東:こんにちは。ナビゲーターの東忠男です。
森辺一樹(以下、森辺):こんにちは。森辺一樹です。
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東:前回から引き続き、『グローバル・マーケティングの基本』からケースをご紹介して、ちょっと要約して答えていただくみたいなかたちにしたいと思うんですけども。ケース4まで前回やっているので、ケース5なんですけれども、「伝統小売が近代化するまで待ってから参入するのは駄目か」。よくセミナーとかでも、伝統小売がコンビニ化するので、もしくはネットで参入するとか、そういうのは駄目なんですかみたいな、たぶん結構聞かれると思うんですけど、この辺はいかがでしょうか。
森辺:そうですよね。なぜそういう質問になるかと言うと、日本企業の場合は近代小売向けの商品をつくっていて、いわゆるプレミア系の商品。近代小売系の流通網の構築とかっていうのはまあまあそこそこできるんだけども、なかなか伝統小売となると、ものを変えないといけない、価格を変えないといけない、チャネルを変えないといけない、プロモーションを変えないといけないと、4Pを全部変えないといけないので、やりたがらないですよねと。でも、結局、伝統小売が近代化するんだから、それを待ってやったらいいんじゃないの?みたいな話だと思うんですよね。結論から先に言うと、たぶん待っていたら市場に入り込むことはますます難しくなるんじゃないかなと、淘汰されるんじゃないかなというのが答えで。理由は、近代化が完全にされるかどうか分からないし、仮に近代化がもっともっと進んでね、今って8:2の8が伝統小売じゃない?
東:はい。
森辺:これが、じゃあ、逆転して、8が近代化するのに、おそらく10年とかの時間軸じゃないんですよね。もう数十年とかという時間軸なので、数十年待たれるんですか?ということを考えると、やっぱりちょっと違うよねということだと思うんですよね。仮に、今、ASEANの伝統小売の攻略に投資をしたとしても、それってインドとかね、南米とかアフリカっていう、もっともっと新興国の地域っていうのはまだまだ世界にあるので、そういったところでそのノウハウって応用できるから、決して損にはならないんじゃないかなというのも1つ思います。あと、なぜ日本が小売が近代化していくかということをおっしゃるかと言うと、確かに小売は近代化していっているんですけども、一方で、伝統小売の数自体が増えているんですよね。僕が住んでいた80年代、シンガポールに住んでいた80年代のときからASEANの伝統小売の数って増えているし、もちろん近代小売の数も増えているんだけども、伝統小売の数も増えていますと。また、その伝統小売がね、よく皆さん最近聞くかもしれないですけど、リープフロッグという言葉を聞くかと思いますけど、カエル飛び、カエル三段跳びみたいな意味合いなんですけど、固定電話を使わない人がいきなり携帯を使ったりとか、いわゆる新興国って、先進国がやってきた、追ってきた順序、進化の順序をたどらずに、ボーンとリープフロッグのように飛び越していくんですよね。そうすると、伝統小売って普通はどんどんきれいになっていって近代小売していくというのが新興国的な考え方なんだけども、リープフロッグで伝統小売が今、デジタル武装し始めているわけですね。見た目は超伝統なのに、そこにデジタルコンテンツが搭載されて、全部がデジタル決済みたいになっていったときにね、今までってコンビニがめちゃめちゃ便利という世界観だったじゃない?
東:はい。
森辺:コンビニが便利の頂点みたいな。けど、伝統小売って、コンビニよりももっと間隔が短距離の間隔である。コンビニが家から50mだとしたら、伝統小売って家出てすぐみたいな。そうすると、伝統小売のほうが実は便利じゃんみたいな。そうすると、もっとマイクロリテールみたいな世界が、もしかしたらこれからのニューリテールかもしれないので。そう考えると、伝統小売、なくならないんじゃないの?という説も、僕はあるんじゃないかなと思っていて。伝統小売のデジタル化がますます進めばね。一方で、コンビニがなくなっちゃうんじゃないの?と。コンビニが、言ったら伝統小売への配荷をする問屋になるんじゃないの?ということだって想定できるわけですよ。そうすると、30年後の世界にどうなっているかなんて誰も予想がつかないので、今、伝統小売をやらないなんていうことは、戦わないということに等しいと思うんですよね。だから、違うんじゃないのかなというふうに思います。
東:うーん。そうすると、基本的には、これもお答え的には「ノー」だと。
森辺:「ノー」です。やれと。今やりなさいと。もっと言うと、O2Oとかって、ちょっと前まで中国で言われていたものが、今、OMOとかっていうふうに言われていて、何の略かと言うと、オンライン・マージ・オフラインみたいな、いわゆるオフラインとオンラインがもっともっと融合していっちゃうという世界で。人って何か買うときに、オンラインで買おうとか、コンビニで買おうとか、別に買う場所を敢えて意識はしていないわけじゃないですか。今、一番便利な方法を選択しているというだけで、別に今、必要ないからAmazonで明日着けばいいからAmazonで買うとか、今、喉が渇いて目の前に自動販売機があるからそこで買ったとか、今、アイス食いたいからコンビニが目の前にあるので買ったとか、あと、今月の食料品を買いだめしておきたいからスーパーへ行ったとか、言ったら、どの購買方法かということは、そのときのその人の状況によっていろんな選択肢があるわけだから、オンラインに全部なるとかね、近代小売に全部なるとか、そういうことじゃなくて、全部の選択肢に並べられるということがやっぱりすごく重要じゃないかなというふうに思います。
東:分かりました。今日はここまでにしたいと思います。森辺さん、ありがとうございました。
森辺:ありがとうございました。