるので。このTTに強いディストリビューターをつかまえるということがすごく重要で。一番いいのは、今、類似の商品をTTに配荷している、例えば、このA地区と言ったら、A地区でこの類似の商品をTTでよく見るな、これと。これを配荷しているのは誰だろうというところから特定していくというのが一番やりやすいですよね。そのディストリビューターと商談するというのが一番いいんじゃないですかね。そもそも、あと、商品がTTの特性に合っていないというのはちゃんと改良しないといけない。例えば、近代小売では10個入りで売っているのを1個売りから、ばら売りから売らなきゃいけないとかね。そういうことは考えないといけないですよね。エアコンがかかってないから溶けやすいものは駄目とかね。
東:そうすると、商品そのもの自体をTT向けに、伝統小売向けに
森辺:変えていく。
東:改良しなければ当然いけないのと、もう1つはディストリビューション・ネットワークの。
森辺:をつくると。
東:課題があると。この2つが重要だと。
森辺:そうですね。極端な話を言うと、近代小売は頭痛薬で12錠とか24錠入りで売っているけども、伝統小売では1錠から売っているわけですね。あれは伝統小売側が勝手にばらして1錠から売っているんだけど。インドの田舎のほうとかへ行くとね、まだね、ペットボトルの水を一口1ルピーとかで売っているわけですよ。口を付けないでみんな飲んでいるんですけどね、マイボのね(05:08)。いやー、すごい世界だなと思って。
森辺:コロナでそういう商習慣ももうなくなっちゃうんだと思いますけど。なので、とにかく少ない分量で売るということがすごく重要で。昔を思い出してほしいんですけど、スーパーでポテトチップスって、あれは120グラムぐらいあるのかな。
東:はいはい。
森辺:結構でかい袋で売っているじゃないですか。
東:はい。
森辺:けど、僕ら、駄菓子屋あったでしょう?
東:はい、そうですね。
森辺:1970年代、1980年代、駄菓子屋のプロ野球カード付きのポテトチップスってめちゃめちゃ小っちゃかったでしょう?
東:そうですね。
森辺:あれの感覚ですよね。TTに行くと小っちゃくなるので、小っちゃく売るということです。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。